2016 Fiscal Year Annual Research Report
アルツハイマー病の周辺症状に対するSigma-1受容体アゴニストの作用機序の解明
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16J02855
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
泉 久尚 東北大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 新規 Sigma-1 受容体アゴニスト / AD モデルマウスの行動解析 / 神経細胞脱落評価 / Sigma-1 受容体ノックアウトマウスの作製 |
Outline of Annual Research Achievements |
新規 Sigma-1 受容体アゴニストの探索を目的として SA4503 の誘導体 (sample1-7) と Sigma-1 受容体親和性ペプチド (peptide1-4) について Sigma-1 受容体アゴニストの作用の一つである ATP 産生亢進作用を指標としてスクリーニングを行った。結果、計 4 つの化合物について Sigma-1 受容体アゴニスト作用を持つ新たな治療候補薬としての可能性を示唆する結果が得られた。 アルツハイマー病(AD)モデルマウスを用いて、脳における月齢依存的なアミロイドベータの沈着の時間経過とそれに伴う各種症状の発現の検討を行った。アミロイドベータ沈着の評価は ThiofravinS 染色を用いて 4 ヶ月齢より 2 ヶ月間隔で 12 ヶ月齢まで行った。その結果、4 ヶ月齢よりアミロイドベータの沈着が認められ、その数と面積は月齢依存的に増加した。また、行動試験によって AD 症状の解析を行った。2 ヶ月齢から 8 ヶ月齢まで 2 ヶ月間隔で検討を行った。その結果、6 ヶ月齢の時点より認知機能の有意な低下が認められたが、周辺症状については覚醒リズム、不安様行動、攻撃行動に関して今回検討を行った 8 ヶ月齢の時点までで有意な変化は認められなかった。 Sigma-1 受容体アゴニストのアミロイドベータの神経毒性に対する保護作用の評価の前検討NeuN による神経細胞の免疫染色により AD モデルマウスの海馬における神経細胞の脱落を評価した。結果、12 ヶ月齢の段階においても神経細胞の脱落は認められなかった。 Sigma-1 受容体の AD の病態形成における役割の解明を目的として米国の Dr. Bhuiyan と共同で Sigma-1 受容体ノックアウトマウスの作製を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の主な目的はアルツハイマー病の周辺症状に対する Sigma-1 受容体アゴニストの治療効果の評価であった。今回検討した AD モデルマウスにおいては 8 ヶ月齢の時点までで周辺症状の発現が認められなかったため、その目的は達成できなかった。しかしながら、アミロイドベータの月齢依存的な沈着と神経細胞死の評価などベーシックな検討については順調に進めることが出来た。また、三年度目に行う予定であった Sigma-1 受容体ノックアウトマウスの作製を行ったことにより、今後 Sigma-1 受容体のアルツハイマー病病態形成における関与について詳細な検討が出来る。さらに、新規 Sigma-1 受容体アゴニストのスクリーニングを行ったことによって、その創薬への可能性を広げることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度今回の検討では、8 ヶ月齢までの AD モデルマウスを用いて周辺症状の解析を行ったがいずれの試験においても有意な変化は認められなかった。よって、今後さらに月齢を追って解析を進めていく必要がある。 AD モデルマウスにおけるアミロイドベータの沈着と神経細胞の脱落を評価したが、十分な沈着が認められた 12 ヶ月齢の段階においても神経細胞の脱落は認められなった。このことからさらに月齢を重ねた段階での評価もしくは培養細胞を用いた神経細胞保護効果の評価系の確立を行う必要がある。 Sigma-1 受容体のノックアウトマウスと AD モデルマウスの交配により、アミロイドベータ産生・沈着やそれによる神経細胞への影響など、Sigma-1 受容体のアルツハイマー病の病態形成における関与を検討する。
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