2016 Fiscal Year Annual Research Report
"African Potential" and overcoming the difficulties of modern world: Comprehensive area studies that will provide a new perspective for the future of humanity
Project/Area Number |
16H06318
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松田 素二 京都大学, 文学研究科, 教授 (50173852)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 至 京都大学, アフリカ地域研究資料センター, 教授 (60191938)
峯 陽一 同志社大学, グローバル・スタディーズ研究科, 教授 (30257589)
重田 眞義 京都大学, アフリカ地域研究資料センター, 教授 (80215962)
永原 陽子 京都大学, 文学研究科, 教授 (90172551)
品川 大輔 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 准教授 (80513712)
遠藤 貢 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (70251311)
高橋 基樹 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (30273808)
山田 肖子 名古屋大学, 国際開発研究科, 教授 (90377143)
落合 雄彦 龍谷大学, 法学部, 教授 (30296305)
竹村 景子 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 教授 (20252736)
大山 修一 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (00322347)
椎野 若菜 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 准教授 (20431968)
山越 言 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (00314253)
平野 美佐 (野元美佐) 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (40402383)
宮地 歌織 佐賀大学, 芸術地域デザイン学部, 客員研究員 (40547999)
目黒 紀夫 広島市立大学, 国際学部, 講師 (90735656)
阿部 利洋 大谷大学, 文学部, 教授 (90410969)
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Project Period (FY) |
2016-05-31 – 2021-03-31
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Keywords | アフリカ潜在力 / 紛争解決 / 環境保全 / 社会的平等 / 市民性 / コンヴィヴィアリティ / ローカルノレッジ |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度においては研究計画の第一段階が計画通りに実施された。現代アフリカ社会が経験している困難と課題を通時的・共時的に把握し、それに対する複数の処方箋について分析を試みた。それは、民族対立による暴動や衝突といった困難を例にとると、西欧近代的思考にもとづく処方箋としての政治の民主化や経済の市場化、社会の自由化の推進などであった。これに対して土着の伝統的思考に依拠した処方箋として、長老会議や伝統的和解儀礼の拡張 (Ali Mazurui, 2002)なども存在しており、本研究では「アフリカ潜在力」を活用した処方箋群の予備的調査を実施しながら、処方箋間の効果や意義の比較検討を行った。解明の対象とするアフリカ潜在力は、アフリカ社会が外部世界との折衝・交渉のなかで創造し実践・運用・生成してきた問題解決のための動態的な力であり、アフリカ社会が直面している種々の困難を乗り越え、状況を変革するための有効で実践的な方策となる可能性を有している。 その可能性を現場から実証的に吟味するために、初年度では、それらの問題を包括する三つの系(自然・介入、社会・共生、身体・継承)に属する問題分野ごとに組織された七つの研究班(環境・生態班、開発・生業班、および国家・市民班、対立・共生班、さらにはジェンダー・セクシュアリティ班、言語・文学班、教育・社会班)が、統一した問題意識を共有し有機的に連携しながら研究活動を推進するための土台作りを行った。 またアフリカ潜在力の問題解決のための汎用性を検討する作業を深化させるために、ウガンダのカンパラにおいて、第一回「アフリカ潜在力フォーラム」を開催した。東アフリカ地域を専門とする日本とアフリカ人の人文・社会科学分野の研究者を中心に、NGO実践家、国際機関の行政官が参加して集中的な議論を行った。その結果、これから5年間のプロジェクトの基本的な方向性を確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度で三つの系に属する七つの研究班が、問題意識を共有し、相互にバラバラ(個別的研究の寄せ集め)にならず、班としての統一性、班同士の連携と内容の共有を保証するための制度的土台作りを行うことを課題としていた。これについて、三度の全体会議において、各班のリーダーから「アフリカ潜在力」についてどのような統一した視座(方法)でアプローチが可能か、全体に向けて問題提起を行い、それをフィードバックする議論をつづけてきた。このようにして、それぞれの班の方向性を他の班のメンバーが共有し、各班が個人研究の寄せ集めの場にならないような仕組みを構築した。また各班同士の有機的連携を促進するために、複数の班が合同で研究会を組織する試みを実施し多角的議論の進展に大きな成果をあげた。 さらにこのプロジェクトに先立つ5年間、紛争解決と共生に絞って「アフリカ潜在力」の解明を行った基盤研究(S)時代から通算すると第六回のアフリカ潜在力フォーラムが、ウガンダのカンパラで開催され、アフリカ潜在力を、紛争解決のみならず、ほかの問題解決のための処方箋として検討していくための理論的、実証的枠組みと、それを実現するための制度的土台を構築することができた。こうした理論的実証的成果のいったんを、アフリカ人コア研究者との共編で『African Virtues in the Pursuit of Conviviality: Exploring Local Solutions in Light of Global Prescriptions』としてカメルーンの出版社から刊行した。この成果については、世界的に著名な政治学者であるモハムード・マムダニ教授(コロンビア大学)などから高い評価を得ている。このような日本人とアフリカ人の研究者の継続的で実質的な共同研究と協働作業は、これまでの日本のアフリカ研究でも前例のないものである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は、三つの柱を中心になされる。 第一の柱は、研究班活動に関わるものだ。班メンバーの「アフリカ潜在力」にもとづく問題意識の統一化をさらに進め、七つの研究班相互の有機的連携と方向性の共有をいっそう深めていくことが目指される。具体的には、班ごとに統一した研究テーマを定めて、共同で作業を進めることと、複数の研究班が共同・合同して研究班相互の連携を強化していくことである。 第二の柱は、アフリカで開催される「アフリカ潜在力フォーラム」に関する試みである。今年度のカンパラ・フォーラムにおいて、今後5年間で「アフリカ潜在力」のもつ問題解決の汎用性の力を総合的に解明する、という方向性が確認された。その方向性にもとづき、、次回以降のアフリカ潜在力フォーラムにおいては、毎回、統一したテーマを掲げてそれに対して様々な視点・視座からアプローチすることが決まった。ちなみに2017年度については、「現代アフリカにおけるアイデンティティの政治学から普遍性の政治学へ」を統一テーマとして検討することとなった。 第三の柱は、成果の発信に関わるものである。今後、プロジェクトの成果を、まず日本国内のアフリカ地域研究以外の地域研究学会において報告することと、海外のアフリカ地域研究学会に参加して報告することが検討されている。具体的には、日本における東南アジア学会、オセアニア学会において当地域の研究者と共同して問題解決のための「地域潜在力」に関するパネルを応募すること、北米やヨーロッパのアフリカ学会において、アフリカ人の共同研究者と協力してパネルの組織や共同報告の応募を行うこと、などが検討されている。
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