2016 Fiscal Year Annual Research Report
精漿による子宮機能調節作用を利用した受胎促進技術の開発
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16H05032
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
片桐 成二 北海道大学, 獣医学研究科, 教授 (00292061)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柳川 洋二郎 北海道大学, 獣医学研究科, 助教 (20609656)
藤井 貴志 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 農業研究本部畜産試験場, 研究職員 (60609105)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 不妊 / 乳牛 / 子宮 / 治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
乳牛の受胎率低下の原因となっている子宮での上皮成長因子(Epidermal growth factor, EGF)の発現異常に対する対策を検討するため以下の4項目について検討した。 1.子宮でのEGF発現増強活性を有する精漿蛋白質の同定:精漿のEGF正常化作用に関わる蛋白質の解析を行い、電気泳動法によって分離した同作用を有する蛋白質フラクション中の4個の蛋白質スポットについて質量分析装置により蛋白質の同定を試みた。2個の蛋白質スポットについては同定できたが、残り2個の蛋白質スポットについてはデータベースに該当がなく同定に至らなかった。また、アミノ酸分析においても該当する蛋白質はなく、新種の蛋白質であることが分かった。現在、確認作業を継続中である。 2.精漿の作用機序解明:腟内に投与した精漿が子宮でのEGF発現を正常化する機序を明らかにするため、腟からのリンパ経路を解析し、腟の各部位からのリンパ流路を明らかにした。また、生体において一部のリンパ系路からリンパ液を回収し、精漿投与による免疫系細胞およびサイトカイン発現を解析する実験系を開発した。 3.EGF発現異常および正常か処置への抵抗性に関わる内分泌および代謝因子の解析:ホルモン製剤あるいは精漿を用いる治療処置に対して抵抗性を示す過肥牛において、抵抗性発現の機序を明らかにする研究を実施した。まず、治療に対する抵抗性と関連する因子を探る目的で、糖代謝の状態および肥満と関連することが示唆されている内分泌因子について肥満および治療抵抗性との関連を調べた。その結果、治療抵抗性を示す過肥牛ではテストステロン濃度の基底値が高く、糖負荷試験により耐糖能の低下傾向がみられた。 4.EGF発現異常とその対策の経済効果の試算:EGF発現異常とその対策の経済効果を試算するためのデータを収集し、仮の基準による試算結果を公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初設定した4項目の実施計画について、3項目については当初の予定通りあるいは予定以上の進捗状況であるが、2番目の項目については当初の予定に比べ進展が遅れている。進行が遅れている2番目の項目については、実験系のセットアップにおける技術的な問題が原因であり、現在は得られた材料が解析に使用可能かどうかについて検証を行っているところである。 1.子宮でのEGF発現増強活性を有する精漿蛋白質の同定:目標とした同定を完了して、新種の蛋白質についてはその性状を検討する段階に進んでいる。また、平成29年年度までの2年間をかけて実施する予定であった、蛋白質の活性を確認する研究も進んでおり当初の計画を上回る進捗状況である。 2.精漿の作用機序解明:リンパ節へのカニュレーションに関わる技術的な問題により、実験系の開発に時間を要し、生体での精漿投与に伴うリアルタイムでの影響の評価については、解析に必要な十分なデータが得られていない。 3.EGF発現異常および正常か処置への抵抗性に関わる内分泌および代謝因子の解析:過肥牛の不妊と関わることが示唆されている項目の中で、子宮でのEGF発現異常に関わる項目を血中テストステロン濃度の上昇および耐糖能の低下に絞り込むことができており、当初の計画以上に進展している。 4.EGF発現異常とその対策の経済効果の試算:データの得られた農家戸数は少ないが、得られたデータを基に試算を行うモデルを開発しており、当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
全体的には概ね順調に進んでいるため、当初の計画通り実施する予定である。また、「4.EGF発現異常とその対策の経済効果の試算」については、研究協力者の職場での異動により本年度前半はデータ収集の遅れが予想されるが、現時点では当初の計画を上回る進捗状況であることから、平成29年度末にまでの目標については達成できるものと考えられる。 進行が遅れている「2.精漿の作用機序解明」については、実験系の検証結果に応じて、試料の解析を実施するか、新たな材料採取を行うかを決定する。後者の場合、進行については概ね半年~1年の遅れの出ることが予想される。
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