2019 Fiscal Year Annual Research Report
関節軟骨の生体恒常性の維持および破綻機構の統合的理解に基づく革新的医療技術の開発
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16H06393
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西村 理行 大阪大学, 歯学研究科, 教授 (60294112)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村上 智彦 大阪大学, 歯学研究科, 講師 (50510723)
高畑 佳史 大阪大学, 歯学研究科, 助教 (60635845)
波多 賢二 大阪大学, 歯学研究科, 准教授 (80444496)
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Project Period (FY) |
2016-05-31 – 2021-03-31
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Keywords | 関節軟骨 / 変形性関節症 / 転写因子 / Gdf5 / Prg4 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.関節軟骨細胞の発生と機能維持、ならびに変形性関節症の抑止に重要なサイトカインであるGdf5の遺伝子座にZsGreeenを導入したノックインマウスより、表層関節軟骨細胞を分離し、その特性を検索した。Gdf5-ZsGreenノックインマウス由来の表層関節軟骨細胞では、Gdf5のmRNAの発現がほぼ消失していることを見いだした。一方、同関節軟骨細胞におけるZsGreenの発現を認めなかった。したがってこのマウスは、Gdf5ノックアウトマウスとして研究に用いられるが、発現の可視化には不適である。そこでさらに、Gdf5遺伝子直下に改変型ルシフェラーゼ遺伝子を挿入したノックインマウスを作製した。 2.関節軟骨細胞の機能に重要なプロテオグリカンであるPrg4の発現をin vivoにてライブイメージングするためと、Prg4の発現を促進する低分子化合物のハイスループットスクリーニングシステムを構築するために、Prg4遺伝子のC末端に改変型ルシフェラーゼ遺伝子を導入したノックインマウスを、Cas9法にて作製した。このPrg4ノックインマウスから表層関節軟骨細胞を採取し、そのルシフェラーゼ活性を測定したところ、野生型マウスの表層関節軟骨細胞の約10000倍以上の活性を示すことを認めた。したがって、このPrg4ノックインマウス由来の表層関節軟骨細胞を用いた、低分子化合物のハイスループットスクリーニングシステムの樹立に成功した。 3.Prg4遺伝子の発現を促進する転写因子を前年度に同定しているので、この転写因子が構成する複合体のスクリーニングをenChIP法および質量分析にて行った。その結果、Prg4の発現を促進する当該転写因子に結合する転写制御因子群の同定に成功した。分子生物学的解析により、これらの転写因子は、相互作用し、Prg4の発現制御に深く関与していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.Gdf5ノックアウトマウスの解析を行い、このノックアウト由来の表層関節軟骨細胞が、変形性関節症の病態解明に必要な細胞モデルとなることを示した。 2.Gdf5-改変型ルシフェラーゼノックインマウスを作製し、Gdf5の発現をモニターできる動物モデルを樹立した。 3.Prg4-改変型ルシフェラーゼノックインマウスを作製し、同マウス由来の表層関節軟骨細胞を用いた、変形性関節症の治療薬の解析システムを確立した。 4.Prg4の発現を時間空間的に制御する転写制御因子群を同定し、その生化学的特性を解明した。さらにこれら分子のノックアウトを作製し、表現型解析を行うモデルを構築した。 以上の事由を総合的に考慮し、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.Gdf5遺伝子ノックアウトマウスから関節軟骨細胞を採取して、RNA-Seq解析によって、Gdf5遺伝子欠損の下で発現変動している遺伝子を探索し、Gdf5の機能を担う分子の同定を目指す。Gdf5の機能的標的遺伝子が同定された場合は、その遺伝子発現機構を、ルシフェラーゼ・レポーターアッセイ、enChIP法、クロマチン免疫沈降法、whole mount in situ hybridization法にて検索する。さらにその機能は、細胞生物学的手法、分子生物学的手法およびCas9法を用いた遺伝子ノックアウトマウスを作製し、解析する。 2.作製したPrg4遺伝子に改変型ルシフェラーゼ遺伝子をタグしたノックインマウスから関節軟骨細胞を採取して、低分子化合物ライブラリーをスクリーニングする。ルシフフェラーゼ活性を増加させるヒット化合物を得た後は、それぞれのヒット化合物の至適濃度および最適作用時間をin vitroにて検索する。作用させる至適条件の決定後、関節軟骨細胞に作用させ、Prg4遺伝子の発現を増加させるか否かを、定量的RT-PCRにて解析する。さらにヒット化合物をPrg4ノックインマウスに投与して、その効果をin vivo発光システムを用いて解析を行う。 3.Gdf5遺伝子のC末端部分に、改変型ルシフェラーゼ遺伝子を付与したノックインマウスを用いて、Gdf5の発現を増加させる低分子化合物のハイスループットアッセイシステムを確立する。PCR解析ならびにDNAシークエンス解析にて、ノックインマウスのラインを確認した後、C57BL/Jマウスと交配して、Gdf5ノックイン・ヘテロマウスを樹立する。ノックイン・ヘテロマウスの樹立後、関節軟骨細胞を採取し、そのルシフェラーゼ活性を確認後、低分子化合物のスクリーニングを実施する。 4.Prg4の発現制御に関わる転写因子群の機能解析を実施する。
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Research Products
(4 results)