2017 Fiscal Year Annual Research Report
Study on cold adaptation strategies and secondary metabolites of Antarctic yeast
Project/Area Number |
16H06211
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
辻 雅晴 国立極地研究所, 研究教育系, 特任研究員 (70756923)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 菌類 / 低温適応 / 全ゲノム解析 / メタボローム解析 / トランスクリプトーム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の南極観測の拠点である昭和基地周辺では、担子菌類酵母の1種であるMrakia属菌が菌類の優先種として知られている。今年度はまず、Mrakia属菌の全ゲノム解析のデータを分析し、このMrakia属菌は不凍タンパク質の遺伝子を持っていないだけでなく、低温ストレスから細胞を守るのに欠かせないグリセロール合成系遺伝子の一部を持っていないという従来の極地産菌類の常識とは異なる特徴を持っていることを明らかにした。その後、昨年度昭和基地周辺の試料から分離したMrakia属菌について、温度別培養試験を行い、この属には同種でも氷点下での成長能に優れた株と氷点下ではあまり成長できない株の2つに分けられることが分かった。そこで同種でも氷点下での成長能が異なる2株を用い、至適増殖温度である10℃で培養し続けた場合と10℃で培養したのち-3℃に温度を下げて培養した場合、それぞれの温度での代謝産物蓄積量の変化をメタボローム解析の中でも特にキャピラリー電気泳動―質量分析法 (CE-MS)により解析を行なった。その結果、低温でも高い成長能も持つ株は氷点下に晒されると芳香属アミノ酸やポリアミン類など細胞分裂や成長、細胞膜の生成に必要な代謝産物を高濃度に蓄積するが、氷点下であまり成長しない株では、このような物質の細胞内における蓄積は認められなかった。特に芳香属アミノ酸は生合成に大量のATPを必要とすることが知られていることから、Mrakia属菌はエネルギー源のATPを犠牲にしながら、氷点下で生存をしていることを明らかにすることが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は昭和基地周辺から分離したMrakia属菌について温度別培養試験の結果、Mrakia属菌には氷点下での成長能が異なる2つのグループに分けられることを明らかにできた。また、氷点下で成長能が異なる同種のMrakia属菌についてメタボローム解析を行なった結果、この菌はATPを大量生産することで低温への適応を行なっているという結果を得ることが出来たため、順調に研究が進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も核実験・分析において、研究の中断または大きな変更を求められるような重大なトラブルが生じる可能性は低いため、基本的には当初の研究計画通りに研究を推進して行く予定である。
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