2016 Fiscal Year Annual Research Report
Dynamic conformation and domain structure of lipid molecules in model biomembranes
Project/Area Number |
16H06315
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
村田 道雄 大阪大学, 理学研究科, 教授 (40183652)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
花島 慎弥 大阪大学, 理学研究科, 講師 (50373353)
土川 博史 大阪大学, 理学研究科, 助教 (30460992)
梅川 雄一 大阪大学, 理学研究科, 招へい教員 (20587779)
篠田 渉 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (70357193)
櫻井 香里 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50447512)
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Project Period (FY) |
2016-05-31 – 2021-03-31
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Keywords | 動的配座 / 脂質二重膜 / ドメイン構造 / スフィンゴミエリン / 脂質ラフト |
Outline of Annual Research Achievements |
a) ラフト系におけるスフィンゴミエリン(SM)分子の立体: 脂質二重膜中のSMの分子間相互作用研究において確立した合成手法と固体NMR法を用いて、SMアシル鎖の立体配座とコレステロール(Cho)の配向を系統的に解析した。その過程で、SM末端付近が興味ある挙動を示していたので、当初の予定を変更して赤外分光による解析を試みた。その結果、固体NMRだけでは不明であった末端付近のアシル鎖の特徴的配座がコレステロールの存在下に認められた。これは、対照として用いたフォスファチジルコリン(PC)と異なり、SM膜中でのコレステロールの深度がPCよりも深いことを示唆する結果と考えられる。 b) 原子分解能におけるラフト系における脂質分子の分子間相互作用と運動速度: 位置特異的な同位体標識体を用いて固体NMRを用いて、膜中の脂質分子の運動を直接観測する手法の開発を進めている。初年度は、SM の分子内磁気双極子相互作用の測定において、13C-15N結合が検出可能な緩和を誘発することを見出した。詳細な検討の結果、13C観測ではコントロールに含まれる14N核の緩和に対する影響評価が困難であるので、15Nを観測核として用い、15N-13Cと15N-12Cを比較した。僅かながら、縦緩和時間に差が認められたので現在実験条件の最適化を試みている。 c)膜タンパク質との相互作用における周辺脂質の立体配座: われわれは、膜タンパク質と周辺脂質についてはバクテリオロドプシン(bR)をモデルタンパク質として用いて 脂質との相互作用の解明を進めた。すなわち、フォスファチジルコリンやフォスファチジルグリセロールについてbRの有無により、リン酸エステルの化学シフト異方性がどのように変化するかを解析し、脂質頭部の電荷によって相互作用の様式が異なることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、本基盤研究で用いる同位体標識体の化学合成に注力した。その結果、目的達成に必要な標識脂質を多数合成することに成功した。また、一部については、実際に固体NMR法および赤外分光法による脂質の動態解析を行った。赤外スペクトルの測定を加えたことによって、当初の計画より数か月の遅延となったが、興味ある知見を得ることができたと考えている。また、緩和時間測定では、脂質分子のナノ秒オーダーの動き(主に軸回転運動)を解析する手法の確立に目途をつけることができた。また、タンパク質-脂質相互作用については、われわれが開発したNMR手法によってバクテリオロドプシンの会合状態と周辺脂質の関係について新知見を得ることができたので、初年度の進捗としては順調であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
a) ラフト系におけるスフィンゴミエリン(SM)分子の立体: SMの重水素標識体の解析についてはほぼ目途がついたので、コレステロールやフォスファチジルコリンについての解析を本格化したい。また、前年度合成した重水素/炭素-13標識脂肪酸を含むリン脂質を百ミリグラムのオーダーで合成する必要がある。これを用いて、SMのアシル鎖の運動性と配座を分離して観測する固体NMR実験に本格的に着手する予定である。 b) 原子分解能におけるラフト系における脂質分子の分子間相互作用と運動速度: 緩和時間に与える磁気双極子相互作用の寄与が見積もることができれば、SMについて正確な回転相関時間(τc)をもとめることが出来ると思われる。それによって、SM-コレステロール(Cho)相の高いオーダーの分子相互作用を明確にできると考えているので、この目標に向かって標識体のデザインと緩和時間測定を継続する必要がある。また、前年度合成した脂肪酸に加えて、ヘッドグループに13Cを導入したスフィンゴ脂質を化学合成し、ヘッドグループの違いによる膜物性への影響を調べる必要がある。 c)膜タンパク質との相互作用における周辺脂質の立体配座:バクテリオトドプシン(bR)に対する周辺脂質としてのフォスファチジルコリンやフォスファチジルグリセロールの性状につては解明が進んできた。次年度以降は、より細胞生理の上で重要なフォスファチジルセリン(eat me シグナル)などを対象にして、脂質のヘッドグループと膜タンパク質の会合状態の関係を解明する必要がある。
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