2016 Fiscal Year Annual Research Report
リン酸化酵素フォールディング中間体を新規標的とした革新的創薬技術基盤の構築
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16H05926
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
喜井 勲 国立研究開発法人理化学研究所, 科学技術ハブ推進本部, ユニットリーダー (80401561)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | DYRK1A / リン酸化酵素 / フォールディング中間体 / 自己リン酸化 |
Outline of Annual Research Achievements |
代表者(喜井)は、リン酸化酵素DYRK1Aに対する低分子阻害剤の作用機序を研究する中で、DYRK1Aのフォールディング途中に、一過的に存在する「中間体構造」を標的とする自己リン酸化阻害剤FINDYを発見し、それはリン酸化酵素ファミリー間で極めて高い特異性を示すことを見出した。本研究では、このDYRK1Aフォールディング中間体阻害の分子機序を解明し、その成果を活用して、大規模化合物ライブラリを対象とした中間体阻害剤スクリーニングを実施する。この一連の技術基盤を活用し、他のリン酸化酵素のフォールディング中間体が触媒する自己リン酸化を特異的に阻害する化合物を探索することで、創薬の課題解決に取り組む。平成28年度は、項目(1)FINDYによるDYRK1Aフォールディング中間体阻害メカニズムの解明に取り組み、FINDYによる分子内自己リン酸化阻害に必要なDYRK1A最小領域を同定した。必要最小領域は、DYRK1AのSer97を含むN末端周辺とリン酸化酵素活性ドメインのみであり、C末端ドメインは一切必要ではないことがわかった。さらに、この必要最小領域に対して、FINDYは直接結合して作用することを明らかにした。加えて、この研究の過程で、なぜ自己リン酸化がフォールディング中間体でのみ起こるかを説明できるかもしれない現象を発見した。すなわち、必要最小領域の中に、自己リン酸化に必要な領域を発見し、その部分のフォールディングの成否が自己リン酸化の進行を決定することを見出した。この結果は、フォールディング中間体の構造的な示唆を有しており、フォールディング中間体の構造を解く手がかりになると期待される。また、項目(2)フォールディング中間体を標的とした化合物スクリーニングの研究に取り組み、in vitro translationを用いた活性評価系の構築を完了し、そのハイスループット化を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
項目(1)FINDYによるDYRK1Aフォールディング中間体阻害メカニズムの解明の研究を進めている途中で、様々な発見をする機会に恵まれ、そのより詳細な分子メカニズムを解明することに時間を多く使うことにした。そのため、項目(2)フォールディング中間体を標的とした化合物スクリーニングの研究の進捗が思わしくなく、現時点でハイスループット化の目処は立っているが、化合物ライブラリを用いたスクリーニングまでは進んでいない。そのため、「やや遅れている」と判断している。項目(2)の化合物スクリーニングを行うにしても、より本質的な部分で分子メカニズムを理解した上で構築されたスクリーニングシステムを用いる方が、正しいヒット化合物が得られると考え、項目(1)の研究をさらに推進することとした。 項目(1)の研究において、フォールディング中間体の構造を解くための手がかりとなる知見を得ることに成功している。これを生かし、より効率的なスクリーニングシステムや、構造からの理論的な中間体特異的阻害剤の設計などが可能になると期待される。平成29年度は、項目(1)の知見を生かしつつ、様々な方向からの化合物スクリーニングシステムの構築を進め、最適な方法で、FINDYに続く、新しいフォールディング中間体特異的阻害剤となり得る新規骨格の取得を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、項目(1)で得られた知見を基盤として、活性評価系のハイスループット化を進め、化合物ライブラリを対象としたスクリーニングを実施し、FINDYに続く、新しいフォールディング中間体特異的阻害剤となり得る新規骨格の取得を目指す。また、項目(1)で得られた基礎的な知見は非常に興味深く、フォールディング中間体の構造を解くための研究につながると期待されるため、この研究も継続して行う予定である。 また、平成28年度は、項目(2)の研究として、細胞内でのDYRK1Aの構造変化を検出するためのBRETシステムの構築を行なった。発光タンパク質nanoKAZと近赤外蛍光タンパク質CyOFP1の組み合わせによって、非常に効率の良いBRETの検出が可能となったが、このBRETの変化と、構造変化の相関性について、未だ構造変化についての情報が少ないため、きちんとした解釈が非常に難しいことが明らかとなった。項目(1)で得られた構造的な知見を元に、このBRET変化の意味するところをはっきりとさせるためにも、項目(1)で得られた基礎的な知見をさらに発展させる研究を進めていく予定である。
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[Journal Article] Selective inhibition of the kinase DYRK1A by targeting its folding process2016
Author(s)
Isao Kii, Yuto Sumida, Toshiyasu Goto, Rie Sonamoto, Yukiko Okuno, Suguru Yoshida, Tomoe Kato-Sumida, Yuka Koike, Minako Abe, Yosuke Nonaka, Teikichi Ikura, Nobutoshi Ito, Hiroshi Shibuya, Takamitsu Hosoya & Masatoshi Hagiwara
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Journal Title
Nature Communications
Volume: 7
Pages: 11391
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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