2016 Fiscal Year Annual Research Report
タマネギのりん茎肥大開始と完了を決定する環境要因と遺伝子の網羅的解析
Project/Area Number |
16H07440
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
池田 裕樹 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 東北農業研究センター 畑作園芸研究領域, 研究員 (90782053)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 園芸学 / 野菜 / タマネギ / 栽培 / 遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
タマネギは世界的に生産量の多い重要な野菜で、わが国では年間100万トン以上が生産されている。一方で端境期を中心に30万トン近くを輸入するなど、国内での需要に対する供給は十分とはいえず、生産体制の強化に結びつく栽培技術の開発や品種育成が必要である。タマネギではりん茎(可食部)の重量が収量に直接的な影響を及ぼすため、りん茎の肥大は生産に直結する最も重要な要因の1つに挙げられる。しかしタマネギのりん茎肥大に関しては、品種により異なる日長および温度条件が満たされると肥大開始することが明らかとなっている程度であり、りん茎肥大に関する詳細なメカニズムの解明は十分とはいえない。そこで本研究では、学術的にも実用的にも重要なタマネギのりん茎肥大機構、すなわちりん茎が肥大開始および完了する要因について、日長や温度など環境要因との関係を中心に検討し、園芸生産に利用可能な基盤的知見を得ることを目的とした。研究初年度の2016年度は、早晩性の異なる複数の栽培品種を同時に露地で春まき栽培し、定植から収穫期までの生育およびりん茎肥大について調査を行った。その結果、りん茎肥大に関係すると考えられる地上部への展開葉数やりん茎の直径の増加は、生育途中までは品種の違いに関係なく同一で、地上部への葉の展開停止やりん茎の直径が急速に肥大する時期が品種により異なること、およびその時期は品種の早晩性と関係していることが明らかとなった。また、りん茎肥大に関係すると考えられているAcFT遺伝子の発現解析を予備的に行った。研究成果の一部については、学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、タマネギのりん茎肥大機構について日長や温度など環境要因との関係に注目して研究を進め、園芸生産に利用可能な基盤的知見を得ることである。この目的を達成するために、2016年度はりん茎肥大に関係すると考えられる生育に関わる要素について、複数の栽培品種を対象に調査するとともに、品種間での比較を行った。その結果、りん茎肥大開始および完了時期などの品種特性とともに、栽培品種に共通的なりん茎肥大の様相を明らかにすることができた。また遺伝子発現解析に向けた手法の確立など、次年度の準備も行うことができた。これらの研究の進捗状況はほぼ当初の予定通りであることから、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度は2016年度の研究結果を裏付けるため、生育およびりん茎肥大に関する反復調査を行うとともに、タマネギのりん茎肥大に関係すると考えられているAcFT遺伝子の発現解析を行い、りん茎肥大と日長の関係について分子レベルで検討を進める。また温度条件がりん茎肥大に及ぼす影響について明らかにするため、同じ日長で温度のみが異なる環境で栽培可能な温度勾配チャンバーを使用した調査と解析も行う。得られた成果は適宜とりまとめ、学会や学術論文等で公表する。
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Research Products
(1 results)