2016 Fiscal Year Annual Research Report
高解像度近赤外線多天体分光で探る銀河形成におけるフィードバック過程
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16H06000
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
美濃和 陽典 国立天文台, ハワイ観測所, 助教 (60450194)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 銀河進化 / 銀河形成 / 光赤外線天文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、すばる望遠鏡の補償光学系(AO188)、及び近赤外線装置(IRCS)に多天体分光モジュールを加える事で、宇宙の歴史の中で銀河の進化が最も激しく進んだと考えられている約 100 億年前(赤方偏移2) の遠方銀河の高解像度かつ高効率の観測を行う事を目的としている。これにより、その銀河内部で星形成活動に伴うアウトフローを検出し 、ガスの流出量を見積もる事で、銀河進化の過程の中で、自身の星形成活動を抑制するフィードバック過程がど のように効いているかを明らかにする事ができると考えている。
平成28年度は、本研究で開発する多天体分光モジュールで用いる、デジタルマイクロミラー(DMD)を入手し、駆動性能、光学性能の評価を行った。また、平成28年度に参加した天文装置に関する国際研究会に置いて、他の研究グループから、DMDを温度100Kの冷却環境下で用いた装置に関する研究発表が行われたのを受けて、我々が開発する多天体分光モジュールについても、冷却環境下での使用の可能性を探るべく、光学系の概念設計、DMDの冷却環境下での性能評価を行った。その結果を元に、冷却環境下での光学系、機械系の詳細設計、及びコストの評価を行ったところ、コストが想定以上に必要である事が判明したため、将来的な冷却光学系へのアップグレードの可能性を残した上で、低コストでの開発を実現するために、常温環境で駆動する光学系 、機械系の設計に変更し、研究計画全体を見直すための予備実験を行った上で、光学系、機械系の詳細設計を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究で開発する多天体分光モジュールの性能を当初の想定よりさらに向上させるべく、冷却環境下での設計検討を行ったため、当初の予定よりも設計に時間を要した。結果として、本研究の予算規模では、冷却光学、機械系の製作が難しい事が分かったため、将来的な拡張性を残した上で、当初の想定通りの常温光学系で開発を行う事とした。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに行った詳細設計をもとに、光学系、機械系の製作、望遠鏡、既存観測装置とのインターフェースの調査、ソフトウェアの開発を行い、平成30年度内の多天体分光モジュールの装置完成を目指す。最終年度である平成31年度には、国立天文台ハワイ観測所へ装置を持ち込み、すばる望遠鏡において観測を行う予定である。
装置開発と並行して、観測的研究の遂行も行う。 これまでに行ったすばる望遠鏡IRCS+AO188による星形成銀河の高解像度狭帯域撮像観測の成果をもとに、本研究で開発する多天体分光モジ ュールによる追観測の可能性を検討する。また、試験観測のターゲットとなり得る近傍のスターバ ースト銀河について、アーカイブデータの調査を行い、観測候補天体のサンプルを構築する。
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Research Products
(3 results)