2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16H06278
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中野 貴志 大阪大学, 核物理研究センター, センター長・教授
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | 短寿命RI / 加速器 / プラットフォーム / 科研費支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、物理、化学、生物学の基礎研究から、工学、農学、薬学、医学分野の応用研究に至る幅広い研究分野でRIの需要が増加してきており、特に寿命が短い、或いは生成量が極めて限られるなどの理由から、コマーシャル市場では手に入らない短寿命RIの供給を求める声が急激に高まっている。そこで、本プラットフォームでは、科研費を取得して最先端の多様な研究に収り組んでいる研究者のニーズに応えるため、RI製造に適した加速器を有する4施設(大阪大学核物理研究センター(RCNP)、国立研究開発法人理化学研究所仁科加速器研究センター(RIBF)、東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター(CYRIC)、東北大学電子光理学研究センター(ELPH))が密に連携し、市販されていない基礎開発・研究用短寿命RIを加速器で製造してユーザーの希望する時期に必要な数量を供給する体制を整備した。これにより、年間を通じた短寿命RIの安定な供給が可能となり、またRIの取扱いに不慣れなユーザーを対象とした技術講習会を開催して安全なRI取扱いの技術支援なども実施してRI利用の普及に努め、先進的な研究や学際的な研究が格段に発展するための研究支援基盤形成を進めている。 本プラットフォームが支援する研究課題を選択するため、H29年6~7月とH29年12月~H30年1月に公募を行い、6名の外部委員と5名の内部委員から構成される課題選択委員会(委員長は中西友子東大特任教授)において厳正な審査を実施して科研費を既に取得している研究課題21件(RCNPから7件、RIBF4件、CYSIC6件、ELPH4件)を採択し、ユーザーの要望に沿った時期に4施設から短寿命RIを供給した。また、RI利用の初学者の指導やRI技術者の人材育成、研究用RIの安全な取扱いのための技術支援などを目的とした第3回RI技術講習会をH29年11月9、10日に名古屋大学で(参加者45名)開催したほか、第4回をH30年2月22、23日に東北大学CYRICで(参加者11名)開催し、講義と実習を実施した。また、短寿命RI利用研究の裾野を拡大して新規ユーザーを開拓するための国際ワークショップを山田科学振興財団の寄附金を得てH30年3月16、17日に大阪大学銀杏会館において開催し、国内外の研究者70名(内、外国人15名)が参加して32件の講演と討論を行った。一方で、本プラットフォームの活動を周知するために、専用のホームページを充実させていくと共に、学会や各種の学術集会での発表、学術雑誌への寄稿などを通じて本事業の紹介と説明を行った(5件)。なお、本プラットフォームの円滑な運営のために毎月1回、定例のネットワーク会議を開催し、4施設間の情報共有と懸案事項の審議等を適宜実施した。また、H30年度からは、量子科学技術研究開発機構放射線医学総合研究所サイクロトロン施設も本プラットフォームに加わることが決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本プラットフォームの中核機関である大阪大学核物理研究センターが短寿命RI利用希望者に対する一元化窓口となって4つの加速器施設の間の調整役となり、H29年度に科研費を取得した研究課題21件(RCNPから7件、RIBF4件、CYRIC6件、ELPH4件)に対して短寿命RIを供給した。本プラットフォームの運営に当たっては、月例のネットワーク会議の開催やメーリングリストを活用した情報交換・共有により、円滑且つ効率的な連携体制を維持した。RI利用者の要望や相談を受け付ける窓口専用のメーリングリストを整備し、寄せられた情報に対して即座に共有し、迅速に対処できるように、利便性と機動性を重視した運用体制を整備した。 本プラットフォームが採択した科研費課題は、H28年度の15件に対してH29年度は21件に増加しており、また本プラットフォームの取り組みにより新しい短寿命RI利用者も毎年度10件前後増えていることから、本プラットフォームの取り組みが次第に多様な分野に浸透しつつあることを示している。また、本プラットフォーム事業の実施に伴い、RI製造用のピームタイムが各施設で以前の1.5~2倍に増加しており、RI利用研究の潜在的なニーズの掘り起こしにも効果が現れてきていると考えられる。これらの取り組みは、H29年9月6日に公開された日本学術会議の提言「大学等における非密封放射性同位元素使用施設の拠点化について」の中でも良好事例として随所に取り上げられており、本支援事業が学術界で広く認知されると共にRI利用推進を担う新たな取り組みとして大いに期待されている。
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Strategy for Future Research Activity |
