2018 Fiscal Year Research-status Report
質的調査手法に依拠した映像利用に基づく統合型コミュニケーション・デザイン研究
Project/Area Number |
16K00706
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
池側 隆之 京都工芸繊維大学, デザイン・建築学系, 教授 (30452212)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 質的リサーチ / 映像デザイン / 情報デザイン / コミュニティ・アーカイヴズ / コミュニケーションデザイン / ドキュメンタリー / ヴィジュアルデザイン / 地域振興 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は,①リサーチメソッド,そして,②コンテンツデザイン,という2つの観点から映像を捉え,それらを統合した映像デザインに関する実証研究を主に行った。フィールドは本研究着手時より継続的に調査を行っている岡山市東区犬島である。人口減少と島民の高齢化に直面する中,これまで①の作業として,失われつつある島の文化や歴史の映像・音声記録を行うことを重要視してきたが,平成30年度は現地取材と並行して,記録済みインタビュー映像の文字おこしと字幕貼り付け作業を行うことで島のオーラルヒストリーの保存に努め,実証研究の素材とした。またデジタル保存されたインタビュー内容にタグ付けを行い,データ検索やテーマ別再編集の余地を残した。②に関しては,当初より島の価値を伝える手段としてドキュメンタリーやPR映像等の制作を想定してきた。しかし映像とデザイン活動の新しい関係を考察するために,平成30年度は①と②の統合を目指し,映像視聴を軸とした多様な人間がコミュニケーションを行う場のデザインを想定した「いぬじまカタログ」の制作をすすめた。ここでは犬島そのものを,日常を見つめるためのカタログと位置付け,各々が持つべき選択の指標となる「価値観」を体感できる映像コンテンツと上映空間を設計した。犬島の旧中学校校舎を利用したスペースで上映される映像は「あ(=あかり)」「い(=いす)」「う(=売り買い)」等をテーマとする短尺映像コンテンツであり,タイトルとして出される50音は生活を見つめなおすための言葉に繋がる仕掛けである。島民主催の祭と合わせて実施したプロジェクトであったため,島内外から視聴者があり,一定の評価を得た。なお,平成29年度までの成果をまとめた論文とプロジェクトの記録を映像にまとめたものをフランスで開催された国際デザイン教育学会 CUMULUS CONFERENCE 2018 PARISにて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究課題のひとつに「映像リソースの利活用」を掲げ,モノ作り等の記録映像とそれを利用した創造的活動を認知科学の知見を援用しながら考察する計画をしていた。平成30年度には調査を進めた上で,年度内に実証研究に着手する予定であった。残念ながら実証研究にまでは至らなかったが,20世紀にドイツで行われた映像百科事典プロジェクト「エンサイクロペディア・シネマトグラフィカ」に関連する調査と関係者とのネットワークを構築し,「リソース」としての映像をデザイン活動に活用していく方法に関して意見交換を複数回行うことができた。よって研究最終年度の令和元年度にこれを実行する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度の令和元年の前半に,①リサーチメソッドと②コンテンツデザインを統合した映像デザイン実践を複数回行い,プロジェクトのドキュメンテーションを進める。また令和元年中間地点までに③映像リソースの利活用をワークショップベースで実行し,分析データの収集に当たる予定である。そして令和元年度後半にはこれらの成果と過去3年間のプロジェクト成果を統合し,簡易的な展覧会を開催し,年度末までに研究発表・論文執筆等の材料を調え,研究を終える予定である。
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Causes of Carryover |
平成30年度中に,研究課題のひとつに掲げていた「映像リソースの利活用」の調査は予定通りに遂行できたが,残念ながら実証研究まで展開できなかった。繰越金相当額がこれに相当する。しかし,「映像リソースの利活用」の調査段階の成果がある程度得られ,また関係者とのネットワークがすでに構築できているため,最終年度の中間地点で実証的な研究を実施し,分析対象となる素材の収集がひとまず完了する予定である。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] "FILM CYCLE" PROJECT2019
Author(s)
Takayuki IKEGAWA, Osamu SAHARA, Atsushi MATSUMOTO
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Journal Title
Cumulus Conference Proceedings Paris 2018 ――To get there: designing together
Volume: 1
Pages: 1008-1010
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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