2017 Fiscal Year Research-status Report
内発的な発展を目指す中国森林再生政策における財政資金調達メカニズムの調査研究
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16K00689
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
金 紅実 龍谷大学, 政策学部, 准教授 (10619240)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
何 彦旻 京都大学, 経済研究所, 研究員 (10744021)
谷垣 岳人 龍谷大学, 政策学部, 講師 (40434724)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 森林補助金制度 / 森林の多面的機能 / 地域林業の経済的自立 / 森林財源の多元化 / 内発的発展 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、前年度の調査研究成果を踏まえながら、その成果を更に深化させ具現化させるための研究活動を目標に進めてきた。具体的には、①日本国内外の文献・統計資料の収集、②日本、中国の森林補助金制度の実態調査、③日中森林環境保全政策の共同研究会の開催、④研究論文の出版を行った。 ①については、日本及び中国の国レベルのマクロ政策の関連資料・統計のほか、特に地方レベルの独自の取組みや制度づくり具体的な事例に関する政策資料・統計資料を収集・分析し、共同研究者間で共有した。 ①については、日本及び中国の国レベルのマクロ政策の関連資料・統計のほか、特に地方レベルの独自の取組みや制度づくり具体的な事例に関する政策資料・統計資料を収集・分析し、共同研究者間で共有した。 ②については、日本国内の調査活動として、2017年8月に兵庫県豊岡市のコウノトリ米農法における生物多様性の地域復旧活動の実態調査を実施し、2018年2月に滋賀県東近江市の永源寺森林組合の取組実地調査、奈良県吉野町の山守制度による林業企業の取組調査、京都府京丹後市の木の駅プロジェクトを中心とした地域の取組調査を実施した。中国においては、2018年8月に西部地域の四川省の集団林権改革を皮切りに取り組んでいる内発的な発展事例、及び陝西省の国有林改革後の新財源・活路の創出のための取組み事例を調査した。 ③については、2018年2月に中国国家林業局経済発展研究センターの共同研究者を招聘し、2年間の共同研究成果を振り返り、意見交換を中心とした共同研究会を開催した。 ④については、金紅実「中国森林財政の発展と森林保全政策の展開―里山学の視座からー」(『琵琶湖水域圏の可能性―里山学からの展望』晃洋書房、281-294頁、2018年3月)を研究成果として出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H29年度は、当初の研究計画通りに、日本国内外の研究ネットワーク資源を活用した研究調査や共同研究会の開催を通して、前年度の研究成果を更に深めることができた。 今年度の調査研究は、日中森林政策や森林財政制度を中心に進めてきたが、特に同様な社会的背景や課題を抱えている地域農業環境問題の補助金制度や地域自立的な生物多様性保全活動の事例研究に広げることができた。このような研究は、地域森林政策の財源の多様化や内発的な発展研究のための多様な視点やアプローチの可能性を与えており、近代工業社会の影に取り残された政策課題の共通点や相違点に着眼することができ、森林財政政策研究の新しい切口につながった。 本研究は日本の森林政策をベンチマークにしながら、中国の地域森林財政政策の内発的発展の仕組みを分析することを研究目的としている。日本の森林政策の史的展開における植林・育林政策からの林業経済政策への発展、更に森林の多面的に機能への政策転換は、中国現行の植林・育林政策及び林業経済政策を中心とする発展段階に対して、現行補助金制度の単一性の特徴が浮き彫りにされ、今後の財源の多元化や森林補助金制度の重層的な仕組みづくりの可能性を見いだすことができた。しかし、中国の実地調査や共同研究会では、制度づくりの未熟さがみられる中で、実際の地域森林政策の現場では森林の多面的機能の重要性に気づき、それを地域社会の発展資源に位置付けて取り組む事例が多数確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
H30年度は、研究の最終年度になることから2年間の研究成果を総括し、研究成果の発信に結びつけることを目標としている。日中共同研究者による共同研究会による研究成果の共有・論文公表の計画を具現化すると同時に、それに向けて、日本国内及び中国の実地調査や補足的な文献・データ収集活動を行う予定である。それを踏まえて、内発的発展を目指す中国の森林補助金制度の到達点と課題を明らかにし、研究成果として取りまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
H29年度に中国の地域森林政策の実地調査を実施したが、当方の都合で調査日程が足りずその分の残額が生じた。H30年度には残額分の研究活動を含め、十分な実地調査を遂行するための経費として有効活用する予定である。
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Research Products
(3 results)