2017 Fiscal Year Annual Research Report
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16H05302
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
黒尾 誠 自治医科大学, 医学部, 教授 (10716864)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 血管石灰化 / Calciprotein particles / リン |
Outline of Annual Research Achievements |
動脈硬化には、粥状硬化と血管石灰化という二つの異なる病態が混在する。粥状硬化では「悪玉コレステロール(LDL)」が治療標的だが、血管石灰化では明確な治療標的が確立されていない。最近の臨床研究で、血中を流れるリン酸カルシウムのコロイド粒子(CPP)が、血管石灰化の指標と相関することが報告され、CPPが血管石灰化の治療標的として有効である可能性が示された。本研究では、血中CPPを低下させるような薬物介入を行い、血管石灰化が治療できるかどうか、動物実験と臨床研究で検証することを目指している。本年度の研究実績は以下の通りである。 血中CPPレベルを規定する因子の同定:血中CPPレベルは、腎機能が低下するとともに上昇することが報告されている。そこで自治医大に通院している保存期慢性腎臓病患者148例の血中CPP値を、我々が新規に開発したCPP測定法を用いて測定し、様々な臨床指標との相関を検討した。多変量解析の結果、血中リン濃度と年齢が血中CPP値を規定する独立した因子であることが明らかとなった。重要な所見は、対象が保存期の慢性腎臓病患者であったため、血中リン濃度はほとんど全例が正常範囲内であるにも関わらず、その範囲内での血中リン濃度の僅かな上昇でもCPP値が大きく上昇する点である。高リン血症は血管石灰化や全死亡率上昇の危険因子に同定されているが、高リン血症がなくても、慢性腎臓病患者や高齢者では血管石灰化や全死亡率の上昇が認められる。血中CPP値の上昇がその原因である可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、3年計画の2年目に当たり、初年度に確立した血中CPPの新規測定法を用いて臨床研究を実施し、「研究実績の概要」に述べたような成果を得た。また、血管石灰化のモデルマウス(Klotho欠損マウス)にCPPの作用を阻害する薬剤Xを投与したところ、予想通り血管石灰化が治療できることを予備的実験で確認した。また、腎線維症のモデルマウス(高リン食でマウスを2-3カ月間飼育すると腎線維症をきたす)に同じ薬剤Xを投与すると、腎線維症も治療できることも確認した。すなわち薬剤Xは、リン排泄障害やリン過剰摂取によるリン負荷に伴うさまざまな病態を改善する効果があることがわかった。その薬剤Xについては、特許の関係で現時点では公表できないが、既に臨床の現場で使用されている薬剤であり、ドラック・リポジショニングによって比較的短期間に臨床応用される可能性がある。以上の進捗状況から、本年度の研究はおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
血管石灰化のモデルマウス(Klotho欠損マウス)における薬剤Xの治療効果を確立する。すなわち、薬剤Xによって血管内皮障害、血管石灰化、慢性炎症治療可能か、用量や投与期間・投与開始の時期を振って、遺伝子発現と組織学的解析で検討する。また、Klotho欠損マウスにおいて、CPPの作用を仲介していると考えられる受容体を欠損させ、血管内皮障害、血管石灰化、慢性炎症が軽減するか、遺伝子発現と組織学的解析で検討する。成功すれば、血管石灰化の治療標的としてCPPおよびその受容体が新たに確立され、薬剤Xによる血管石灰化の治療を目的とした臨床治験が正当化される。
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Research Products
(8 results)