2017 Fiscal Year Research-status Report
FT ICR MSを用いた水圏中微量金属元素-溶存有機物錯体の分子構造解析
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16K00521
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
杉山 裕子 岡山理科大学, 理学部, 准教授 (40305694)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 勝利 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (00271792)
丸尾 雅啓 滋賀県立大学, 環境科学部, 教授 (80275156)
早川 和秀 滋賀県琵琶湖環境科学研究センター, 総合解析部門, 副部門長 (80291178)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 溶存有機配位子 / FT-ICR MS |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、有機配位子の分離および琵琶湖水中の有機配位子の条件安定度定数の測定に取り組んだ。 琵琶湖水中の銅と溶存有機配位子の錯安定度定数の測定をPseudopolarographyを用いて測定した。はじめにモデル配位子と銅の錯生成実験を行い、得られた電位-電位曲線から半波電位を測定し、得られた半波電位と銅モデル配位子錯体のlog Kの関係が直線になることを利用して、琵琶湖水中の有機配位子と銅との錯安定度定数の測定を行なった。モデル配位子にはエチレンジアミン四酢酸 (EDTA:log K=17.94) 、ジエチレントリアミン五酢酸 (DTPA:log K=26.50) 、1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン (Cyclam:log K=26.50) を用いた。 UV湖水10 mlに対して、最終濃度200 nMになるようCu2+溶液を加えた。その後ホウ酸アンモニウム緩衝液をpH8.35になるよう加えた。モデル配位子溶液の最終濃度はEDTA・DTPAは200 μM、Cyclamは0.25 μMになるように調整した。 琵琶湖水中の銅との錯生成定数を算出した結果、深度2 mにおいては銅との錯生成定数がlog K=12~13、log K=20~21、log K=32程度の有機配位子が存在することが示唆され、88 mにおいてはlog K=13~14程度とlog K=27程度の配位子の少なくとも2種類が存在することが示唆された。直上水においてはlog K=13~14、log K=24程度のものが存在することが示唆され、深度によって異なる溶存有機配位子の存在が示唆された。 IMACにより分離された配位子の安定度定数測定および質量分析にも取り組んだが、ホウ酸緩衝液の存在により分析はまだ成功していない。分離法の改善またはホウ酸の除去を行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
溶存有機配位子の天然水からの分離については、IMACを用いて、琵琶湖および児島湖水を対象に行った。三次元蛍光スペクトル測定結果から、分離がうまく行えていることは確認できている。しかし、分離された配位子濃度は高くないと考えられ、疑似ポーラログラフィにおいてもFT-ICR MS測定においても、ブランクとの違いがほとんど見られない結果となってしまった。 IMACを用いた分離を今後も行っていくが、各種測定を行うためには、分離された配位子のマトリックスからの分離が必要になる。これについて、検討を急ぎ行っていかなくてはならない。 また、コンタミネーションが存在するため検討を見送っていた、他の担体を用いた配位子の分離にも取り組む必要があると考えられる。具合的にはイミノジ酢酸以外の配位子を修飾したアフィニティカラムを作成し、試すということである。 どちらにしても、溶離緩衝液が次の測定に対して妨害するということは解決の必要があるため、優先して解決していくことが求められる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度になるため、次のような方針で研究を進める。 1.琵琶湖及び児島湖に溶存する有機配位子の特徴の把握:今までに明らかになっている、水深ごと、季節ごとに異なる安定度定数を有する有機配位子の存在の有無を確認する。 2.溶存有機配位子の分離:イミノジ酢酸を用いた有機配位子の分離を行っているが、疑似ポーラログラフィ測定の結果から、たとえば琵琶湖水中には、EDTAと同程度がもっとおおきな条件安定度定数を有する配位子が存在している可能性がある。したがって、イミノジ酢酸以外の配位子を修飾した担体を作成し、分離を試みる。 3.分離された有機配位子のFT-ICR MS分析:無機塩は質量分析には大敵であるが、アフィニティクロマトグラフィーにより分離された試料には必ず無機緩衝液が存在している。具体的にはホウ酸緩衝液の妨害をのぞくことを検討し、質量分析を行い、分子構造に関する情報を得る。
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Causes of Carryover |
研究分担者分の前年度未使用額の執行ができずに次年度に繰り越すことになってしまった。次年度の消耗品費の一部に充てる予定である。
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[Journal Article] Molecular Components of Arabidopsis Intact Vacuoles Clarified with Metabolomic and Proteomic Analyses2018
Author(s)
Miwa Ohnishi, Aya Anegawa, Yuko Sugiyama, Kazuo Harada, Akira Oikawa, Yasumune Nakayama, Fumio Matsuda, Yukiko Nakamura, Ryosuke Sasaki, Chizuko Shichijo Patrick G. Hatcher, Hidehiro Fukaki, Shigehiko Kanaya, Koh Aoki, Mami Yamazaki, Eiichiro Fukusaki, Kazuki Saito, Tetsuro Mimura
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Journal Title
Plant and Cell Physiology
Volume: 69
Pages: n/a
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Distributions and geochemical behaviors of oxyanion-forming trace elements and uranium in the Hovsgol?Baikal?Yenisei water system of Mongolia and Russia2017
Author(s)
Akihito MOCHIZUKI, Takahiro MURATA, Ko HOSODA, Toshiya KATANO, Yuji TANAKA, Tetsuro MIMURA, Osamu MITAMURA, Shin-ichi NAKANO, Yusuke OKAZAKI, Yuko SUGIYAMA, Yasuhiro SATOH, Yasunori WATANABE, Ayuriin DULMAA, Chananbaatar AYUSHSUREN, Darmaa GANCHIMEG, Valentin V. DRUCKER, Vladimir A. FIALKOV, Masahito SUGIYAMA
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Journal Title
Journal of Geochemical Exploration
Volume: 188
Pages: 123, 136
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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