2017 Fiscal Year Research-status Report
市民・行政・専門家が連携する海岸環境保全事業の社会的合意形成に関する研究
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16K00674
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
吉武 哲信 九州工業大学, 大学院工学研究院, 教授 (70210672)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高田 知紀 神戸市立工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (60707892)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 社会的合意形成 / 海岸環境保全事業 / 合意形成を目指すことへの合意 / プロジェクト・マネジメント |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目の研究計画は,1)「基本理念を反復的に参照・共有することが合意形成に寄与した」仮説の検証を進めること,2)本事業の特徴である統括的に技術的・制度的検討を行うプロジェクトマネジメント(PM)会議の議事録から,2つの基本理念の反復的参照・共有がどのようなマネジメントの下,運用されたかを明らかにすること,の2点であった. 1)については,様々な主張が錯綜する中での合意形成については,そもそも「合意形成を目指すことへの合意」をステークホルダー間で共有することが必要との課題認識にもとづき,宮崎海岸浸食対策事業ではそれがどのように行われたかを詳細に分析した上で,「合意形成を目指すことへの合意」が得られるプロセスを2つの概念モデル(「合意形成プロセスの基底的環境醸成モデル」および「循環的合意形成プロセスモデル」)によって表現することができた. 前者のモデルは「市民・住民的見解」「科学・技術的客観性」「行政論理」の3つが、SH間(行政も含む)で共有・尊重されることを通じて、総体として合意形成に向けた対話を志向する状態に至るプロセスのモデル化であり,後者は,合意形成を現実に進めるためにはまず「この場であれば合意形成に向けた対話ができる」とSHが期待・信頼し承認する段階に至るために提示される「合意形成の進め方」のモデルである. 2)については,プロジェクト・マネジメントに関する理論を,環境保全型公共事業における合意形成マネジメントに応用するために,マネジメント項目と合意形成プロセスとの対応関係を整理することができたところである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の現在までの達成度は「順調に進展している」と判断している.その理由を以下に示す. 研究実績概要に示したように,当初の本年度予定の2つの研究計画は,いずれも一定の成果を得ることができた.なお,2年目の研究計画のうち「合意形成を目指すことへの合意醸成の概念モデル化」については関係学会での発表の後,現在,学術論文として投稿中である.また最終年度である3年目は,2年目の「合意形成を目指すことへの合意醸成の概念モデル化」に続いて「基本理念の共有により合意形成が促進された」仮説の検証を行う予定であるが,既に概念モデルの枠組みの考察を始めている.さらに,自然環境と社会環境の2つの複雑性を有する海岸保全事業におけるプロジェクト・マネジメントについて,先行研究をレビューしながら実践の経緯を考察することで,理論構築の準備が整ったところである. 以上のように,当初の研究計画のうち2年目の研究計画について成果を得ており,さらに 次年度の研究に向けた準備も整っていることから「順調に進展している」と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
3年目はまず,2年目の成果に続く「基本理念の共有により合意形成が促進された」仮説の検証を進める.1年目に明らかにした関係者の間で2つの基本理念が反復的に参照・共有されていたということ,2年目で導かれた循環型合意形成プロセスへの期待と信頼が合意形成プロセスへの移行に寄与したこと,の成果を踏まえ,1)実際の合意形成プロセスが「循環型合意形成プロセスモデル」が機能する形で進んだことを実証する. また,2) 本事業の特徴である統括的に技術的・制度的検討を行うプロジェクトマネジメント(PM)会議の議事録を柱に各種委員会・分科会および市民談義所の議事録から,「循環型合意形成プロセス」がどのようなマネジメントの理念と体制のもとに運用されたかを明らかにする. 研究体制については,研究代表者(吉武),研究分担者(高田)は昨年度と同様であり,研究代表者は大学院生1名を補助として配置する。上記1)は研究代表者が,上記2)は研究分担者が実施する予定である.
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Causes of Carryover |
今年度は研究代表者,研究分担者および研究協力者が同じ会議に出席することが多く,会合に関わる旅費が予定より少なくったこと,および関係資料入手・整理のため人件費・謝金への支出がなかったことが次年度使用額が生じた理由である. 次年度においては,研究代表者,研究分担者および研究協力者の研究打ち合わせ会議を一層密に実施し,また学会発表及び論文掲載料等の支出を見込むため,当初の計画通りの支出を予定している.
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Research Products
(2 results)