2016 Fiscal Year Research-status Report
環境DNA法による土壌微生物動態評価から温暖化に伴う土壌有機炭素の変動要因を探る
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16K00573
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
近藤 俊明 広島大学, 国際協力研究科, 特任准教授 (40391106)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梁 乃申 国立研究開発法人国立環境研究所, 地球環境研究センター, 主任研究員 (50391173)
寺本 宗正 国立研究開発法人国立環境研究所, 地球環境研究センター, 特別研究員 (10761041)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 土壌呼吸 / 環境DNA / 気候変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
土壌中の有機炭素は土壌微生物による分解過程を経てCO2として大気中に放出される。この現象は微生物呼吸と呼ばれ、人間活動に由来するCO2放出量の約9倍に相当する。温暖化に伴う微生物呼吸量の増加は地球規模の炭素収支に多大な影響を及ぼすため、その予測は重要であるものの、僅かな土壌中に数億個体が存在する土壌微生物の動態を、従来の培養法を用いて把握することは極めて困難であった。本申請課題では、温暖化操作実験のもと、微生物呼吸が長期に渡って測定されている西日本の森林において、最新の遺伝解析手法である「次世代シーケンサーを活用した環境DNA解析法」を用いて土壌微生物動態を把握することで、温暖化に対して土壌微生物相がどのような応答を示し、結果として微生物呼吸がどう変動するのかといった、一連の微生物呼吸プロセスの解明を行うことを目的としたものである。 本年度は、西日本の代表的な植生であるアラカシが優占する混交広葉樹林において、10基の大型マルチ自動開閉チャンバー式土壌呼吸測定システムを用いて微生物呼吸を連続測定するとともに、5基を対象に赤外線ヒーターを使用して温暖化環境を人工的に創出することで、温暖化が微生物呼吸に及ぼす影響を把握した。その結果、非温暖化区に較べ、温暖化区において総微生物呼吸量の増加が見られるものの、温暖化区における微生物呼吸の温度反応曲線は非温暖化区に較べ緩やかとなることが明らかとなった。また、次世代シーケンサーを活用して土壌微生物相を把握した結果、温暖化区において多様性の減少が確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
15基のチャンバーシステムを用いて、土壌呼吸量を年間を通して安定的に測定するとともに、温暖化に伴う土壌微生物の種組成の変化についても把握することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
15基のチャンバーシステムを用いて、今後も継続的に土壌呼吸量を測定し、その経年変化を記録する。平成28年度は、限られた時期に特定のチャンバーを対象に土壌微生物動態の把握を行ったが、平成28年度の解析を通して、安定的に土壌微生物データが取得できることが確認できたことから、来年度はその季節変動を全チャンバーを対象に行っていく。
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Causes of Carryover |
土壌からのDNA抽出や増幅は、生物種から直接的にDNA抽出・増幅を行う場合に較べ、高い技術が必要となる。平成28年度は、技術の安定化を目的に限られたサンプルについて解析を行っため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度の解析により、安定的に土壌微生物動態を把握できることが確認できたことから、本年度は全チャンバーシステムを対象に解析を行うことで、次年度使用額を執行する予定である。
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Research Products
(1 results)