2016 Fiscal Year Annual Research Report
がん分子標的探索の新戦略-ATP代謝回転プロテオミクス
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16H06150
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Research Institution | National Institutes of Biomedical Innovation, Health and Nutrition |
Principal Investigator |
足立 淳 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 プロテオームリサーチプロジェクト, プロジェクト研究員 (20437255)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | プロテオミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
癌分子標的薬の多くは、キナーゼをはじめとするATP代謝酵素を標的としている。癌特異的に活性化している酵素は有望な分子標的であり、そのような酵素を見つけるためには、酵素活性を測定することが最もストレートな手法である。食道扁平上皮癌は、術前化学療法後の外科的切除の併用が標準的であり、現在分子標的薬が用いられていないため、本研究において日本人由来食道扁平上皮癌細胞株を用いて分子標的探索を実施する。 H28年度はATP代謝回転一斉定量解析のための質量分析基盤の構築を行った。解析手法は多検体解析に適したTMT10plexによるマルチプレックス解析を採用した。具体的には、細胞からタンパク質抽出後に、ATPプローブの標識、還元アルキル化、トリプシン消化、ストレプトアビジンビーズによる標識ペプチドの濃縮後にTMT10plex試薬による標識を行い、陽イオン交換マイクロカラムで6分画を行った後に、質量分析に供した。この際、ATPプローブとTMT試薬で標識されたペプチドは、未標識ペプチドと比較して、より陽イオン交換マイクロカラムに保持される傾向が見られたため、溶出液の組成をより溶出力が強くなるように最適化を行った。その結果10065個のATPプローブ結合ペプチドを検出し、そのなかには311個のキナーゼ由来のペプチドが含まれていた。 また次年度に解析予定の食道扁平上皮癌細胞株18株について、培養を行い、解析に使用する試料を回収、保存した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の目標である、質量分析の解析基盤構築において、マルチプレックス解析の採用や種々の手法の最適化により、感度と迅速性のバランスのとれた解析基盤を構築することに成功した。本研究では次年度以降、食道扁平上皮癌細胞株を合計18株解析予定であるが、本年度に構築した解析基盤を用いることで、次年度の解析スケジュールの目処を立てることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度に構築したATP代謝回転一斉定量解析手法を用いて、食道扁平上皮癌の分子標的候補の探索を行う。 予備試験として食道扁平上皮癌細胞株KYSE170を用いてATP代謝回転プロテオーム解析を3回繰り返し行い、定量精度を算出し、実証試験での閾値を設定する。 実証試験として低分化・中分化・高分化型の食道扁平上皮癌細胞株を6株ずつ計18株と陰性対照正常細胞株3株を使用して、癌細胞株と正常細胞株の細胞中の酵素活性を一斉定量する。定量結果を統合し、クラスタリング、GeneOntology解析、パスウェイ解析を行い、癌細胞株で高頻度に活性化している酵素およびシグナル経路を分子標的候補として抽出する。
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