2017 Fiscal Year Research-status Report
質的調査手法に依拠した映像利用に基づく統合型コミュニケーション・デザイン研究
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16K00706
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
池側 隆之 京都工芸繊維大学, デザイン・建築学系, 教授 (30452212)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 質的リサーチ / 情報デザイン / 映像デザイン / ドキュメンタリー / コミュニティアーカイヴ / コミュニケーションデザイン |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は,a. 映像メディアを活用した調査手法に関するリサーチ,b. 実証研究(フィールドワークと映像記録,その活用方法の検討),c. 研究成果の発表,を中心に行った。 「a」に関しては,本研究が目指す「質的調査手法に依拠した統合型コミュニケーションデザイン」を考察すべく,類似もしくはコンセプトが近接する先行事例の調査を中心に作業を展開した。具体的には,20世紀に個人の手によって撮影された「個人映像(家族などを主な被写体とし,当事者間で価値が共有される映像群)」の利活用をソーシャルデザインのための重要な手段と位置づけるプロジェクトを主たる調査対象とした。ここでは特に特定の地域コミュニティに限定した個人映像の現存状況調査や,それらを活用したイベントデザインや書籍化のプロジェクトを中心に,ステークホルダーの間に生じる種々のコミュニケーションを円滑かつ有意義に展開させる駆動力として映像内容,また映像提示法が幾重にも役割を果たす構造を抽出した。 「b」では,「a」で得られた知見も参考にしながら,実際に映像調査を実施し,その過程と成果を活かした新しいデザイン活動のあり方を実践的に検証するために,昨年度に続き岡山県犬島等をフィールドに作業を展開した。平成29年度は,映像を用いた調査と平行して,すでに得られた映像データを如何にして利用するについてフィールドワーク先となった地域コミュニティの住民や他のステークホルダーと意見交換を積極的に行い,H30年度に試験的に展開する大枠を決定するに至った。具体的には映像視聴を軸に多様な人間がコミュニケーションを行う場のデザインである。 「c」としては,平成28年度に京都府下で実践したプロジェクトを材料に学会発表を国内で行った(日本デザイン学会第64回春季研究発表大会・拓殖大学)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要で述べた3つの観点(a,b,c)を統合的に捉える作業,また理論的に先行研究との関係が構造化されるには至らなかったため,研究の進捗状況としては「やや遅れている」と言わざるを得ない。その理由としては,本務校で平成30年度の改組を控え,ワーキンググループでの作業として新カリキュラムのとりまとめに従事せざるを得ず,残念ながら当初予定していた本研究のエフォート(%)が十分確保できなかったことが挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
先に挙げたとおり,平成29年度の成果を統合的に捉えて理論的な骨格を明確にする作業を前半期に行う。具体的には,社会学,民俗学,人類学等における映像を利用した質的調査手法に関する先行研究と本研究課題の成果を比較しながら,映像がもたらす最終成果物をデザイン領域においてどのような位置づけで活用するのか,またそこに至るまでのプロセスを理論化していきたい。また,実証研究として各フィールドで展開しているプロジェクトにおいては,特定コミュニティの文化伝承また知識共有メディアとして位置づけた映像コンテンツをある程度完成させ,具体的な活用を通じて理論化に役立てる。また今年度は,本研究課題採択時に想定していたとおり,デザイン活動を下支えするリファレンスとしての映像に着目する。ここでは,過去に取材されたモノづくり等を記録した映像資料が今日の創作活動にどのように活用可能かを検証していく。具体的な展開としては,映像鑑賞とモノづくりをセットにしたワークショップを開催しながら,認知科学の知見を援用して効果等の検証を行う予定である。以上の活動を受け,年度末には平成31年度に予定している「1.基層・伝承文化の記録」「2.映像リサーチ方法論の確立」「3.映像リソース利活用」の観点を融合した「質的調査手法に依拠した統合型コミュニケーションデザイン」に係るデザインシンポジウムや展覧会開催を意識した準備に着手する予定である。
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Causes of Carryover |
〈理由〉 「現在までの進捗状況」の欄で記したとおり,本務校で平成30年度の改組を控え,ワーキンググループでの作業として新カリキュラムのとりまとめに従事せざるを得ず,残念ながら当初予定していた本研究のエフォート(%)が十分確保できなかったことから,研究の進捗に遅れが生じた。そのため,当初予定していた調査出張が十分に行われなかったため,次年度使用額が発生した。 〈使用計画〉 平成30年度は遅れを取り戻すために,岡山県犬島や京都府福知山市のフィールドに数回調査出張を早い段階に行う。また,今年度中の特定コミュニティの文化伝承また知識共有メディアとして位置づけた映像コンテンツの完成を想定し,各フィールドでの視聴環境のデザインやインタフェースの検討も進めるため,繰越金をそのような具体的な作業において効率よく使用していく予定である。
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Research Products
(2 results)