2017 Fiscal Year Annual Research Report
関節軟骨の生体恒常性の維持および破綻機構の統合的理解に基づく革新的医療技術の開発
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16H06393
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西村 理行 大阪大学, 歯学研究科, 教授 (60294112)
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Project Period (FY) |
2016-05-31 – 2021-03-31
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Keywords | 関節軟骨 / 変形性関節症 / 転写因子 / 再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.平成28年度に同定した、Prg4の発現を誘導する転写因子のfloxマウスを入手し、関節軟骨細胞特異的にCre遺伝子を発現するトランスジェニックマウスとの交配を重ね、当該転写因子の関節軟骨特異的コンディショナルノックアウトマウスを作製した。 2.平成28年度に見出した、変形性関節症関連転写因子がAdamts4、Adamts5の発現を誘導する分子メカニズムを明らかにできた。またマウス関節軟骨器官培養系にこれら転写因子のアデノウイルスを感染させると、アグリカン分解酵素の発現が増加するとともに、関節軟骨の破壊が進行することを病理組織学的に示すことができた。さらに、ヒト変形性関節症患者のサンプルを用いてこれら転写因子の発現をRT-qPCRにて解析した結果、変形性関節症の病態の程度とこれら転写因子の発現が相関することが見出された。 3.本研究課題を遂行するには、できるだけ短期間で効率よく、さまざまな遺伝子改変マウスを作製する技術の確立が不可欠であった。平成29年度に、Cas9ゲノム編集法を用いて、グローバルノックアウトマウスおよびノックインマウスを作製するシステムの導入ならびに樹立することができた。特にマイクロインジェクション法とエレクトロポレーション法を使い分けることにより、作製する遺伝子改変マウスのデザインに適した方法を選択できるようになり、研究課題に遂行に必要な遺伝子改変マウスを効率的な作製が可能となった。 4.マウス軟骨細胞にインターロイキン1(IL-1)あるいはレチノイン酸(RA)を添加し、増加する遺伝子の探索を、平成28年度に引き続き行った。遺伝子解析結果とWebベースのデータベースを比較検討することにより、変形性関節症に対する診断マーカー候補分子の検索を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度に、1)同定している関節軟骨特異的転写因子の関節軟骨特異的コンディショナルノックアウトマウスを作製できその機能解析の準備が整っていること、2)変形性関節症の発症に関与する転写因子を見出し、その機能解析とヒト変形性関節症患者における発現動態との関連が判明したこと、3) 変形性関節症の早期診断マーカー候補分子の検討が進んでいること、を総合的に鑑みて概ね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 関節軟骨特異的転写因子のコンディショナルノックアウトマウスの表現型を解析する。特に、同コンディショナルノックアウトマウスで関節軟骨特異的マーカー遺伝子であるPrg4の発現を検索する。また同コンディショナルノックアウトマウスに、変形性関節症を誘発する負荷を加え、変形性関節症発症への関与を病理組織学的に検索する。 2. 28年度、29年度に同定したヒト変形性関節症の発症に関与する転写因子の機能解析をさらに進める。変形性関節症の病態や進行に密接に関わるAdamts4、Adamts5などのアグリカン分解酵素、MMP3、MMP13などのコラーゲン分解酵素の発現制御への同転写因子の関与をレポーターアッセイ、クロマチン免疫沈降法などの分子生物学的アプローチを駆使して解析を展開する。 3. Prg4の発現動態をin vivoで把握できるシステムを開発するために、Cas9ゲノム編集法を用いて、Prg4遺伝子アレルに蛍光遺伝子をノックインしたマウスを作製する。またPrg4ノックインマウスが作製できれば、そのマウスから関節軟骨細胞を採取し、Prg4の発現を増加させる低分子化合物をスクリーニングするシステム開発の確立を試みる。 4.変形性関節症の早期診断マーカー候補分子群を検出するELISA法あるいは免疫染色法の確立を目指す。ELISA法が確立できた場合は、変形性関節症マウスモデルを用いて、血清中の当該タンパク質の濃度を測定し、変形性関節症の診断マーカーとしての有用性を検討する。
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Research Products
(7 results)