2017 Fiscal Year Research-status Report
核物質汚染地域住民(カザフスタン)の子孫におけるマイクロサテライト変異の調査研究
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16K00555
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Research Institution | National Institutes of Biomedical Innovation, Health and Nutrition |
Principal Investigator |
梁 治子 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 難治性疾患研究開発・支援センター, 研究サブリーダー (90301267)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野村 大成 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 難治性疾患研究開発・支援センター, 研究リーダー (90089871)
足立 成基 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 難治性疾患研究開発・支援センター, プロジェクト研究員 (60379261)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ヒトの放射線被ばく / 生殖細胞突然変異 / マイクロサテライト変異 / 次世代影響 / 放射能被ばくの遺伝的リスク / 核実験周辺住民 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト集団における放射線被ばくの次世代影響を、より精微かつ客観性があるマイクロサテライト系を用い調査研究を行い明確な結果を提供する。ミニサテライト検出系により1.5倍程度の変異率上昇が被ばく者の子供世代で既に報告されているが、相反する結果もあり国際的な容認に至っていないためである。調査研究の被ばく者集団はセミパラチンスク核実験所(カザフスタン共和国)周辺住民であり、既に報告されている(F1世代でミニサテライト変異率上昇が1.5倍)集団と同一であり、同一DNA試料である。マイクロサテライト変異は主に繰返し配列回数の増減となるため、変異検出はマイクロサテライト遺伝子座の長さを調べることにより行われる。従って、子供のマイクロサテライト遺伝子の長さが両親とそれらと異なる場合、変異が検出される。医薬基盤・健康・栄養研究所(医薬健栄研)では、両親、子供、孫の匿名化されたDNA試料すべてを海外共同研究者(カザフスタン共和国)より既に受理している(対応表なし)。当研究所では、マイクロサテライト遺伝子座の長さのみを解析し、海外共同研究者に結果を報告し、海外共同研究者が匿名化番号と対応表の照合を行い、変異の検出を行う。 28年度に医薬健栄研で解析終了した常染色体性マイクロサテライト17種、X線染色体性1種については、変異検出(カザフスタン)の結果、DNA試料のうち、両親子供のセットの不十分なものが判明した。それらを調査対象から除くと、変異率は被ばく群と非被ばく対照群の子供で、有意な差はみられなかった。本年度は、常染色体性7種のマイクロサテライトは、解析が終了し、5種は解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
医薬健栄研からのマイクロサテライト遺伝子座解析をカザフスタンで対応表と照合することで次の結果が得られた。A)医薬健栄研でみられたコンタミDNA試料は母親のものであった。B)父親のDNA試料1つは受理していない(カズフスタンにも保存されていない)。C)解析が不可能に近い極小量DNAは母親のものであった。D)4家族は、親子関係がみられなかった。E)6名の子供に親子関係がみられず、また疑わしいものが3名みられた。検出された変異は、PCR-マイクロサテライト解析をすることで再確認をした。調査対象者として該当しないDNA試料を除外すると、調査対象の子供の数は、196名となった。本年度からは、上記対象者を解析から除外し、マイクロサテライト解析を行った。 29年度に行った変異検出解析(常染色体マイクロサテライト17種)による、暫定的な変異率(the number of mutations/ microsatellite locus / offspring)は、被ばく者群 7/2074 (0.338%)、非被ばく者対照群 5/1258 (0.40%)であり、差はみられなかった。X染色体性マイクロサテライト1種については、両群とも変異は検出されなかった。 本年度は、医薬健栄研でのマイクロサテライト7種の解析は終了し、解析中のものは5種である。 微量DNA試料については、PCR反応がより効率的な市販の酵素を検討し、一つ見いだすことが出来た。 DNA試料のうち、少量のものが多くあり、PCR反応を工夫する必要があったため、やや遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
核物質汚染地域住民の子供および非被ばく対照者の子供について、カザフスタンより受理したDNA試料を用い、29年度に未解析の残りの常染色体性マイクロサテライト遺伝子についての長さの解析を終了し、カズフスタンで変異検出を行い、医薬健栄研で変異の確認を再現性の有無で行う。また、変異が次世代に伝播しているかを調査するため、変異が検出された子供の次世代(孫)に該当するDNA番号を、カザフスタンで対応表と照合することで確認し、医薬健栄研で変異の伝播性を調べる。 被ばく者の子供世代について、被ばくによるマイクロサテライト変異が、非被ばく対照者の子供に比べ上昇しているかを明確にし、上昇している場合は、被ばくによるリスクを、推定されている被ばく線量とともに検討する。 調査結果は、学術雑誌に投稿する。
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Research Products
(3 results)