2019 Fiscal Year Annual Research Report
Behaviour of liquids under high pressure and the early evolution of the Earth
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16H06285
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
廣瀬 敬 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (50270921)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大石 泰生 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 回折・散乱推進室, 主席研究員 (20344400)
舘野 繁彦 東京工業大学, 地球生命研究所, 研究員 (30572903)
小澤 一仁 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (90160853)
Alfred Baron 国立研究開発法人理化学研究所, 放射光科学研究センター, グループディレクター (90442920)
ハーンルンド ジョン 東京工業大学, 地球生命研究所, 教授 (30723712)
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Project Period (FY) |
2016-04-26 – 2021-03-31
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Keywords | 初期地球 / 高圧 / 元素分配 / マグマオーシャン / コア形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、液体鉄-硫黄合金の音速を高圧下で精密に決定する技術の開発に成功し、火星コアの圧力に相当する20万気圧までの測定に成功した。その結果、硫黄量の大小に関わらず、火星コアの圧力範囲では液体鉄-硫黄合金の音速はほぼ一定であること、火星を現在探査中のInSightなどにより、近い将来火星コアの火震波速度があきらかになれば、それと今回の実験結果を直接比較することにより、火星コアが液体鉄-硫黄合金であるかどうかについて決着をつけることができる。また、静的圧縮実験とX線回折実験の組み合わせにより、液体の密度を高圧下で正確に決定する新たな手法の開発に成功した。その結果、地球の外核(液体コア)の主成分である液体鉄の密度をコアの圧力近くまで決定し、観測される外核の圧縮率と液体鉄のそれはほとんど同じであることをあきらかにした。このことは未だ議論がある外核の軽元素の特定に向け、大きな制約になる。その他、コア圧力までの鉄合金同士の液体不混和の観察、Fe2Sなど鉄-軽元素系の鉄に一番近い中間組成物の特定とその結晶構造の決定、コアの熱伝導率決定にとって重要な飽和電気抵抗率の精密決定などに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記した、静的圧縮法によって、高圧高温下での液体の密度の決定を技術的に可能したことは大きな意味をもつ。高圧発生装置の構造上の制約から、高圧下でX線回折データを取得できる回折角の範囲はどうしても限られる。ゆえに従来は、限られた回折角の範囲の液体ハローパターンから導出される密度には大きな誤差があるとされてきた。しかし今回、原子間距離より短い範囲に他の原子は存在しないという物理的な制約をかけて液体からのハローパターンを観察された回折角を超えて延長することにより、液体の密度が正確に決定できることを見出した。今回はこの手法を地球コアの主成分である液体鉄に応用したが、どの物質にも応用可能な手法であり、今後、高圧下での液体の密度決定に広く応用されると期待される。この手法はPhysical Review Letters誌に詳細に掲載されており、Science誌とNature Reviews Materials誌上でも紹介されている。また、コアの熱史や内核の運動を大きく左右するコアの熱伝導率の理解にあたり、鍵になるのが私たちが提案した電気抵抗率の飽和現象である(Gomi et al., 2013 PEPI; Ohta et al., 2016 Nature)。これはコアに相当する高温までの温度上昇に伴い、鉄の電気抵抗率の上昇が飽和するという現象であり、その詳細な理解には温度を精密にコントロールした実験が欠かせない。そこで今回、従来のレーザー加熱に代わり、温度の安定性と均質性にはるかに優れた内部抵抗加熱式による高温実験に超高圧下で成功し、この電気抵抗率の飽和現象の確認と、その飽和電気抵抗率の精密決定を行うことができた。これらにより、コアの熱伝導率が比較的高いことを再確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、今回開発に成功した高圧下の液体の密度決定の手法を使って、液体FeOの密度決定を行う。FeOはマントルの主成分の中で最も低温で融解する端成分であり、SiO2-MgO-FeOの3成分系の共融点もFeO近傍に存在する。つまり、地震学的な観測から、マントルの底にわずかに存在するとされるマグマの組成はFeOに近いはずである。この液体FeOの密度を決定することにより、マントルの底におけるマグマの存在形態を推定することができる。また、これも今回開発に成功した、内部抵抗加熱法と電気抵抗率測定を組み合わせて、いよいよ液体鉄の熱伝導率測定に挑む。またさらに、同様の測定を液体鉄合金についても行うことによって、不純物抵抗を液体中で決定する実験も行う。また、タングステンの配位数変化に関するXAFS実験を進め、地球のコア形成を理解する鍵であるタングステンの挙動につき、あきらかにしていく。
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Research Products
(34 results)
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[Journal Article] Melting in Fe-FeO to 204 GPa: implications for oxygen in Earth’s core2019
Author(s)
Oka, K., Hirose, K., Tagawa, S., Kidokoro, Y., Nakajima, Y., Morard, G., Coudurier, N., Fiquet, G.
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Journal Title
American Mineralogist
Volume: 104
Pages: 1603-1607
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Fe2S: The Most Fe‐Rich Iron Sulfide at the Earth's Inner Core Pressures2019
Author(s)
Tateno, S., Ozawa, H., Hirose, K., Suzuki, T., Kawaguchi, S., Hirao, N.
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Journal Title
Geophysical Research Letters
Volume: 46
Pages: 11944~11949
DOI
Peer Reviewed
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