2017 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ若者就労支援の研究ー成長過程に即した包活的支援と最低生活保障の視点から
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16H05695
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
木下 秀雄 龍谷大学, 法学部, 教授 (50161534)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 真理 東洋大学, 法学部, 教授 (20282254)
嵯峨 嘉子 大阪府立大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (30340938)
嶋田 佳広 札幌学院大学, 法学部, 准教授 (40405634)
布川 日佐史 法政大学, 現代福祉学部, 教授 (70208924)
吉永 純 花園大学, 社会福祉学部, 教授 (70434686)
武田 公子 金沢大学, 経済学経営学系, 教授 (80212025)
前田 雅子 関西学院大学, 法学部, 教授 (90248196)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 若者 / 就労支援 / 職業訓練 / ドイツ / 難民支援 / 労働力不足 / 最低生活保障 / 社会法典 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年5月14日、7月1日に研究会を持ち、ドイツの若者就労支援の現状と新たな展開の動向の分析を行い2017年度ドイツ調査先とテーマの確定の議論を行った。5月15日には日本の実態を確認するため「京都市社協 地域あんしん支援員事業及びチャレンジ就労体験事業」と「京都市ユースサービス協会子ども若者総合支援について」に聞き取り調査を行った。ドイツ調査は、8月22日から31日にかけて、ハンブルク、ベルリン、エッセン、デユッセルドルフ、フランクフルトの若者支援団体、関係行政機関の聞き取りと、研究者との意見交換を行った。 ドイツ調査では、例えばベルリンのGangway e. V. - Straßensozialarbeit in Berlinという民間支援団体が1990年のドイツ統一以来実施してきたアウトリーチによる若者支援活動の経験と、最近のSGB2編16h条制定による支援システムの改正の影響を確認することができた。また、フランクフルトでは、フランクフルト市の難民受け入れ担当者からの詳細の説明を受けたうえで、難民支援緊急施設と移行施設の現場調査を行い、受け入れ先の担当者の話を聞いた。 ドイツにおける若者に対する成長過程に即した包括的支援が、同時にSGB2編による最低生活保障を伴いながら行われている実態を確認するとともに、包括的支援を行うための安定した専門性の養成と、そうしたノウハウを蓄積している民間支援団体の養成と定着のための公的支援のシステムをどのように構築するか、ドイツでも財政事情や制度設計の変更により相当の揺れ幅があることを確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回調査研究の一つの柱である、難民受け入れと受け入れた難民の就労支援及び最低生活保障の関連については、すでに2016年8月9月にもフランクフルト難民受け入れ担当部局の聞き取りと受け入れ施設の調査を行ったが今回も現状を確認した。それによると、2015年3,140名、2016年2,250名であった難民受け入れ数は、2017年1月から8月まで250名となったということで、ドイツにおける大量の難民受け入れがひと段落したことが確認できた。そして、受けた難民も多くは緊急受け入れ施設を経て移行施設に移っており、そこで難民資格認定が進み、さらに多くの人がドイツ社会の中に移行するようになっていることも明らかになった。しかしそれは同時に、SGB2編や3編、あるいは8編に基づく成長過程に即した包括的支援としての若者就労支援を最低生活保障とともに行うという課題の中に、大量の難民出自の若者が加わることを意味している。今回の聞き取り調査では、まだ各地の若者支援の対象に今回の大量の難民受け入れの影響は顕著にみられてなかったが、今後の課題であるとドイツの担当者も見ていることが確認できた。これら調査により、当初計画通り進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
ドイツでは今年に入ってようやく、2017年総選挙以後6か月を経過してCDSU/CSUとSPDの大連立が改めて発足した。そうした中、2005年の導入から20年余りたったSGB2編を中心とする最低生活保障と就労支援の結合という現在の制度設計に対する新たな批判が起こってきている。SGB2編は「支援と要請Förderung und Forderung」というテーマを掲げて、就労支援を制裁付きで行えば最低生活保障に滞留する人は大幅に減少すると見越していたが、これに対して、結果的に長期失業者層が最低生活受給層に定着してしまっているのではないか、特に若者に対する別建ての厳しい制裁規定が存続していることに対する批判が強まっている。 今年の調査では、引き続き自治体レベルの若者支援の体制と内容、その財源を含めた制度的背景を丹念に調査する。そしてそれとともに、前年までに調査してきた難民について、ドイツ国内に定着して以後、大量の若者がどのように受け入れられ、就労支援が行われ、また最低生活支援が行われているのかを調査する。そうすることで、ドイツがこれまで作り上げてきた若者をその成長過程に即して包括的支援するという若者就労支援と最低生活保障の結合というシステムが、難民背景の若者に対して実際にどのように機能するのか、その真価が問われるわけであり、換言すればその長所も欠点も新たな角度で確認することができると考える。同時に、調査研究の最終年であり、また、ドイツでも見直しの議論が行ってきていることに注目して、本研究対象の中心であるSGB2編全体の評価、さらにはSGB2編を生み出した2000年代初頭のハルツ改革全体の評価に関して、ドイツ人研究者と意見交換を行ない、改めてドイツの若者支援及び就労支援の評価と、日本にも通用する若者支援の理論的手掛かりを得ることを目指す。
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Research Products
(14 results)