本事業の審査段階において、本プラットフォームに量子科学技術研究開発機構(QST)の放射線医学総合研究所と高崎量子応用研究所が加わるべきではないかとの指摘があり、参画に向けて両研究所に働きかけを行った結果、H30年4月より放射線医学総合研究所のサイクロトロン施設から短寿命RI(At-211、Zr-89、Cu-64, 67ほか)を供給して頂くことで正式に合意が得られた。QST放医研とQST高崎研が本事業の分担者として加わることにより、H30年度後半から予定されている阪大RCNP加速器施設の停止(約1年間)に伴うRI供給不足を補う目処が立ち、短寿命RI供給体制の強化が確実となった。加えて、日本原子力研究開発機構原子力科学研究所や福島県立医科大学などの加速器施設の参画も水面下で働きかけており、名実ともにオールジャパン供給体制の構築が見通せる段階に来ている。 潜在的なRI利用の需要をさらに発掘していくため、本支援プラットフォームの利用が予想される学会及びコミュニティに引き続き公募案内等の情報をメールなどで配信していくとともに、支援のプロセスや支援の内容、利用可能なラジオアイソトープや設備等の情報をまとめたWEBページを充実させ、応募し易い環境を整えていく。また、本プラットフォームの支援内容や方法等、技術的な側面に重点を置いたシンポジウムや研究会等を主催して、新規ユーザーの参入や短寿命RIを用いた新たな研究の萌芽を促すことを目指す。日本核医学会や日本薬学会等、多くの利用が期待される学会に課題選択委員会委員の推薦を依頼するとともに、日本アイソトープ協会や、本プラットフォームに参加していないRI供給機関からも委員を受け入れ、本プラットフォームでの支援が真に必要不可欠であることを担保し、より効果的なニーズの把握及び発掘のための助言と協力を得ていく。
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Research Products
(28 results)
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[Journal Article] On-line column chromatography of <88>^Nb with 52 wt% Aliquat 336 resin from HF media for Db experiment2017
Author(s)
D. Sato, M. Murakami, S. Goto, K. Ooe, R. Motoyama, K. Shirai, S. Tsuchiya, H. Haba, Y. Komori, S. Yano, A. Toyoshima, A. Mitsukai, H. Kikunaga, and H. Kudo
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Journal Title
RIKEN Accel. Prog. Rep.
Volume: 50
Pages: 246
URL
Open Access
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[Journal Article] Batch solid-liquid extraction of Nb and Ta with 52 wt% Aliquat 336 resin from HF solutions2017
Author(s)
D. Sato, M. Murakami, K, Ooe, R. Motoyama, H. Haba, Y. Komori, A. Toyoshima, A. Mitsukai, H. Kikunaga, S. Goto, and H. Kudo
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Journal Title
RIKEN Accel. Prog. Rep.
Volume: 50
Pages: 249
URL
Open Access
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[Journal Article] Development of a production technology of <211>^At at the RIKEN AVF cyclotron. (i) Production of <211>^At in the <209>^Bi(a,2n) <211>^At reaction2017
Author(s)
N. Sato, S. Yano, A. Toyoshima, H. Haba, Y. Komori, S. Shibata, K. Watanabe, D. Kaji, K. Takahashi, and M. Matsumoto
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Journal Title
RIKEN Accel. Prog. Rep.
Volume: 50
Pages: 262
URL
Open Access
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