2016 Fiscal Year Annual Research Report
Japan Original Cancer Gene Therapy by Inhibition of Multiple Molecules Using Decoy Strategy
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16H05513
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
石橋 浩晃 金沢医科大学, 医学部, 准教授 (90254630)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鬼丸 満穂 九州大学, 医学研究院, 助教 (00380626)
中山 英二 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (60172467)
杉本 直俊 金沢大学, 医学系, 准教授 (80272954)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 口腔癌 / 遺伝子治療 / 血管新生 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は,癌の浸潤・増殖に重要な血管新生抑制を介した癌の増殖制御を標的とし,おとり遺伝子治療法の効果についての基礎的研究を行った.強力な血管新生因子であるVEGFはTNFαにより転写因子Sp1を介して発現が誘導される.そこでTNFαで活性化するSp1をおとり遺伝子治療法の標的とし以下の検討を行った.【おとり遺伝子の合成】おとり遺伝子,すなわちSp1が認識する塩基配列(7塩基)と,その上下流のダミ-配列8-10塩基により設計した二本鎖合成オリゴヌクレオチドを調製した.【HVJ-リポソ-ムによる導入法の確立】おとり遺伝子導入にはHVJ-リポソーム法を用いた.すなわち,リン脂質とコレステロ-ルによりおとり遺伝子を封入した陰イオン帯電リポソ-ムを調製しHVJと融合させ,おとり遺伝子含有HVJ-リポソ-ムの調製法を確立した.さらに,培養癌細胞への様々な導入条件を検討し,常時90%以上の導入効率を示す導入条件を決定した.【おとり遺伝子導入の効果】おとり遺伝子をHVJ-リポソームにより培養癌細胞に導入すると,TNFαによるVEGFのmRNAおよび蛋白発現とも約40%-50%まで抑制した.さらに,TGFβやTissue factorなどの血管新生に関与する因子も同様に抑制された.また,おとり遺伝子の導入はこれらの血管新生因子の発現のみでなく,培養癌細胞の浸潤能や増殖能の抑制効果も認められた.以上の結果よりSp1を標的とした,おとり遺伝子治療法は複数の血管新生因子発現を同時に抑制するのみでなく,癌細胞の浸潤・増殖も制御することが証明され,新規の癌遺伝子治療法として応用できる可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
癌の血管新生機構については解明されてきたが,血管新生抑制による癌の治療法は現在まで確立されていない.そこで,血管新生を新しい遺伝子治療法により抑制することで,新規の癌治療法として確立することを本研究の目的として研究を遂行した.現在までにおとり遺伝子,すなわちAP-1あるいはSP-1が認識する塩基配列(両者とも7塩基)と上下流のダミ-配列8-10塩基対により設計したオリゴヌクレオチド(以下wild typeと呼ぶ)とwild typeから数カ所の配列だけを変異させたオリゴ(以下mutant typeと呼ぶ)を合成した.HVJ-リポソ-ムにより,常時90%以上の導入効率を示す導入法を確立した.また,おとり遺伝子の導入により培養癌細胞のVEGFのmRNA発現量を遺伝子レベル・蛋白レベルで抑制できることを解明し具体的事象を検証できた.さらに,本年度は,多数の口腔ならびに他臓器に由来する培養扁平上皮癌上皮癌細胞について,培養細胞にAP-1やSp-1に対するおとり遺伝子を封入するHVJ-リポソ-ムを遺伝子導入し,一定期間後に培養癌細胞を解析し,その増殖能の抑制効果や血管新生活性,さらに形態的副作用について検討できた.また,採取した遺伝子導入培養癌細胞のVEGF発現量を蛋白および遺伝子レベルで解析し,血管新生活性と比較検討し,培養癌細胞への抑制効果を解析した.さらに,in vivoにおける腫瘍細胞への導入効率を検討し,臨床試用にむけて導入条件を決定する資料として収集できた.
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Strategy for Future Research Activity |
癌の浸潤.転移に重要な炎症性サイトカイン発現に強く関与している転写因子NF-kBやSp1を,おとり遺伝子導入により抑制することを検討するため以下の準備実験を行う.【おとり遺伝子の合成】おとり遺伝子,すなわち転写因子が認識する塩基配列(7塩基)と,その上下流のダミ-配列8-10塩基により設計した二本鎖合成オリゴヌクレオチドを調製した.【HVJ(Hemaglutinating virus of Japan)の培養と調製】ニワトリ受精卵の漿尿腔にHVJを注射し,厳密な温度管理により増殖させるHVJ培養系を確立する.さらに,採取した漿尿液からHVJを精製し,凝血活性によるHVJの力価測定法を樹立する.【培養細胞を用いたHVJ-リポソ-ムによる導入法の確立】フォスファチディ-ルコリン,フォスファチディ-ルセリンなどのリン脂質とコレステロ-ルによる陰イオン帯電リポソ-ムの調製に成功し,HVJと融合させ,おとり遺伝子含有HVJ-リポソ-ムの調製法を確立を目指す.さらに,培養細胞への様々な導入条件を検討し,常時90%以上の導入効率を示す導入条件を決定した.さらに核移行蛋白HMG-1を合成オリゴに付加することに成功し,これにより速やかに核内移行させることが可能になった.【おとり遺伝子導入の効果】おとり遺伝子をHVJ-リポソームにより培養細胞に導入し,TNFα で刺激後基質破壊酵素uPA発現の抑制効果を検討すると,約40%に抑制された.これにより培養細胞において,おとり遺伝子導入は細胞外基質破壊を抑制できる可能性があることが証明され,今後,他の基質破壊酵素の発現抑制効果や,動物モデルでの効果を検討する予定である.
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