2017 Fiscal Year Research-status Report
地域の歴史的文化を伝えるための景観シミュレーションシステム基盤構築
Project/Area Number |
16K00718
|
Research Institution | Bunkyo University |
Principal Investigator |
川合 康央 文教大学, 情報学部, 准教授 (80348200)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池辺 正典 文教大学, 情報学部, 准教授 (10453440)
佐野 昌己 文教大学, 情報学部, 准教授 (70350999)
松本 修一 文教大学, 情報学部, 准教授 (60389210)
門屋 博 相模女子大学, 学芸学部, 教授 (80510635)
角田 千枝 相模女子大学, 学芸学部, 准教授 (50712337)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 景観シミュレーション / 歴史的文化景観 / ゲームエンジン / ヘッドマウントディスプレイ / ゲームパッド / VR / 江戸 / 宿場町 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,地域の歴史的文化をわかりやすく伝えることを行うことを目的とした歴史的文化景観シミュレーションシステムを開発するものである.平成29年度は,プロトタイプシステムの評価をフィードバックした歴史的文化景観シミュレーションシステムの設計開発・評価分析を行った. 1:3次元モデルについて,対象範囲の拡張と空間構成要素の精緻化,軽量化を実施した.動的な空間構成要素である人や家畜等のモデルについては,簡単な会話システムや乗馬システムの実装を追加した.会話システムは,人物モデルから最も近いシンボルとなる空間構成要素についての説明を行うものである.また,和服を着用した人物の動きを再度検証し,歩行アニメーションを再作成した. 2:3次元モデルによる視覚情報とともに,聴覚情報を用いて,システム内のサウンドデザインを行った.川や動物など,音を発する空間構成要素の効果音をサウンドデータとして作成し,空間構成要素モデル内に配置することによって,仮想空間内に立体的な音響効果を持たせることとした.また,ユーザモデルの移動時に歩行音を挿入することによって,3次元酔いを軽減させることとした. 3:システムの入力インタフェースとして,ゲームパッドを採用した.アナログパッドで視点移動,視線回転,ボタンで跳躍,乗馬,賽銭,会話,位置の移動などの各種アクションを行うこととした.また,出力インタフェースとして,頭部搭載型ディスプレイを用いた出力環境を準備した. 4:システムで再現された景観について,浮世絵との比較による評価を行った.システムの対象地区が描かれた歌川広重による三種類の浮世絵との比較を,Web評価システムを用いて評価した.結果,システムで描画された景観は浮世絵と同程度の情報量となり,また描画技法が異なることで,それぞれの景観の特徴が明らかとなった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の計画は,プロトタイプシステムの評価を経て,歴史的文化景観シミュレーションシステムの「1:資料収集」,「2:設計開発」,「3:評価分析」「4:公開展示」を行うことであった.各項目の進捗状況については以下のとおりである. 1:地域の歴史的文化資料の調査については,概ね完了した.地方自治体による資料提供のほか,プロトタイプの一般公開によって,地域の住民,企業,寺社等から多くの情報提供を受けることとなった. 2:システムの設計開発は,プロトタイプ開発で得た知見を活かし,対象範囲の拡大,モデルの精緻化,最適化などシステムの大幅な改良を実施した.また,オブジェクトに効果音を埋め込むことによって,サウンドスケープの再現を行った.さらに,インタフェースについても,入出力環境の見直しを行い,ユーザが操作しやすいものとした. 3:システムで再現された景観を,浮世絵と比較し,ユーザがどのような空間構成要素に注視しているのかを特定した.評価のためのブラウザを用いたWebシステムの開発を行い,これを用いた大規模評価実験を行った.注視要素は空間構成要素種ごとにまとめ,平均注視回数,単位画素注視数を求め,空間構成要素ごとの傾向を分析するとともに,情報エントロピーを用いて,画面全体の情報量を求めた.結果,本システムで再現された景観イメージは,浮世絵と同程度の情報量を持つものであるが,表現手法の違いによって注視傾向は異なり,その特徴を明らかにした. 4:各学会でデモ,インタラクティブ発表を含む成果公開を行うとともに,複数の展示会等においてデモ展示を行った.また,藤沢市ふじさわ宿交流館における市民への常設展示のためのシステムについてアップデートを行うとともに,地域イベントにおいて仮想現実を用いたシステムのデモを行い,多くのフィードバックを得た.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は,歴史的文化景観シミュレーション基盤システムの設計,開発を行う.これは,本システム上の静的な空間構成要素である建築物,都市設置物,樹木や,動的な空間構成要素である人や家畜等についてライブラリ化を行い,これらをステージ上に自由に配置可能なものとすることで,様々な地域において活用可能なシステムのプラットフォーム化をはかるものである.国土地理院のオープンデータと,古地図など各地域における郷土資料を組み合わせ,地方自治体,地域住民が自らコンテンツの作成が可能なものを目指して開発を行う. また,時間軸のデザインとして,昼夜間の切り替えとともに,春夏秋冬による景観イメージの移り変わりを表すため,四季の表現についても取り組む.さらに,リアルタイムレンダリングによる写実的な表現とともに,エッジ検出を用いたレンダリング手法について検証し,浮世絵風レンダリングの実装を目指す.研究成果については,各種学会,展示会等で発表するとともに,システムのWebでの公開,市民を対象とした展示及びワークショップの実施を行う.
|
Causes of Carryover |
開発環境としてフリーオープンソースソフトウェアを積極的に用い,また,各種データについては国や地方自治体によるオープンデータを活用することによって,効率よく進捗させることが可能であった.一方で,システムの大規模化,複雑化に伴い,グラフィック性能を向上させる必要が生じたため,次年度実施においてハードウェア高性能化に充てる費用を確保する必要があった.
|
Research Products
(8 results)