2018 Fiscal Year Annual Research Report
在欧日本仏教美術の包括的調査・デジタル化とそれに基づくジャポニズムの総合研究
Project/Area Number |
16H05669
|
Research Institution | Kyushu National Museum |
Principal Investigator |
島谷 弘幸 独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館, 未登録, 館長 (90170935)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小口 雅史 法政大学, 文学部, 教授 (00177198)
大塚 紀弘 法政大学, 文学部, 講師 (10468887)
丸山 士郎 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸企画部, 室長 (20249915)
河合 正朝 慶應義塾大学, 文学部(三田), 名誉教授 (30051668)
恵美 千鶴子 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸企画部, 室長 (60566123)
須藤 弘敏 弘前大学, 人文社会科学部, 教授 (70124592)
森實 久美子 独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館, 学芸部文化財課, 主任研究員 (70567031)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 日本美術史 / 仏教美術 / 博物館 / 美術館 / 日欧交流 / 日本学 / 日本観 / 文化人類学 |
Outline of Annual Research Achievements |
3年目となった2018度は、これまでデータを集積してきた博物館の中で、質量ともに高くとりまとめを終えられるところを優先して補充調査を行った。 まずハイデルベルク・ポルトハイム基金民族学博物館(ドイツ)については、すでに前年度に調査は終えていたので、データを整理し、本科研が利用している法政大学のデータベース“Japanese Buddhist Art in European Collections”(JBAE)に取り込んで公開を行った。またケルン東洋美術館(ドイツ)について、時間の関係で前回、調査が完了していなかった絵画類を中心に追加調査を行い、本科研チームで撮影をした。ブレーメン海外博物館(ドイツ)でも引き続き追加調査を行い、収蔵品の9割の調査を終えた。当館は欧州では珍しく石造作品のコレクションが充実しており、今回の調査によって鎌倉時代から南北朝期にかけての紀年銘をもつ三基の板碑が見出されるなど重大な成果があった。ドイツ・ミュンヘンの五大陸博物館では日本仏教美術の選別作業を行い、対象となる作品の9割について調査を終えた。また、JBAE搭載用の写真データを収集した。 フィンランドではタンペレ郊外にある国立博物館所有品の収蔵研究施設であるコレクションセンターにおいて日本仏教美術を抽出して調査を行い、高精細撮影を行った。同じくフィンランド・タンペレ市内のヒエッカ美術館において、日本仏教美術の調査を行った。フィンランド国内の二ヶ所は、日本人による初めての調査となった。 こうして収集したデータについてはチューリッヒ大学の在欧連絡事務所に一旦集約した上でデータを統一の基準に基づき点検し、法政大学国際日本学研究所で用意しているストレージサービスによって、日本の企画本部(九博)およびデータベース担当(法政大学)に転送して、共同利用のための研究対象の素材の蓄積を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画をした館での調査を着実に進め、データ蓄積を行っている。2018年度の研究計画として示した現地調査のうち、重点拠点として捉えていたケルン東アジア美術館の重要な日本仏教美術コレクションの調査は完了し、撮影も終えることができた。また、ブレーメン海外博物館では追加調査によって9割方の調査を終えることができた。とくに欧州では現時点では唯一と考えられる中世の板碑が発見されたことは特筆すべきであろう。そのほかフィンランドの2博物館において日本人による初めての調査を実施するなど、本研究の目的の一つとして掲げる欧州側の日本文化研究の推進にも貢献できたと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでと同様、当初計画した調査を先方の都合を勘案しながらできるだけ調査を実施し、データの更なる充足を目指す。そのため、研究分担者、連携研究者、研究協力者、海外研究協力者による現地調査を多く実現できるようにし、それについての成果報告を行うとともに、データベースに登録するための交渉も進める。最終年度に向けて9割方終了している博物館の調査完了を優先的に進める。中心となるのはブレーメン海外博物館、ミュンヘン5大陸博物館、ギリシャ・コルフ国立博物館などである。ブレーメンについては石造品、ミュンヘンについては絵画類、コルフについては法具を中心にまとめの調査と撮影を終了すればJBAE搭載可能となり各地の研究者による共同研究が可能になる。そのほかには日本人研究者がまだアクセスできずにいる重要コレクションの概要把握に努める。スウェーデン国立博物館やサンクトペテルブルクのクンスト・カメラ博物館を想定している。 それらを踏まえて、在欧日本仏教美術の特徴の総括とそこから明らかになるジャポニズムの本質に迫る研究会などを試みて、最後のまとめに代えたい。
|