2016 Fiscal Year Annual Research Report
線維症マウスモデルにおける疾患特異的M2マクロファージの研究
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16H06234
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
佐藤 荘 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (60619716)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 疾患特異的マクロファージ / 線維症 / アレルギー / メタボリックシンドローム / 細胞分化 / 自然免疫 / 創薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
新たな疾患特異的マクロファージを探索するために、治療法のない線維症に着目した。線維化初期に患部で増えるマクロファージについて解析を行ったところ、Ly6C-Mac1+の分画が増殖することを突き止めた。bioinformaticsを用いた解析から、本来1種類と思われていたLy6C-分画が更に3種に別れる事が分り、線維症をおこしたマウスにこれらの3つの細胞を別々に移植した所、Ly6C-分画中のMsr1+Ceacam1+monocyteを移植した時のみ、線維症が増悪した。 次に、この細胞の遺伝子発現パターンの網羅的解析を行ったところ、C/ebpbが高発現していることが分かった。免疫系の細胞でのみC/ebpbを欠損させたキメラマウスは、このLy6C-分画中のMsr1+Ceacam1+monocyteが欠損しており、線維症に対して非常に強い耐性を示した。野生型からこの細胞を回収し、C/ebpb欠損キメラマウスに移植して線維化を起こす薬を与えた所、線維症が再発したことから、この細胞が線維症の発症に必須である事が明らかとなった。 続いて、この細胞の形態的特徴を検討した。通常のmacrophageは丸い1つの核であるが、この線維症に関わる細胞は2核様の形態をとっていた。また質量分析を行った所、通常granulocyteがもっている顆粒も持っている事が分かった。以上の事より、この細胞は新しいマクロファージだと判断し、Segregated nucleus Atypical Monocyte (SatM)と名付けた。本研究成果はNATURE誌(2017 Jan 5;541(7635):96-101.) に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度に計画した項目ごとに記載する (①肺線維症の線維化期における疾患特異的マクロファージの同定と機能解析)同定したSatMの移植後の線維化の増悪の程度を予定通りCo11a1やActa2の測定、Azan染色やハイドロキシプロリンの量を測定することにより解析した。またマイクロアレイの解析結果から、分化に重要な因子を同定した。このマウスは所持していた系統であったために予定していたKDは行わずに、KOマウスの解析を行った。その結果、SatMがKOマウスでは欠損していることを明らかにした。 (②線維症疾患特異的M2マクロファージにおける病態進行に対する遺伝子発現の網羅的解析)①で得られたマイクロアレイの結果を用いて、クラスター解析をおこなった。現在、病態の進行とともに変化する遺伝子発現パターンを抽出済みである。これまで得られている他の疾患特異的マクロファージのデータと比較し、更にSatMで機能する分子を抽出する。また、この網羅的遺伝子発現データを用いて、pathway解析(IPA)を行い、他のマクロファージや顆粒球とは異なることを証明した。 (③線維症疾患特異的M2マクロファージの分化、及び活性化に関わる新規分子の同定と機能解析)予定通りY2Hスクリーニングをおこなったが、①で得られた分子が転写因子であったために、結合する新規な分子を得ることが非常に困難を極めた。現在、質量分析解析により、結合する分子の同定を試みている。 (④MRIを用いた病態及び、線維症疾患特異的M2マクロファージの可視化)MRIを用いて病態の可視化を野生型とKOマウスとで比較し、炎症・線維化の像を捉えることができた。この解析により、野生型及びKOマウスで同一個体を使って経時的に解析することができ、どの時点から両者に差がみられるのかを明らかにすることができた。細胞イメージングは現在、プローブの選定を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、線維症疾患特異的マクロファージSatMの活性化に関与する分子をマイクロアレイの網羅的遺伝子発現データから解析する。既にいくつかの候補は絞っているので、Crispr/Cas9によるKOマウス作製を行う。SatMの分化に必須なNFIL6だけでなく、新しく見つかった分子に関してもそれぞれと相互作用する分子をY2Hスクリーニング、及び質量分析解析によって同定を行う予定である。 また、MRIによるin vivoイメージング解析の際に、病態の定量性を正確に出す点が新しい問題としてでてきた。そこで、得られた像を定量化できるようなコントロール(例えば、炎症であれば水分子)の選定を行う事により、より詳細なイメージング像の抽出を行えるようにする予定である。 今後、SatMと他の免疫細胞や、非免疫細胞との相互作用を検討することにより、時系列の観点から線維化発症のメカニズムを検討する予定である。また、線維症を標的とした薬は未だ開発されていない。そこでこのマクロファージのヒトカウンターパートを見つけることができれば、そこから新規創薬の糸口に繋がることが考えられので、今後ヒト細胞を用いた検討も進める。
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[Journal Article] Identification of an atypical monocyte and committed progenitor involved in fibrosis.2017
Author(s)
Satoh T, Nakagawa K, Sugihara F, Kuwahara R, Ashihara M, Yamane F, Minowa Y, Fukushima K, Ebina I, Yoshioka Y, Kumanogoh A, Akira S.
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Journal Title
NATURE
Volume: 541(7635)
Pages: 96-101
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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