2016 Fiscal Year Annual Research Report
MST法による卵細胞質機能低下克服への挑戦:次世代への安全性の担保も目指して
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16H05468
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
立花 眞仁 東北大学, 大学病院, 講師 (30431571)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
志賀 尚美 東北大学, 大学病院, 助教 (20595558)
黒澤 大樹 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (20770192)
渡邉 善 東北大学, 大学病院, 助手 (40722567)
井原 基公 東北大学, 大学病院, 助教 (50403506)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 生殖医学 / 卵細胞質 / 核移植 / 配偶子系列遺伝子治療 / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究計画においては①加齢卵子、および低細胞質機能卵の作成と評価、および②ミトコンドリア遺伝子ハプロタイプのスクリーニングとアッセイの確立を掲げ、C57/B6雌70匹、雄28匹を使用し、11周期の顕微操作実験(MST法、MII期大量細胞質移植、PN期大量細胞質移植)、69周期のIVFを行った。 ①については細胞質機能低下の評価確立のため、体外受精による胚発生能の検討、細胞数の検討、胚呼吸量測定、ATPの定量を行った。加齢卵子については、卵子数確保の観点から加齢マウスよりの採卵ではなく、 排卵後加齢卵子を用いた。非侵襲的胚評価法である胚呼吸量測定が胚の質や生存性と関連する細胞数、ATP量と相関すると考え、胚呼吸量を細胞質機能、胚の質の評価とする予定であった 。しかしながら、呼吸量と細胞数やATPとの相関が認められず、マウス胚においては呼吸量測定を細胞質機能低下や胚の生存性の評価として用いる事に問題があると考えた。他の評価法として、ミトコンドリア遺伝子コピー数や遺伝子変異の定量的PCR法を検討している 。しかし、予備実験段階で単一胚から解析に必要なGenomic DNAが得られないことがわかり、全ゲノム増幅(WGA)を行なってからの解析準備を進めている。 XYCloneレーザー穿孔システムは平成28年7月に納品され、同年8月以後は細胞質置換が可能となった。マウス未受精卵においてもMST法を用いて細胞質の置換は可能であることが明らかとなった。しかし、IVFによる受精に問題があることがわかり、現在受精法の検討を続けている。また、代替手段として、卵細胞質の約1/3の大量の細胞質移植(MII期大量細胞質移植)を未受精卵で行い、成功している。若干の受精率の改善が認められるが、十分ではないため条件の検討を行なっている。また、受精直後の前核期胚における大量細胞質移植(PN期大量細胞質移)についても成功しており、こちらもその後の胚発育を確認できている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
非侵襲的検査は、同一胚を移植実験に供することが可能となるので非常に有用である。当学にてヒト胚評価に有用な新規デバイスとして開発した受精卵呼吸測定装置により、マウス胚においても非侵襲的に加齢卵や低細胞質機能卵子の評価 が可能と考えていた。しかしながら、マウス胚はサイズや呼吸量がヒトよりも小さく、評価のパラメーターとして問題がある可能性がわかり、他の分子生物学的パラメーターによる評価法確立を先行させている。 条件設定が揃わない場合には、侵襲的検査のみでの評価とする。条件設定が決まれば解析の準備が整っているため、現時点では致命的な遅れはないと判断している。 なお、細胞質置換方法としてはMST法から派生する応用技術である大量細胞質移植法を選択する必要があるかもしれない。しかし、研究の趣旨としては細胞質機能低下の克服法としての細胞質置換の有効性と安全性を検証するという目的と評価方法は変わらない。
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Strategy for Future Research Activity |
当初C57BL/6と B6.PWD-mtを用いた成熟卵細胞質置換(MST)による検討を予定していたが、H28/9月に他グループより同組合せによる前核期置換(PNT)により作出した胚においてC57BL/6の細胞質に B6.PWD-mtの核を移植した場合において胎生致死である報告がなされた(Ma H et al., Cell Metabol 2016)。このため、代替のC3H/HeNを用いる必要があることがわかっており、ミトコンドリア遺伝子ハプロタイプ解析の準備を進めている。細胞質置換法としてMST法、および MST法から派生する大量細胞質移植(MII期、前核期)など、安定した受精、胚発生が得られる方法を検討しているが、もっとも再現性の高い方法を決定して後の実験を行なっていく。胚の分子生物学的評価による細胞質機能低下と細胞質置換による機能回復の証明については、ミトコンドリア遺伝子の量や変異を中心に評価することを予定している。また、細胞外フラックスアナライザー(Seahorse assay)を、東北大学大学院医学系研究科 医工学連携講座病態液性制御学分野の阿部高明教授より使用許可をいただいているので、今後細胞質機能低下、および回復の客観的評価として使用を試みる。細胞質機能低下の客観的評価方が定まりしだい、排卵後加齢卵子に加えて、ミトコンドリア呼吸鎖複合体阻害剤(Antimycin)や脱共役薬(CCCP)によるATP産生障害によってミトコンドリア機能低下卵子再現を開始し、濃度決定を行なっていく。 条件の確立ののち、次年度以降は加齢卵や細胞質機能低下卵子のレスキュー実験とレスキュー胚の移植、ならびに産仔の獲得を目指している。
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Remarks |
東北大学リプロダクションホームページ、研究紹介 http://www.ob-gy.med.tohoku.ac.jp/patient/rep_research.html
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