2016 Fiscal Year Annual Research Report
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16H06377
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福田 裕穂 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (10165293)
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Project Period (FY) |
2016-05-31 – 2021-03-31
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Keywords | 植物生理 / 発生・分化 / シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちはこれまで、多様な維管束細胞へと分化を誘導することのできるVISUAL系を開発した。本研究ではVISUAL系を主として用いて、維管束幹細胞の確立機構と篩部分化機構の解明を目指すとともに、維管束幹細胞からの木部・篩部分化のスイッチングに関与する因子を明らかにすることを目標にしている。この目標に向け、本年度は以下の項目について解析した。
1.維管束幹細胞確立機構: 恒常活性型のDellaを導入した植物を作成し、これを用いて光とジベレリンと幹細胞分誘導の関係を解析した。その結果、Dellaは幹細胞分誘導を抑制すること、光はジベレリン合成を介すことなくDella活性を減少させること、また、Della活性の低下にはDellaタンパク質の分解系の関与は少ないことが明らかになった。 2.維管束幹細胞からの篩管細胞分化機構: PND1の機能抑制型の植物を作成し、篩部分化への影響を植物体およびVISUAL系で解析した。その結果、PND1単独の変異では植物体の表現型はみられず、冗長的にこの遺伝子が働いていることが示された。一方で、VISUAL系では、PND1機能抑制植物とPND1の過剰発現植物で同様の篩部分化抑制がみられ、PND1は篩部分化初期での分化抑制に働いていると予測された。 3.篩部細胞分化と木部細胞分化のスイッチ機構: 1) ケミカルスクリーニング ケミカルライブラリー中の1000程度の化合物を用いて、篩部要素/木部細胞の比を変える化合物をケミカルスクリーニングにより探索した。その結果、数種の化合物を見いだした。 2) 木部・篩部分化の揺らぎと最終決定機構 解析のツールとして、木部前駆細胞マーカー(ATHB8, VND1)および篩部前駆細胞マーカー(APL, PND1)用のプロモーターをELUCとNanoLUC につないだシロイヌナズナ植物を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
半年ほど遅れたものの、当初の目標であった、恒常活性型のDellaを導入した植物を作成し、これを用いた光とジベレリンと幹細胞分誘導の関係を明らかにすることができた。また、当初計画したPND1のノックアウトラインではなかったが機能抑制型の植物を実際に作成し、これを用いてPND1の篩部分化抑制機能を新たに見いだした。さらに、当初の計画通り、ケミカルライブラリーを用いた解析から分化のスイッチングに関連する可能性のある化合物候補を見いだすと共に、発光観察用の植物体の作成に成功した。以上、当初計画した全ての研究を実行し、それらを通して新規の知見を得たことから、研究は順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
光によるDellaを介した分化抑制がタンパク質の安定化と関連しないことが分かったので、今後、光によるDellaの遺伝子発現制御を解析する。また、今年度見いだした分化のスイッチングに関連する可能性のある化合物候補について、さらに解析を進め、真にその働きがあるかどうかを決定する。また、本年度作成した発光を追跡することのできる植物体を用いて2重発光検出システムを構築し、1細胞レベルでの遺伝子発現を観察する。
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