2016 Fiscal Year Annual Research Report
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16H06878
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
谷 徹也 京都大学, 文学研究科, 助教 (10781940)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 近世法 / 中近世移行期 / 豊臣政権 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、近世領主が在地(村落)に発給した法を中心に検討を行なった。まずは16世紀から17世紀前半にかけての史料を網羅的に収集することを目指した。具体的には、これまで刊行されている史料集や自治体史などから関係史料をピックアップしながら、各地の博物館・資料館・図書館等に赴いて史料の写真などを収集し、翻刻と分析を行なった。 その結果、近世領主が制定した法には一定の類似性が認められることが確認されたため、それらを公儀領主法と呼称することとした。公儀領主法は(1)武士を対象とした家中統制法、(2)宗教者を対象とした寺社統制法、(3)町人を対象とした都市統治法、(4)百姓を対象とした村落統治法に分類することができ、その特徴としては(a)領域全体に平準化して公布・適用されるという均質性、(b)一時的ではなく、先例として継承されるという持続性、(c)数ヶ条から成り、原則を有するという体系性、(d)中央と地方における相互補完関係による重層性を見出すことができた。 こうした分析を踏まえたうえで、これまでの先行研究の成果を踏まえながら、近世法の形成過程について考察した結果、次の見通しを得た。権力の在地に対する法は、戦国期(天文年間、1540年代)に直接対応の萌芽が見られた。ついで、織豊期(天正年間、1580年代)に近世法の形式が整い、「公儀領主法」が成立する。その後、慶長期(1600年代)における現実路線への修正を経て、寛永期(1630年代)に法が全国的展開を遂げることとなる。かかる成果を論文化し、谷徹也「近世的領主・領民関係の構築過程」(『日本史研究』655、2017年3月)として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標である領主法の収集及び分析について、一定の見通しと成果を得ることができた。収集した公儀領主法や関連史料は適宜翻刻作業や打ち込みを行ない、データベース化に向けた作業も順調に進んでいる。ただし、その量は膨大であるため、分析は領主が制定した法に限定されている。よって、村落や民衆の法やその関連史料の分析・検討については、次年度の課題としたい。なお、こうした作業段階は当初予定していた通りであるため、上記の進捗状況とした。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、村落や民衆の法についても分析・検討を進めていきたい。また、とりわけ17世紀前半の村落関係史料はまとまって残存している物が少ないため、一点一点を丁寧に拾い集めていく作業が必要とされる。できる限り原史料や写真を閲覧することで、史料の成立や伝来についても検討を加えたい。なお、領主法についても、並行して収集を継続する予定である。
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Research Products
(3 results)