2017 Fiscal Year Annual Research Report
Vulnerability Assessment of Tsunami-Prone Areas in Japan, Indonesia and Sri Lanka
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16H05648
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
プシュパラール ディニル 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (10361148)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冬木 勝仁 東北大学, 農学研究科, 教授 (00229105)
朴 槿英 仙台高等専門学校, 総合工学科, 准教授 (90435404)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 津波 / レジリエンス / 日本 / スリランカ / インドネシア |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は、現地調査をスリランカで2回、日本で数回実施した。また、材料力学理論に基づいたレジリエンスを測定する数学モデルの理論的部分を開発した。 現地調査では、社会経済、インフラ、地理の各要因が、沿岸域のレジリエンスに影響を与える様態を特定することに焦点を当てた。Galle地区の沿岸の町Kahawaで研究を実施し、研究者らは、ある種の木々や露天珊瑚採掘場跡地が、津波による破壊を低減させるうえで積極的な役割を果たしたことを見出した。ムーディルラ(Barringtonia asiatica)と呼ばれるスリランカに育つ木の一種は、沿岸域に位置する家屋を津波から守った。また、露天珊瑚採掘場跡地は、50から60メートルの深さであり、珊瑚採掘者の約2世紀にわたる採掘によって生じたものである。津波到来時に、露天採掘場跡地は陸に向かう波の流れを減じる働きをした。バティカロア地区の調査では、バティカロア半島に位置するNavaladyおよび Dutch Barと呼ばれる2村に焦点を当てた。バティカロア半島は津波によって完全に流出し、これら2村の死亡者は約1,200人と報告されている。しかしながら、ラグーンは津波の影響を減衰させる緩衝域の役目を果たし、沿岸域のラグーンの陸地側は守られた。 本研究から、研究者らは、上記に述べた数学モデルにおいて、バティカロア半島は、地理的に最大の脆弱性のベンチマークとして設定・考慮するのに適切な場所であると確信した。 スリランカにおいて、インド洋大津波の後で移住した住民に対する面接調査を行ったところ,調査対象のバティカロアの2村では、津波の前後で、信仰によって住民の住み分けが明らかに起きた。すなわち、ヒンズー教徒はNavaladyに、キリスト教徒はDutch Barというように。宗教は、社会のインテグリティ、引いては、自然災害に対するレジリエンスを向上させるのに重要な役割を持っていると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. 災害強靭性(災害レジリエンス)に影響を与える要因については、広範囲な文献調査によって十分に理解したうえで、包括的な現地調査によって確認した。 2. 海岸線に平行するラグーン、河川、 採掘抗は、津波影響の遅延化という重要な役割を判明した。 3. スリランカにおいて、インド洋大津波の後で移住した住民に対する面接調査を行ったところ、人口構造や経済力、自給自足度、保健医療施設の充実度、制度の堅固性、社会のインテグリティ、治安、防災意識などの社会経済的要因が災害レジリエンスを高めるのに重要な役割を果たしたことが明らかにした。 4. 宗教は、社会のインテグリティ、引いては、自然災害に対するレジリエンスを向上させるのに重要な役割を持っていることを明らかにした。 5. 災害強靭性(災害レジリエンス)を測定するための独自の概念を開発した。また、材料力学理論に基づいたレジリエンスを測定する数学モデルの理論的部分を開発した。 6. 本研究ではGISを適切に取り入れ、この種の研究に求められるように、沿岸域の地理的特徴を主要な注目点とした。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 今後の研究においては、材料力学論をもとに強靭性(レジリエンス)を測定するための数学モデルを完成することに焦点を置く。材料力学の分野では、強靭性とは、エネルギーを弾性的に吸収する材料の能力のことであり、一方、弾性とは、応力(ストレス)を受けて歪み応力が解放されると元の大きさに戻ろうとする材料の能力と定義される。同様に、災害レジリエンスとは、災害が発生した際にこれに抗し、災害が終わった段階でもとの状態に戻ろうとする社会の能力と定義される。数学モデルの検証は、スリランカのGalle Fort及びBatticaloa半島を地理的要因のベンチマークと位置づけ、当所における現地調査を通して収集したデータを数学モデルに入力して行う。 2. スリランカで2回、インドネシアで1回レジリエンスモデルの妥当性評価に特化した現地調査を実施する。 3. 国連大学環境・人間の安全保障研究所のワークショップおよび関連学会で研究結果の発表を行う。 4. 学術雑誌に論文を掲載する。
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