2017 Fiscal Year Annual Research Report
ブリッジマナイト中の含水量の温度圧力依存性とその物性に与える影響
Project/Area Number |
16J02169
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
柿澤 翔 愛媛大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 下部マントル / ブリッジマナイト / 最大含水量 / 圧力依存性 / 化学組成依存性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、地球下部マントルの主要鉱物であると考えられているブリッジマナイトの化学的・物理学的性質への水の影響を高温高圧実験によって解明し、下部マントル中の水の存在の手がかりを得ることを目的としている。今年度は、様々な組成のブリッジマナイトを合成し、二次イオン質量分析器によって含水量を測定し、ブリッジマナイトの最大含水量の圧力依存性および化学組成依存性を決定した。合成実験は、愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター設置のマルチアンビル型高圧発生装置”ORANGE-2000”および”ORANGE-3000”を用いて行った。出発物質には、Mg, Al, Si, H, Oを含んだクライノクロア、Feを含んだクローライト、地球マントルのモデル物質であるパイロライトを用いた。実験は23-32 GPaで行い、温度は1600℃一定で行った。含水量の測定は北海道大学設置の二次イオン質量分析器を用いた。使用したすべての出発物質で含水量は圧力とともに増加することが明らかになった。ブリッジマナイトの含水量メカニズムとしてSi = Al + Hが報告されている (Inoue, Kakizawa et al., in prep) 。ブリッジマナイト中のAl量は圧力とともに増加する報告があるので、圧力が増加することでAlが多く固溶し、含水量が増加したと思われる。含水量とFe/Al比には直線的な関係があり、Fe/Al比が小さくなるに従い含水量は増加する。これにマントルのモデル物質であるパイロライトと沈み込むスラブのMORBのFe/Al比を比べると、660 km不連続面での最大含水量はそれぞれ0.1, 0.15 wt%と見積もられた。大量の水を含んだリングウッダイトが沈み込んだ場合、ブリッジマナイトはすべての水を含むことができないため、660 km不連続面では、脱水に伴った溶融が起こることが予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は当初の計画以上に進めることができた。特に本課題の大きな目標の1つであるAlに富む含水ブリッジマナイトの最大含水量の圧力依存性および化学依存性を決定した。当初の計画は圧力依存性のみであったが、Feの効果を考慮した化学依存性を決定することができた。これは当初の計画よりも順調に進展しており、決定したブリッジマナイトの最大含水量の圧力依存性および化学組成を用いることで、下部マントル上部の最大含水量を決定することができた。この成果は、現在論文にまとめている。 また、中性子施設J-PARCでAlに富む含水ブリッジマナイトの水素位置の決定及び圧力挙動の決定を行っているが、共存相として含水相のスーパーハイドラスB相が存在している。リートベルト解析を行う際に、従来のMg端成分のスーパーハイドラスB相では、うまく解析を行うことができず、Alを含むことによって中性子回折のパターンが大きく変化していることが予想される。この相の単結晶構造解析を行い、置換様式を決定することができた。この成果は松山で開催された鉱物科学会で口頭発表を行った。これは当初の計画にはなかったものであり、当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は含水ブリッジマナイトの圧力依存性および化学組成依存性を決定することで化学的性質を決定することができ、大きな目標の1つを達成することができた。この成果を論文として公表する。しかしながら、Feの価数を決定できていないため、Feの効果としては考察できているが、2価と3価の個別の影響を考察できない。そのため、メスバウアー分光法を用いてFeの価数を決定し、より詳細な考察をおこなう。 また、今年度には、高圧下における水素位置の圧力挙動を明らかにするため、高圧中性子回折実験を行った。得られた実験データを解析し、水素位置の圧力挙動を考察し、論文を執筆する。 さらに含水ブリッジマナイトの高圧中性子実験の比較対象のため、高温高圧下における無水ブリッジマナイトの結晶構造解析を行う。無水ブリッジマナイトの結晶構造と含水ブリッジマナイトの結晶構造を比較することで、水が結晶構造に与える影響を考察することが可能である。
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Research Products
(23 results)
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[Journal Article] Anvil design for slip-free high pressure deformation experiments in a rotational diamond anvil cell2018
Author(s)
Azuma, S., Nomura, R., Uesugi, K., Nakashima, Y., Kojima, Y., Doi, S., Nishihara, Y., and Kakizawa, S.
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Journal Title
High Pressure Research
Volume: 38
Pages: 23-31
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] P-V-T equation of state of Al-bearing hydrous bridgmanite2017
Author(s)
Kakizawa, S., Inoue, T., Nishi, M., Arimoto, T., Kadobayashi, H., Tange, Y., Higo, Y., Nakano, S., and Hirai, H.
Organizer
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
Int'l Joint Research
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[Presentation] Effect of pressure on temperature measurements using WRe thermocouple and its impact on geophysics2017
Author(s)
Nishihara, Y., Doi, S., Kakizawa, S., Higo, Y., Tange, Y., and Irifune, Y.
Organizer
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
Int'l Joint Research
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[Presentation] Sound velocity of Al-bearing hydous and anhydrous bridgmanites under high pressure2017
Author(s)
Inoue, T., Greaux S., Noda, M., Kakizawa, S., Higo, Y., and Tange, Y.
Organizer
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
Int'l Joint Research
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[Presentation] Thermoelastic properties of Al-bearing hydrous bridgmanite2017
Author(s)
Kakizawa, S., Inoue, T., Nishi, M., Arimoto, T., Kadobayashi, H., Tange, T., Higo, Y., Nakano, S., and Hirai, H.
Organizer
High-Pressure Mineral Physics Seminar (HPMPS-9)
Int'l Joint Research
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[Presentation] Development of rotational diamond anvil cell for deformation experiments under high pressure conditions corresponding to the lowermost mantle2017
Author(s)
Azuma, S., Nomura, R., Uesugi, K., Nakashima, Y., Kojima, Y., Doi, S., and Kakizawa, S.
Organizer
High-Pressure Mineral Physics Seminar (HPMPS-9)
Int'l Joint Research
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