2017 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子改変ブタを用いた病態高再現性の次世代型アルツハイマー病モデルの開発
Project/Area Number |
16H05176
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
谷本 昭英 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (10217151)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三好 和睦 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 教授 (70363611)
佐藤 正宏 鹿児島大学, 学内共同利用施設等, 教授 (30287099)
川口 博明 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 特任准教授 (60325777)
小澤 政之 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (90136854)
三浦 直樹 鹿児島大学, 農水産獣医学域獣医学系, 准教授 (80508036)
堀内 正久 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (50264403)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | マイクロミニピッグ / 遺伝子改変 / クローン / アルツハイマー病 / 疾患モデル動物 |
Outline of Annual Research Achievements |
マイクロミニピッグ胎仔に由来する線維芽細胞をドナーとする体細胞核移植で得られた2頭のクローンピッグから、下記要領により腎細胞の初代培養を行い、PSEN および NL遺伝子の発現細胞の作成を試みた。両遺伝子を同時発現させるため、外来性遺伝子を効率よく染色体に組み込むことを可能とする piggyBac(PB)トランスポゾン系の遺伝子発現システムを用いた(pTA-NL-5)。ブタ腎細胞に electroporation により遺伝子導入後、高濃度の puromycin (5 g/mL) を含む培地にて1日間薬剤選抜を行った。Puromycin 処理後、細胞は正常培地に10日ほど培養に付され、その後、遺伝子導入細胞の colony を独自に開発した tip法 で拾い上げ、cloneを拡大させた。最終的に 5 clone を得た。一部は cell stock に、一部は分子生物学的解析に回した。得られた 5 clones に PSEN と NL 遺伝子を特異的に識別する PCR primer set を用い、PCR 解析を行った結果、PSEN については、4 clones に存在が認められた。しかし、NL については、どの clone もその存在は認められなかった。今年度の実験からは、PSEN および NL を同時に持つマイクロミニピッグ由来の体細胞 clone は取得できなかった。 マイクロミニピッグは麻酔後、エコーガイド下針生検により無菌的に腎組織を採取し、得られた腎組織は細断後に、0.25% トリプシンで15 分間処理し、細胞を単離した。ウシ胎児血清を加えてトリプシンを中和した後、遠心処理により細胞を回収した。回収した細胞は継代培養後、凍結保存をおこなった。保存された細胞を一定期間後に溶解し、再び培養可能であることを確認し、初代培養法を樹立した。生検後の動物に健康障害はない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
アルツハイマー病と関連する PSEN および NL遺伝子の両遺伝子を発現する遺伝子改変体細胞が得られなかった原因として、以下のことが考えられた。①導入する pTA-NL-5 DNA 自体の濃度が低い、あるいはdegradation を起こしていた。②そもそもNL発現ユニットがベクターに挿入されていなかった。③pTA-PSEN-16との共遺伝子導入の際に、pTA-NL-5の挿入が抜けていた。④今回用いた腎由来の体細胞が遺伝子導入には適切ではなかった、などが考えられる。 体細胞核移植の元になるいわゆるドナー細胞の選択は、本実験では重要な位置を占める。経験上、ブタ細胞の中には、体細胞核移植に向いていないものもある。すなわち体細胞核移植を行っても体細胞核移植胚が発生途上で脱落し、出生まで至らない細胞である。このような事態が起こる理由は依然不明であり、また、このような体細胞核移植に向いていない細胞とそうでない細胞とを事前に見極めることも現段階では難しい状況である。マイクロミニピッグ胎仔に由来する繊維芽細胞をドナーとする体細胞核移植も用いて、2頭のクローンピッグがすでに得られており(Miyoshi et al., Cellular Reprogramming 18:390-400, 2016)、このクローンピッグ由来の細胞を使えば、体細胞核移植後もクローン胚が発生し、最終的にクローンピッグが得られるだろうと考え、今年度は、上記2頭(成体)の腎細胞からの初代培養を確立し、遺伝子導入に供したが、今のところ充分な結果は得られていない。したがって、胎児線維芽細胞、生体線維芽細胞など他の体細胞の利用の必要性も示唆された。今後は、クラウンミニピッグで遺伝子改変動物の作出に成功した際の実験諸条件が、そのままマイクロミニピッグには当てはまらない可能性を充分に理解しておく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
上記で指摘した問題点の①については、DNA の quality について制限酵素解析などでチェックする。②については、既に sequencing で NL 発現ユニットのベクターへの正しい挿入を確認しているので、可能性が低い。③については、あまりありえない事象といえる。今後、①~③のすべての点を点検する予定で、最終的に、PSEN および NL を同時に持つマイクロミニピッグ腎細胞 clone の取得を目指す。発現ベクターや体細胞の変更も検討が必要である。④については、引き続いて腎細胞での試みと、他の体細胞の初代培養を確立し、遺伝子導入の効率と体細胞核移植胚の発生効率を検討する。 最終年度は、PSEN および NL を同時に持つマイクロミニピッグ腎細胞 clone を用いて、移植胚を作成後、母豚に移植することでアルツハイマー病遺伝子を有するマイクロミニピッグの生体を得る。遺伝子改変体細胞の作成とともに、移植杯の培養条件および胚移植のタイミング条件などの諸条件および最適なドナー細胞の選択についても引き続いて検討を行い、疾患モデル動物作成のための最適条件を決定する。 アルツハイマー病関連の遺伝子改変を有するマイクロミニピッグが得られれば、3年程度以上の飼育を継続し、クローンおよび遺伝子改変ブタにおいて経時的に血液検査、髄液検査、脳 CT、脳 MRI などの臨床検査、覚醒・睡眠サイクルや脳波の評価、記憶力・学習力評価、行動観察、運動能力により、高次脳機能の評価を行う。野生型非クローン動物あるいは野生型クローン動物と遺伝子改変動物との詳細な比較検証を行い、遺伝子改変クローン動物での高次脳機能障害の病態の再現性を検討する。人道的エンドポイントは、動物が一般状態の悪化に陥った場合であり、速やかに麻酔下放血安楽死を行う。3年以上の飼育の後には解剖を行い、脳を中心に詳細な形態学的評価を行う。
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