2016 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアにおける重層的サブリージョンと新たな安全保障アーキテクチャ
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16H05700
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
多賀 秀敏 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (30143746)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 幸男 帝京大学, 文学部, 教授 (00162496)
佐渡友 哲 日本大学, 法学部, 教授 (80178798)
高橋 和 山形大学, 人文学部, 教授 (50238094)
若月 章 新潟県立大学, 国際地域学部, 教授 (20290059)
大津 浩 成城大学, 法学部, 教授 (10194200)
森川 裕二 長崎大学, 多文化社会学部, 教授 (90440221)
柑本 英雄 実践女子大学, 人間社会学部, 教授 (00308230)
吉川 健治 東洋英和女学院大学, 国際社会学部, 教授 (30512727)
臼井 陽一郎 新潟国際情報大学, 国際学部, 教授 (90267451)
五十嵐 誠一 千葉大学, 法政経学部, 准教授 (60350451)
福田 忠弘 鹿児島県立短期大学, その他部局等, 教授 (50386562)
中山 賢司 創価大学, 法学部, 准教授 (10632002)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 国際関係 / 非国家行為体 / 拡大メコン圏 / 東シナ海 / 北東アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
拡大メコン圏(GMS)班では、GMS協力の進捗状況と国境周辺地域の変化に関し、2017年3月5日から13日までの9日間、現地調査を行った。具体的には、中国雲南省の昆明からタイ・バンコクに至る南北経済回廊のうち、雲南省西双版納景洪からミャンマー北東部を経由してタイのチェンライに至る「ミャンマー経由ルート」と、景洪からラオス北部を経由してタイ・チェンライに至る「ラオス経由ルート」の一部を視察した。また、カンボジアにおける労働状況や労働組合法制定、2016年3月に起きたミャンマーの政権交代が政治社会に与えた影響についての調査も実施した。 東シナ海班としては沖縄県のアジア経済戦略調査を行った。具体的には香港および台北の海外事務所を訪問し、現場での観光客誘致、物産販売戦略、投資および企業誘致や経済協力のための覚書(MOU)締結における海外事務所の役割について聞き取り調査を実施した。 その他、イギリス・シェフィールド大学にて、グレン・フック教授とRoutledgeから出版予定の英文書籍に関する研究打合せを行った。同時にBrexitに関連する市民運動・国際機関への調査を合わせて行った。 国際会合としては2017年1月7日、第6回日韓知識人ワークショップに参画した。李起豪(韓信大学教授)を代表とする韓国研究者と日韓の政治状況およびトランプ政権による北東アジア政策が与える地域秩序への影響について議論を持った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は当初の計画通り、サブリージョンの「国家戦略」について分析をすすめた。これについては上述のとおり、海外調査を実施し計画通りに現地の最新状況の把握に努めることができた。特にGMSの経済回廊については開通してもなお未整備部分が多く、ドラスティックな変化にまでは至っていないことが確認できた。また、ラオス国内においては中国資本による経済開発が環境破壊や自然災害といった負のリスクを高める側面があることも観察できた。これらが意味するところは、GMS協力が政治経済的国家戦略の一環としてなされており、サブリージョン協力に期待されるもう一側面、すなわち市民性や普遍的価値の涵養には未だ結びついていない状況を示すものであった。 研究成果のアウトプットとして、平成28年10月9日に開催された北東アジア学会学術研究大会(慶應義塾大学)では企画セッション「地域概念の再検討」を持った。そこではEU、東南アジア、東北アジアを事例にサブリージョンの実態と形成過程について、政治学および地理学の観点から議論を行った。フロアからの質疑応答を含めて活発な討論につながった。 さらにRoutledge社からはピアレビューを経て「THE NEW INTERNATIONAL RELATIONS OF SUB-REGIONALISM:ASIA AND EUROPE」の出版契約に至った。これまで蓄積されたサブリージョン研究の成果を世界へ広める機会を得たという意味で大きな進展と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度も引き続き、各サブリージョンでの入念な現地調査を実施し、その実態把握に努める。本研究は「国家戦略」「中央・地方関係」「非国家行為体」の3点に焦点を当て分析を進めているが、本年度は特に「中央・地方関係」に注力する。大図們圏、環日本海圏、環黄海圏、環東シナ海圏、華南・華越地域がその対象となる。 また、全体研究会を開催し(6月を予定)、各班による調査状況の報告を行う。昨年度重点的に調査を進めた「国家戦略」について、各班との比較分析を行うとともに、本年度の調査対象である「中央・地方関係」に関して特に注視すべき要点を確認し、各班との共通理解を図る。同時に英文書籍に続く学術書刊行について、最終年度終了を目処とすることで意思疎通を図る。 研究成果の公表としては、これまで通りメンバーによる論文・著書執筆のほか、学会でのパネル企画を計画する。 さらに、かねてより進めてきた英文書籍の出版準備も継続する。英文校閲を順次完了させ、今年度中にすべての原稿を入稿する予定である。
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Research Products
(27 results)