2016 Fiscal Year Annual Research Report
齧歯類の自然治癒能再現化によるヒト滑膜幹細胞を用いた軟骨半月板再生医療技術の開発
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16H06262
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
水野 満 東京医科歯科大学, 再生医療研究センター, プロジェクト助教 (00733908)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 滑膜幹細胞 / 局在解析 / 再生能 / 再生医学 |
Outline of Annual Research Achievements |
変形性膝関節症に伴う半月板損傷や軟骨変性に対し優れた再生医療技術を開発することは、国内だけでも疼痛等の症状を有する約850万人と推定される莫大な規模の患者に待ち望まれている。さらに、要介護の原因の10%が変形性関節症と試算されており、社会保障費増加による財政圧迫が大きな社会問題となっている。超高齢化社会を迎えた我が国において健康寿命を延伸させるため、短期で実用化可能な運動器疾患に対する質の高い治療法開発が急務である。 これら運動器疾患に対する新規治療法の開発を目指し、患者負荷の低い再生医療技術をベースとした基礎研究と技術開発に取り組んできた。治療に用いる滑膜幹細胞などの組織幹細胞は高い増殖性だけでなく多分化能を有する細胞であり、その増殖・分化は自律的に決定されるだけでなく、周囲の細胞や基質によって制御されている。この細胞外環境シグナルを裏付ける滑膜幹細胞の局在を明らかにすることは、特性に基づいた制御法を開発する上で極めて重要である。 以上の背景から、ヒト組織における滑膜構成要素毎に分離した細胞の詳細な機能解析を行った。滑膜組織を3つの構成要素に分類し、フローサイトメトリー法と蛍光標識モノクローナル抗体を用いた高精度な細胞分離法により純化し、細胞の増殖能、コロニー形成能、軟骨分化能、骨分化能、脂肪分化能を解析した。その結果、分類した細胞において高い能力を有する細胞を同定し、国際学会で発表した。また、以上の成果は現在論文を作成中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト組織における滑膜構成要素毎に分離した細胞の詳細な機能解析を行った。本学倫理委員会に承認されて、患者の同意を得た本学附属病院整形外科における人工膝関節置換術時に得られた滑膜組織を用い、ヒト組織の解析を行った。滑膜組織を3つの構成要素に分類し、フローサイトメトリー法と蛍光標識モノクローナル抗体を用いた高精度な細胞分離法により純化し、細胞の増殖能、コロニー形成能、軟骨分化能、骨分化能、脂肪分化能を解析した。その結果、分類した細胞において高い能力を有する細胞を同定し、国際学会で発表した。また、以上の成果は現在論文を作成中である。 これらの高い軟骨分化能を有する細胞に特徴的な因子の探索を試みた。高い軟骨分化能を有する細胞と、通常の培養法で得られた細胞間における軟骨分化能の差が何に起因するかを網羅的遺伝子解析により候補遺伝子を探索するとともに、その上流に位置するパスウェイの同定を試みた。 ヒト組織を用いた検証以外に、半月板切除モデル動物における再生過程を解析した。申請者らが独自に確立した半月板切除モデル動物において、再生過程の初期から後期の滑膜組織を採材し、組織再生過程を解析した。
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Strategy for Future Research Activity |
・半月板切除モデル動物に生じる劇的な再生過程での幹細胞局在を解析する。 ヒト滑膜組織で得た知見を基盤として、滑膜組織を3つの構成要素に分類して、半月板切除モデル動物の自然治癒過程における幹細胞局在とその変動を解析する。滑膜構成要素の挙動を治癒過程の初期から後期にかけて観察する。特に、軟骨の初期分化マーカーであるSox9や軟骨基質に関連するCollagen type 2やAggrecan などに連動した因子を探索する。 ・候補因子の発現に作用する添加・阻害物質を用いて解析する。 同定した標的因子の発現に作用する物質を添加・阻害することで生じる滑膜幹細胞の増殖能、多分化能、遺伝子発現変動を解析する。候補因子のスクリーニング過程では、半月板切除マウスにおける滑膜幹細胞の挙動に付随する変動から、申請者らが保有している約150種類の抗体セットを活用した組織学的解析の結果を基盤として探索する。尚、in vitro解析系としては、recombinant proteinまたはinhibitorを用いて、従来培養法により樹立した滑膜幹細胞およびFACSにより局在毎に純化した細胞への増殖・分化に対する作用の検証を行う。
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[Journal Article] Transplantation of autologous synovial mesenchymal stem cells promotes meniscus regeneration in aged primates2017
Author(s)
Shimpei Kondo, Takeshi Muneta, Yusuke Nakagawa, Hideyuki Koga, Toshifumi Watanabe, Kunikazu Tsuji, Shinichi Sotome, Atsushi Okawa, Shinji Kiuchi, Hideo Ono, Mitsuru Mizuno and Ichiro Sekiya
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Journal Title
Journal of Orthopaedic Research
Volume: 35
Pages: 1274-1282
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] Complete human serum maintains viability and chondrogenic potential of human synovial stem cells: suitable condition for transplantation2017
Author(s)
Mitsuru Mizuno, Hisako Katano, Koji Otabe, Keiichiro Komori, Yuji Kohno, Shizuka Fujii, Nobutake Ozeki, Masafumi Horie, Kunikazu Tsuji, Takeshi Muneta, Ichiro Sekiya
Organizer
Orthopaedic Research Society 2017 Annual Meeting
Place of Presentation
San Diego, California
Year and Date
2017-03-19 – 2017-03-22
Int'l Joint Research
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