2018 Fiscal Year Annual Research Report
Molecular mechanism and physiological understanding of Autophagy
Project/Area Number |
16H06375
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
大隅 良典 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 特任教授 (30114416)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀江 朋子 (川俣朋子) 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (70435527)
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Project Period (FY) |
2016-05-31 – 2021-03-31
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Keywords | オートファジー / ATG / タンパク質分解 / RNA分解 / 酵母 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに公表した論文数は多くはないが、いずれも基盤となる成果である。現在本研究課題の中核となる論文4報を投稿準備中である。共同研究に関しても、理研・岩崎、微化研・野田、北大・金城、秋田大・中西氏らなどと緊密な連携が進みつつある。オートファジーにおける膜動態、即ちオートファゴソーム形成の分子機構に関してはオートファジー不能変異株の分離、ATG遺伝子の同定に引き続く、各 Atgタンパク質の構造と機能解析の進展により、ようやくその核心が解明される段階に至った。一方、オートファジーが細胞質成分のリサイクリング、品質管理などを通じて様々な生理機能に関わっていること、ガン、神経変性疾患を初め、成人病など様々な病態に関わっていることが報告され、多くの関心を集めている。しかしオートファジーがほぼ全ての細胞の持つ基本的かつ普遍的な機能であるため、その不全と報告されている表現型の間には多くのステップの存在が想定される。オートファジーにより、何時、何が、どのような機構で実際に分解されているかの実態である分解過程の系統的な解析を進めている。具体的には、様々な条件下でオートファジーの誘導した細胞から液胞、オートファジックボディが単離できるという酵母の型の特性を生かしてオートファジーによる分解基質を網羅的に解明している。また分解効率の解析から細胞質タンパク質の様々な環境下における存在様式の動態の解明を進める。液胞内 RNase欠損株が、液胞内に蓄積する mRNA, tRNA, noncoding RNAの網羅的解析を通じてその選択性を明らかにしつつある。さらにオートファジーの残された謎の1つであるリソソーム/液胞内における膜分解の分子機構を生化学的、遺伝学的手法を駆使して明らかにしようと試みている。またオートファジー分解産物、とりわけアミノ酸の特異的役割について明らかにし、論文投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.酵母のオートファジーによる液胞内の細胞質タンパク質の分解に伴い、 亜鉛や鉄イオンが液胞から遊離することで、細胞質の実効濃度が制御されており、オートファジーのイオンホメオスタシスにおける重要性が明らかとなった。2.増殖過程におけるオートファジーの動態を明らかにした。グルコースによってオートファジーが抑制されること、グルコースの枯渇に伴うダイオキシックシフト時にオートファジーが誘導されることを明らかにした。培地を検討し炭素源の状態変化に対応した各増殖相における多様なオートファジーの誘導を解明した。エタノール増殖細胞は構成的オートファジーを起こすことを示した。3.発酵性炭素源から非発酵性炭素源への変換には、オートファジーによって生じるセリンが重要な役割を持つことが分かった。セリンはミトコンドリア内の1炭素代謝系を通じてミトコンドリア開始tRNAのホルミル基の供与体合成を通じて、ミトコンドリアの翻訳に関わる。分解産物の生理的意義が明らかになった例となった。(投稿準備中)4.オートファジーに伴って液胞に蓄積する RNAの網羅的解析により、mRNAに選択性があることを示すことに成功。そのメカニズムに迫りつつある。5.液胞内9種のアミノ、カルボキシペプチダーゼ欠損株を構築する過程で副産物としてペプチダーゼがプロテアーゼの活性化に必要であることを解明、この問題を回避し分解ペプチドからオートファジー基質の同定する方法が確立しつつある。6.PAS形成の初期過程の理解が飛躍的に進んだ。飢餓による Torの不活性化に伴う Atg13の脱リン酸化によりAtg1, Atg13, Atg17-Atg29-Atg31からなる5者複合体が形成される。Atg13が2つのAtg17結合部位を持つことで、さらに高次の複合体が形成される。この形成によるAtg1キナーゼの活性化と Atg9小胞の結合が可能となる。
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Strategy for Future Research Activity |
以上の解析で得られた最も顕著な挙動を示すタンパク質、RNAに注目し、以下の解析を通じてその特異性の分子基盤を明らかにする。連携研究者と他大学の協力によって進める。 タンパク質の発現量の変動、修飾の有無 京大・石濱/ 細胞内局在性、細胞内集合体形成、液滴形成の可能性、in vitro assay系微化研・野田/ 運動性の解析・FRAP北大 金城/ RNA に関して翻訳過程との関連、翻訳効率・理研 岩埼/ 局在解析、酵母の様々な生理条件、ストレス誘導性のオートファジーに関しては、それぞれの独自の系を持っている以下の研究者と協力して解析を進める。 DNA damageによるオートファジー(米国、J.Haber)/ Torの解析(浜松医大、前田)、ミクロオートファジー(静大、木村)/ メタボローム(日本歯科大学、堀江)/ 液胞膜輸送(愛媛大、関藤)
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Research Products
(10 results)