2017 Fiscal Year Annual Research Report
自由主義伝統のなかのイギリス政治と2000年代後半以降の変化に関する政治史的研究
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16H05696
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
若松 邦弘 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (90302835)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山崎 幹根 北海道大学, 法学研究科, 教授 (30295373)
高安 健将 成蹊大学, 法学部, 教授 (90399783)
今井 貴子 (小関貴子) 成蹊大学, 法学部, 教授 (60552859)
平石 耕 成蹊大学, 法学部, 教授 (00507105)
木村 真 兵庫県立大学, シミュレーション学研究科, 准教授 (50419959)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 政治学 / 政治史 / イギリス政治 |
Outline of Annual Research Achievements |
3年計画の中間年度であり、検討のポイントを絞り込み、掘り下げる方向で作業を進めた。年度初めに本年度の方針と作業手順を再確認し、以後、アプローチごとの作業に着手した。年度後半には、各分析の見解を、協力をお願いしているイギリスの大学研究者(東京に招聘)とともに研究組織内で交換、分析の深化を図った。 主たる成果とその意義、重要性は以下のとおりである。 1【政治思想面】昨年度に続き20世紀前半に活躍した政治学者A・D・リンゼイを中心に考察を進め、その民主主義理論が現代産業社会における「疎外」と、その帰結である「全能国家」への思想的応答として構想されていることを明らかにした。 2【国家構造面】イギリスの国家構造の中心にあって議会主権に基礎付けられる議院内閣制について、その特徴と成立の前提、政府、政権党、政党間競争、これを支える他の国家構造の観点から検討した。 3【財政構造面】イギリスの中央・地方間の財政移転、自治体間連携の変遷と特徴、論点について、その制度的論拠や考え方の変化、共同事業と分権の関係を検討した。 4【福祉政治面】主要政党間の政策距離の推移と自由主義の再定位を検討すべく、ブレア・ブラウン期労働党の経済社会政策と言説の学術的評価の精査、ポスト・ニュー・レイバー期に拡大する主要政党の政策位置取りの論拠の考察、人々の受益者意識の変化と新たな対立軸の発現の背景の検討を行った。 5【分権政治面】スコットランド政府による所得税の累進性を強化する改革を考察するとともに、2014年以降強まっていた独立運動に対して、堅調であるとする見方と、弱体化しつつある見方が併存している構図を明らかにした。 6【政治社会面】国政レベルでの政党支持の変容を政治社会の分断状況の変化から明らかにするため、ブロックごとの産業構造ならびに政党競合の特徴に注目し比較検討を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度実施できなかったイギリスの大学研究者を交えての分析は(当該研究者の来日が親族の急病のため中止)、あらためて今年度に行った。1年遅れとなったものの、その間の研究動向の推移を交えての意見交換は、本研究の進捗状況に照らし、有益なものとなった。 その他の作業を含め、研究全体に特段の遅れはなく、今年度までのところ、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は3年計画の最終年度であり、過年度で得られた分析の妥当性を確認するとともに、本研究の目的である、2000 年代後半以降のイギリス政治を自由主義伝統のなかに位置づけるという観点から、総合的な解釈を試みる。 1. まずはこれまでの成果に基づき分析結果の考察を深める。その作業のなかで、当初の調査計画を微調整し、5月までに年度の研究戦略を確定する。 2. 夏から秋にかけ調査地を訪問し、前年度までの作業を補完する形で資料収集を行う。 3. 年度後半は、上記、本研究の目的に照らした解釈の観点から、外部の研究者を交えた会合の機会を設け、期間全体の各アプローチの分析を検証するとともに、論文や口頭発表の形で成果の公表を進める。 なお、本研究の観点からも、イギリスでの2016年国民投票に起因する実態面ならびに学説面の変化の影響が小さくないものとなってきた。本年度の作業では、この変化を考慮した分析が必要となってきていることに留意する。
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Research Products
(12 results)