2016 Fiscal Year Annual Research Report
高精度X線分光とガス形態から探る銀河団プラズマの統一描像
Project/Area Number |
16J02333
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
一戸 悠人 首都大学東京, 理工学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 銀河団 / ICM |
Outline of Annual Research Achievements |
通信途絶以降、「ひとみ」衛星の新たなデータを得ることはできなくなった。その一方で、軟 X 線分光器 SXS を用いた銀河団観測という観点からは、ペルセウス座銀河団の初期観測という貴重なデータが存在する。絶対的なゲインの不定性に影響されるため最も難しい一方で、これまで得られなかったという点で最も重要な、ガスの運動情報を導出する「ひとみ」サイエンスチームを主導して、論文投稿準備を進めている。春の天文学会においてはチームを代表して発表を行った。 SXS の輝線感度を生かし、これまで論争を呼んでいた 3.5 keV 周辺のステライルニュートリノ起源の輝線に強い制限をつけるチームのメンバーとして、メリーランド大へ赴き、広範な議論を行った。議論の結果は Astrophysical Journal Letters 誌に出版された。 カロリメータをハードウェアという観点から深く理解するために、J-PARC を本拠地として行われているカロリメータを用いた原子核実験に参加している。J-PARC における基礎性能評価試験の結果は IEEE Transactions on Applied Superconductivity 誌に出版された。 Chandra アーカイブデータから銀河団ガスの物性を探るという観点から、Abell 3667 銀河団の深い観測データに目をつけ、cold front と言われる構造を詳細に研究し、銀河団ガスの実効的な粘性の上限値を見積もることに成功した。この結果は Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 誌に出版された。 また、次に観測すべきターゲットを選定し、XMM-Newton 衛星と Chandra 衛星でのプロポーザルに応募した。XMM のものに関してはすでに観測計画が採択された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「ひとみ」衛星の通信途絶以降、新たなデータを得ることはできなくなった一方で、通信途絶以前に得られたデータはペルセウス座銀河団からのものであり、私はその初期データ解析を行っている。絶対的なゲイン不定性のため難易度が高いガス速度測定チームを主導しており、結果を投稿準備中である。これについては天文学会にて発表も行った。同データセットを用いたダークマター輝線探査チームの一員として広範な議論をした結果は Astrophysical Journal Letters 誌に出版された。 これに加え、カロリメータの物理をよりよく理解するために J-PARC で行なわれている TES カロリメータを用いた原子核実験に参加しており、テストランの結果は IEEE Transactions on Applied Superconductivity 誌に掲載された。 一方で、イメージ上の構造という観点からは、Chandra 衛星を用いた Abell 3667 銀河団の詳細な解析により、ICM の粘性に上限値をつけることに成功し、この結果は Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 誌に出版されたほか、国際会議にて発表も行った。来年度の観測ターゲットを選定した上で Chandra 衛星や XMM-Newton のプロポーザルに応募しており、XMM のものについてはすでに観測計画が採択されている。 また、銀河団の可視光観測の研究者と新たなコラボレーションを開始し、「ひとみ」のデータがこれ以上得られなくなった現在でも銀河団プラズマの理解に向けて様々な観点から研究を進めている。以上を鑑みると、「ひとみ」の通信途絶という予期せぬ事態を除けば、研究は概ね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度から継続して「ひとみ」衛星のデータを解析し、本年度中の出版を目指す。前年度に観測提案をしてあらたに採択されたデータについては詳細な解析を行う。また、Chandra や XMM-Newton 衛星によるアーカイブデータの、見込みのある特徴的な構造を選び出し、系統的に再解析を行う。得られた結果については、論文と国際会議にて発表する。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] Study of Polarimetric Performance of a Si/CdTe Semiconductor Compton Camera for the Hitomi Satellite2016
Author(s)
J. Katsuta, I. Edahiro, S. Watanabe, H. Odaka, Y. Uchida, N. Uchida, T. Mizuno, Y. Fukazawa, K. Hayashi, S. Habata, Y. Ichinohe, T. Kitaguchi, M. Ohno, M. Ohta, H. Takahashi, T. Takahashi, S. Takeda, H. Tajima, T. Yuasa, M. Ito, and SGD team,
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Journal Title
Nuclear Instruments and Methods in PhysicResearch Section A: Accelerators, Spectrometers, Detectors and Associated Equipment
Volume: 840
Pages: pp51-58
DOI
Peer Reviewed
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