2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16H05555
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
西村 英紀 九州大学, 歯学研究院, 教授 (80208222)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
讃井 彰一 九州大学, 大学病院, 講師 (70507780)
山下 明子 九州大学, 歯学研究院, 助教 (70511319)
岩下 未咲 九州大学, 大学病院, 助教 (80611326)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 歯周医学 / 遺伝子改変マウス / 樹状細胞 / 脂肪細胞 / マクロファージ / 肥満 / インスリン感受性 / 炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らは、炎症脂肪組織に高発現するケモカインCCL19に対する受容体CCR7欠損マウスでは高脂肪食負荷でも脂肪組織の炎症が惹起されず肥満を回避し、結果的にインスリン感受性が通常食摂取マウスと同等レベルで維持されることを報告した。しかしながら、この現象に関しては肯定する追加論文がある一方で、異なる結果を報告した研究もある上に、CCR7欠損そのものがケモカイン受容体としての機能と別個に肥満の回避に繋がるのか、あるいはCCL19を介した細胞浸潤の回避に由来するものであるのか、さらにそうであればその際に影響を受ける細胞は何かについては、依然明らかでない。この課題を解決するため、脂肪細胞特異的にCCL19を欠損させた遺伝子改変マウスの樹立をた計画した。しかしながら、CCL19遺伝子にはCCL19あわせ12種類のpseudogeneが存在することが明らかとなり、特異的なhomologous reconbinationが、ほぼ困難なことが予想された。そこで、この問題を回避するため、逆にCCL19を脂肪細胞特異的に過剰発現する遺伝子変異マウスの樹立を試みた。特に脂肪細胞特異的なプロモーターと言われるAP-2を用いた場合、発現レベルは低いもののマクロファージにもAP-2の発現が観察されること、申請者らはCCL19でリクルートされる細胞がCCR7陽性成熟樹状細胞であるとの仮説を設けていることから、より脂肪細胞特異的とされるアディポネクチンプロモーターを用いることとした。平成29年において、アディポネクチンプロモーター特異的にCCL19遺伝子を高発現するマウスの樹立に成功し、2系統の遺伝子改変マウスを得た。今後本マウスを用いて、当初の目的である、脂肪組織の炎症がエネルギー代謝に及ぼす影響を検討する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既述したように、当初脂肪細胞特異的にCCL19を欠損させた遺伝子変異マウスの樹立を計画したが、現存の発生工学的手法を用いた試みでは、目的とする遺伝子改変マウスの樹立がほぼ困難なことが予想された。そこで、alternativeな方法として、CCL19を脂肪細胞特異的に過剰発現するマウスの樹立を試み、最終的に樹立に成功した。本アプローチで用いたプロモーターは脂肪細胞特異的な遺伝子過剰発現マウスの樹立に幅広く用いられていることから、ほぼ目的とした検討が行える環境が整った。 さらに、in vitroの系で、歯周炎症や肥満(アディポカイン存在下)、糖尿病状態(高血糖、高脂欠症)における単球からのCCR7陽性樹状細胞への分化の程度を検討する実験を計画していた。一時期、樹状細胞への分化実験に手間取っていたが、最終的に工夫を重ね、ほぼ問題なく分化が再現できることが確認された。 以上から、本研究課題で計画した、in vitro、in vivoの検討のいずれもほぼ当初計画(当初の到達目標)どおり、進んでいることから、おおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
既述したように本課題で最も重要と考えるCCL19遺伝子改変マウスの樹立に成功した。今後、本マウスにおけるCCL19発現レベルの解析、血中CCL19濃度の測定、通常食負荷マウスにおける各種脂肪組織(皮下脂肪、内臓脂肪等)の炎症状態(細胞浸潤や浸潤細胞種の同定、炎症マーカーのレベル判定)、個体のインスリン感受性、エネルギ代謝関連遺伝子発現(UCP-1等)、白色細胞のベージ化(褐色化)や褐色脂肪細胞量の測定、酸素消費量やマウス自発運動量測定などの検討をを経て、脂肪組織で高発現するCCL19の役割を解明する。特に、当初目的であるCCR7陽性細胞を浸潤させることで脂肪組織の炎症反応が惹起されるか否か、それに伴ってエネルギー消費に影響が出るかどうか、最終的に肥満やインスリン抵抗性に影響が現れるかどうかについて総合的に判断する。 さらにin vitroの検討として、骨髄由来血球系細胞のうち、肥満(アディポカイン存在下)、異常脂質血症状態、高血糖状態、ならびに歯周炎症条件(内毒素存在下など)において、CCR7をより発現する細胞種を同定し、最終的にin vivoの検証結果と併せ、肥満や糖尿病患者における歯周炎症存在下での、脂肪組織の炎症発現に寄与する細胞を同定し、それらを標的とした治療法や予防法の確立につなげる方針である。
|
Research Products
(7 results)