2016 Fiscal Year Annual Research Report
Drug-food interaction on transporters
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16H05111
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
玉井 郁巳 金沢大学, 薬学系, 教授 (20155237)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若山 友彦 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (70305100)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 輸送体 / 食品 / 消化管 / BCRP / OATP2B1 / 毒性 / 嗜好飲料 / 相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
食品の輸送体への影響について、コーヒー摂取の習慣が血清尿酸値を低下させるという臨床報告、コーヒーで前処理した消化管由来Caco-2細胞ではBCRPの発現が誘導されるという報告、ならびに申請者らのBCRP輸送体が尿酸の消化管管腔中排泄に働くというこれまでの成果に基づき、血清尿酸値低下作用を有する可能性のある消化管BCRPに影響するコーヒー中成分に関する検討を進めた。コーヒー抽出液をHPLC等を用いて分画した結果、BCRP誘導活性を有する画分が複数得られた。その中で特に強い誘導作用を有する分画にはカフェインが主に含まれており、カフェイン曝露によりほぼコーヒーのBCRPの誘導作用ならびに尿酸輸送活性増大が説明された。また、カフェインの誘導作用は、AhRリガンドとして働くことによることが示された。以上より、コーヒーはカフェインを主な作用物質として消化管BCRPを活性化し、血清尿酸値に影響することが示唆された。さらに、果汁の消化管輸送体OATO2B1への影響を調べた。既にアップルジュース(AJ)など果汁が消化管輸送体OATP2B1活性を阻害することを報告しているが、消化管毒性発症の一因がOATP2B1による薬物の組織蓄積性増大と考え、AJによる毒性抑制作用の有無を調べた。消化管毒性を示す抗がん薬SN-38をモデルとして用いたところ、OATP2B1はSN-38を輸送すること、さらに小腸絨毛形成抑制作用を毒性評価として動物試験を行ったところ、AJ併用によりSN-38の消化管毒性低下が観測された。さらに、食品は同じ名称でも不均一であることからその作用の評価法に関する検討も開始した。食品としてサプリメントに着目し、消化管酵素や輸送体の誘導作用に関する検討を開始した。以上、食品の中には多様な消化管組織への作用を示すことを見出すとともに今後の新しい展開にも着手できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コーヒーのBCRPに対する作用に関しては、カフェインが主成分となる結果を得た。本成果は学術論文として投稿準備を開始した。既法によればBCRPに対する作用はカフェイン以外であるとされていたため、既法とは異なる結果ではあるが、既法においては濃度や時間など試験条件が明記されていないため曖昧であり、本試験では濃度や時間を幅広く試験した結果として得られたものである。したがって、本成果はより信頼性が高く、それ故新規性がある結果と判断される。また、本成果は血清尿酸値の調節を消化管BCRPを介してコーヒーが作用することを裏付ける成果となった。カフェイン以外の成分についても否定はできないが、食品としてのコーヒーは多様な成分を含むこと、また製品ごとあるいは加工方法によっても主成分量が変動するため、今後の検討には試験方法の整理などが必要と思われる。果汁については、AJについては、OATP2B1阻害が有害作用のみならず薬物毒性回避に向けた応用性への利用も提唱できた。なお、現時点では本作用は、AJとOATP2B1輸送体間の相互作用を基盤にしているが、必ずしもOATP2B1のみを介した小腸保護作用とは言えない。AJ中成分ならびに作用機構についてさらに検討が必要である。また、全体を通じて食品の作用を検討する上においては食品間のばらつきが課題となる。本年度の研究を進める過程においては、この点の重要性を感じた。即ち同じ製品名であってもブランドやロットによって成分の種類や濃度は一定とは考えにくく、各製品の作用を予測できるような食品の消化管組織への影響評価に関する方法論についても検討を開始することとした。次年度以降、手法論も含めた検討を進める必要性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
コーヒーの消化管のBCRPに対する作用は一定の成果が得られた。既法との相違も見られたが本検討では詳細に試験条件をコントロールするなど信頼性が高いと判断した。血清尿酸値との関連については臨床試験等の新しい展開が必要であるため、現時点での情報で公表する予定である。ただし、カフェインは吸収性も高いこと、さらにBCRPは生体の様々な組織に発現することから、尿酸値をコントロールするBCRPの作用については、消化管BCRPにとどまらず、他の組織・臓器についても対象として展開することが必要であると判断した。AJなど果汁に関する試験は、これまで吸収上皮細胞に着眼してきたが、組織保護作用も期待できるという検討結果から、単純に消化管上皮細胞への作用のみではない可能性が高まった。今後は輸送体が発現する細胞の種類を広げ、陰窩(幹細胞)、マクロファージ、ゴブレット細胞など他の細胞種にも広げ、輸送体の発現の確認を含め研究を展開する。食品を対象とする場合、いかに食品間のばらつきを評価するかが大きな問題と考えられた。そこで食品に分類されながら、比較的特定成分の含むため検討が行いやい、サプリメントを対象とした食品影響評価法に関する検討の必要性を強く感じた。今後は、食品の影響を利用すること、あるいはそのリスクを評価することなど、詳細なメカニズム解析結果に基づいた応用展開を行う予定である。
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Research Products
(9 results)