2017 Fiscal Year Annual Research Report
代謝性組織リモデリングとその変容によるメタボリックシンドロームの分子機構の解明
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16H05171
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
菅波 孝祥 名古屋大学, 環境医学研究所, 教授 (50343752)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | メタボリックシンドローム / 慢性炎症 / 組織リモデリング / マクロファージ / 線維化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、肥満の脂肪組織と非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の肝臓において、CLS(crown-like structure)を起点として組織リモデリングが生じていることを証明し、細胞間相互作用による代謝性組織リモデリングの分子機構と病態生理的意義の解明を目指している。本年度は、SGLT2阻害剤の代謝性組織リモデリングに対する作用を検討した。 新しい糖尿病治療薬のSGLT2阻害剤は、血糖低下作用に加えて、肝臓における抗脂肪肝効果など多面的な作用を有している。我々は既に、遺伝性肥満を呈するメラノコルチン4型受容体(MC4R)欠損マウスに高脂肪食を負荷することにより、肥満やインスリン抵抗性を背景として、脂肪肝、NASH、肝細胞癌を経時的に発症するNASH・肝細胞癌モデルを確立した。そこで、SGLT2阻害剤をMC4R欠損マウスに投与したところ、血糖値の低下、体重増加の抑制、脂肪肝の改善など既知の効果に加えて、CLS形成や間質線維化が強力に抑制されることを見出した。この機序として、SGLT2阻害剤がGSH産生を介して抗酸化作用を発揮することが明らかになった。さらに、約1年間投与を継続すると、MC4R欠損マウスにおける肝腫瘍の発生が顕著に抑制されることを見出した。この機序は未だ明らかでないが、非腫瘍部における線維化抑制され、MycやAFP発現が低下することを観察している。 さらに詳細な機序を明らかにするためには、より短期間で肝腫瘍を発症する新たな動物モデルが必要である。そこで、MC4R欠損マウスに肝癌誘発化学物質であるジエチルニトロソアミン(DEN)を投与することにより、肝腫瘍形成を従来の1年から3-4ヶ月程度に短縮する新しいメタボ肝癌モデルを開発した。このような種々の動物モデルを組み合わせることにより、代謝性組織リモデリングの病態解明や新規治療標的の同定、薬効評価系としての利用などが促進すると期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
薬効評価や病態解明に関する研究が順調に進捗しており、さらに研究を加速させる新しい動物モデルの開発にも成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
新たなメタボ肝癌モデルを用いて、発癌に及ぼす代謝制組織リモデリングの意義を検討するとともに、マクロファージや線維芽細胞に注目して、代謝制組織リモデリングの分子メカニズムの解明を進める。
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