2017 Fiscal Year Annual Research Report
農村における未知なる国富の評価と保全に向けた実証研究
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16H04993
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
浅野 耕太 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (50263124)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松下 京平 滋賀大学, 経済学部, 准教授 (20552962)
山根 史博 広島市立大学, 国際学部, 准教授 (40570635)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | レジリエンス / 農業・農村の多面的機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、大いなる見えざる国富の消失ともいうべき、農村の自然資本劣化に焦点を当て、自然資本のよきガバナンスを実現するための道筋を学術的に解明しようとするものである。生態系サービスの湧出源としての自然資本の適切な保全は、日本社会全体の持続可能性の観点からも重要である。そこで本研究では、実証的な観点から、①包括的な自然資本の社会的有用性評価枠組みの構築、②不確実な事象に対する自然資本のレジリエンスの規定要因の解明、③自然資本のよきガバナンスに向けた多様な主体による協働統治の可能性の検証を行った。 ①に関しては、農村住民、都市住民のそれぞれを対象にインターネット調査を実施した。主な調査項目として、自然資本が提供する生態系サービスへの認識とその曖昧性、自然資本の社会的有用性への評価を聞き、両者の関係を分析するとともに、自然資本に対する知識・経験・立場の違いを念頭にグループ間の比較を行った。また、自然資本そのものやレジーム・シフト、レジリエンス、保全技術の開発状況などについて実験的に情報を提供し、認識・評価の修正(情報提供効果)を検証した。②に関しては、拡張MSモデルに現実のデータを当てはめた実証分析を開始した。③に関しては、本課題の分析対象は、複雑な主体間の関係性を捉える必要があった。そのため、聞き取り調査や現地調査などをベースとした事例研究を中心に進めると同時に、(②で収集する)関係省庁などの統計データを用いた実証分析でその普遍性を補強した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請書に記載した研究実施計画に照らし、調査研究は順調に進んでおり、特段の問題も生じていないうえに、得られた成果を公表したところ、当該分野で国際的に評価の高い学会誌 American Journal Agricultural Economics に掲載が決定したため、そう判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
申請書に記載した研究実施計画を粛々と遂行していくとともに、研究が計画通りに進まない場合については、それが最も生じやすいと予想される③について、適切な限定や研究の絞り込みが行えるように配慮しながら研究を進める。このとき、得られる知見の普遍性を担保する意味においては、定性的な側面からの補強が大前提になるため、それらの準備も常に考えておくようにしたい。
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