2017 Fiscal Year Annual Research Report
観測と化学輸送モデルを用いた北東アジアのガス・微小粒子PAHの越境輸送の評価
Project/Area Number |
16H05624
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
猪股 弥生 金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 准教授 (90469792)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 啓市 一般財団法人日本環境衛生センターアジア大気汚染研究センター, 情報管理部, 上席研究員 (00391110)
早川 和一 金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 特任教授 (40115267)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | PAH / 越境汚染 / モデルシミュレーション / ガス・粒子分配 / 北東アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年冬季と夏季に、日本海沿岸に位置し、アジア大陸起源物質の越境輸送をうける能登(37.5°N, 136.9°E)において、ガス・微小粒子状物質を採取し、ガス・粒子態PAHの分析を行った。定量できたPAH成分は,Flu,Pyr,BaA,Chr,BbF,BkF,BaP,BghiP,IcdPの9成分であった。4環のFluとPyrはガス・粒子態で存在していた。そのほかの成分については、ガス態は検出限界以下の濃度であったため、粒子態のみで存在していたと考えられる。Flu及びPyrのガス・粒子分配は、夏季にガス態が多く、Fluは73-93%、Pyrは86-97%がガス態で存在していた。一方冬季には粒子態での存在が大きく、ガス態で存在するFluは17-39%、Pyrは8-26%であった。なお、PM10 以上の粗大粒子中のPAHs濃度は検出限界以下であった。粒子態PAHにはガス態ほど季節による大きな濃度差は見られなかった。冬季は気温が低いためにFluとPyrの蒸気圧が低く、ガス態よりも粒子態で存在し、夏季は気温が高いために蒸気圧が高く、FluとPyrの多くがガス態で存在しているものと考えられた。また、前年度に観測した北京での結果を踏まえ、粒子吸着モデルに基づいて考えると、大気中に浮遊する粒子量の多い北京ほど、PAHsが吸着できるサイトが多くなるため、能登に比べてガスの割合が小さくなったと考えられた。観測結果をもとに,領域化学輸送輸送モデルにおいて計算を行った結果、ガス・粒子態PAHはファクター10の精度でモデルでも再現された。また、FluとPyrのガス・粒子分配は、気温変化に依存していることもモデルでも示唆された。今後観測された結果を化学輸送モデルで再現すべく、他のガス・粒子分配スキームでの計算による感度計算を実施し、モデルの精緻化を行い、ガス態・粒子態PAHの越境輸送量を評価する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、ガス・粒子態PAHの観測を中国及び日本において行い、得られたガス・粒子態PAH濃度のデータを領域化学輸送モデルの検証に用い、その結果をもとに、北東アジアにおけるPAHの越境輸送量を定量的に評価することを目的としている。 計画時にサンプリング・分析依頼を想定していた中国の研究者がいたが、研究代表者の所属異動があり、他の研究者に依頼する必要ができた。しかし、サンプリングをしてもらえる協力者がなかなか見つからず、サンプリング計画に遅れが出た。しかし、その後、試料のサンプリングが行えるようになり、データが出てきた。 昨年度は、日本海沿岸に位置し、アジア大陸からの越境輸送の影響を捉えることが可能な能登モニタリングサイトにおいて、冬季と夏季に、ガス・粒子試料を採取し、PAH濃度の分析を行った。領域化学輸送モデルによるガス・粒子態PAHの濃度と観測値の値は、ファクター10の範囲内でモデルで再現できた。 今後は、ガス粒子分配を異なるスキームを用いて感度計算を行うなど、モデルの精緻化を行う予定である。さらに、ガス・粒子態PAHの越境輸送量を定量的に評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は、北京(中国)・能登(日本)でガス・粒子態PAH濃度を観測し、得られた濃度のデータを用いて、領域化学輸送モデルの検証を行い、ガス・粒子態PAHの時間変動、空間変動、越境輸送を評価することを目的としている。4環のFluoreneとPyreneは、ガス・粒子態として存在していたため、PAHのガス・粒子分配の温度依存性について文献等の調査を行う。また、これまでは、Junge-Pankowモデルを用いてガス・粒子分配を計算していたが、Loman-Lammelスキームなど他のモデルを用いて、ガスー粒子分配についての感度計算や、反応速度定数を変えるなどの精緻化を行い、ガス・粒子態PAHの越境輸送量を定量的に評価する。
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[Journal Article] Aerial observation of atmospheric nanoparticles in Fukue Island, Japan.2019
Author(s)
Lee, K., Chandra, I., Seto,T., Inomata, Y., Hayashi, M., Takami, A., Yoshino, A. Otani, Y.
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Journal Title
Asia Air Quality Research
Volume: 19
Pages: 981-994
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Estimate of Fukushima-derived radiocaesium in the North Pacific Ocean in summer 2012.2018
Author(s)
Inomata, Y, Aoyama, M, Tsubono, T, Tsumune, D, Kumamoto, Y, Nagai, T. Yamagata, H, Kajino, M, Tanaka, T, Sekiyama, T, Oka, E, Yamada, M
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Journal Title
J. Radioanal.Nucl. Chem.
Volume: 318
Pages: 1587-1596
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Radiocaesium derived from the TEPCO Fukushima accident in the North Pacific Ocean: surface transport processes until 2017.2018
Author(s)
Aoyama, M., Hamajima, Y., Inomata, Y., Kumamoto, Y., Oka, E., Tsunono, T., Tsumune, D.
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Journal Title
Journal of Environmental Radioactivity
Volume: 189
Pages: 93-102
DOI
Peer Reviewed
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[Book] MODEL SIMULATION OF PAHS IN NORTH EAST ASIA. Hayakawa,K, Nagao, S., Inomata, Y., Inoue, M., Matsuki,A. ed., Transboundary Pollution in North-East Asia2018
Author(s)
Inomata,Y.
Total Pages
297
Publisher
NOVA
ISBN
978-1-53613-742-2