2017 Fiscal Year Annual Research Report
高解像度近赤外線多天体分光で探る銀河形成におけるフィードバック過程
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16H06000
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
美濃和 陽典 国立天文台, ハワイ観測所, 助教 (60450194)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 銀河進化 / 銀河形成 / 光赤外線天文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を用いて、スリット形状を任意に決定できる多天体スリットモジュールを開発し、すばる望遠鏡の補償光学装置(AO188)、及び近赤外線撮像分光装置(IRCS)に搭載する事、また同装置を用いて星形成銀河を空間分解した分光観測を行い、銀河内部の星形成領域でのアウトフローの検出を目的としている。これにより、星形成銀河からのガスの流出量を見積もり、自身の星形成活動を抑制するフィードバック過程がどのように効いているかを明らかにできると考えている。
平成29年度は、多天体スリットモジュールの光学系、機械系の最終設計を行い、AO188とIRCSの間への搭載方法、アラインメント方法の確立と、予測される性能の評価を行った。その結果、IRCSの観測波長域である1.0-2.5ミクロンの波長域の間で、良好な星像が得られる設計解を得る事ができ、機械系についても既存のインターフェースの制約の中で成立する設計解を得る事ができた。当初の予定では、平成29年度中に製作を完了する予定であったが、前年度に行った概念設計段階での進捗の遅れにより、全体的に計画の遅れが生じたため、平成29年度末に完成した光学系の設計をもとに、一部の光学系を入手するのみにとどまった。平成29年度に使用予定であった製作費は平成30年度に繰り越し、平成30年度に残りの光学系の製作、機械系の製作を完了し、実験室において仮組みを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究初年度に、国外の共同研究機関と協力し、本研究で開発する多天体スリットモジュールの性能を当初の想定よりさらに向上させるべく、冷却環境下での設計検討を行ったが、当初の予定よりも設計に時間を要し、結果として本研究の予算規模では、冷却光学、機械系の製作が困難である事が分かった。そのため、将来的な冷却システムへの拡張性を残した上で、当初の想定通りの常温光学系 で開発を行う事とした。初年度の進捗の遅れにより、平成29年度の進捗も当初計画していたものから遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究で製作した多天体スリットモジュールの、実験室での性能評価を行い、必要な性能を確認した上で、装置を国立天文台ハワイ観測所に持ち込み、すばる望遠鏡への搭載、試験観測時間の獲得に向けた準備を行う。 装置開発と並行して、これまでに行ったすばる望遠鏡IRCS+AO188による星形成銀河の高解像度狭帯域撮像観測の成果をもとに、本研究で開発する多天体スリットモジ ュールによる観測検討を行う。また、試験観測のターゲットとなり得る近傍の星形成銀河について、観測候補天体のサンプルを構築し、試験観測の立案を行う。
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