2016 Fiscal Year Research-status Report
地元地域を創生するインクルーシブデザイン養成プログラムの開発と実践
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16K00735
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Research Institution | Kanazawa Technical College |
Principal Investigator |
土地 邦生 金沢工業高等専門学校, 電気電子工学科, 教授 (30390446)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松下 臣仁 金沢工業高等専門学校, グローバル情報学科, 教授 (10530834)
小高 有普 金沢工業高等専門学校, グローバル情報学科, 准教授 (70636670)
伊藤 周 金沢工業高等専門学校, 電気電子工学科, 准教授 (40532544)
小川 隼人 金沢工業高等専門学校, 電気電子工学科, 講師 (20536734)
伊勢 大成 金沢工業高等専門学校, 機械工学科, 講師 (20734594)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | インクルーシブデザイン / 地域連携 / デザイン思考 / グローバル人材 |
Outline of Annual Research Achievements |
インクルーシブデザインおよび工学技術によりLED直照式額帯鏡の高性能化(長時間使用、LED光源の光束化、軽量化)に取り組んだ。複数の高輝度LEDによる一軸性光束を光源とした観測装置は有用性が高く開発が活発である。例えば、京都大、九州大他の連携による関西TLOは平成18年に医療用額帯鏡を提案、その後改良が加えられているが実用に至っていない。我々は公開特許に従い額帯鏡の試作品を製作し試用、医師や患者の要望や意見を集め分析することで新たな問題点を見つけた。 公開特許に従い1次試作したLED直照式額帯鏡の構造であるが、外径30㎜長さ25㎜の円筒ハウジングの中央部には内径25㎜の覗き穴がある。光源は砲弾型LEDを利用、覗き穴の周囲を囲むように配置した。また、LEDの発光駆動回路はハウジングに内蔵、電源部は外部に取り付けることで光源部を作成した。LED直照式額帯鏡はこの光源部を反射式額帯鏡の額帯部に取り付けることで試作した。公開特許によれば砲弾型LEDの発する光は光束化され中心の覗き穴から観察すれば外耳道や鼻腔の奥深くまで観察できるとのことであるが、外耳道や鼻腔の奥深部の観察は困難であった。加えて、LEDの発光スペクトルは自然光のそれと異なるために外耳道や鼻腔の毛細血管の色が病変したように見える欠点が判明、公開特許技術で実用化は困難であることが明らかとなった。 LED直照式額帯鏡を実用化するために幾つかの新技術を開発し改良した結果、外耳道や鼻腔奥深部の明瞭な観察が可能となった。そこで、使用者および被使用者の極端意見の収集を試みたが有益な要望や意見は得られなかった。インクルーシブデザインでは少数の極端意見を取り入れた開発が重要である。そこで、被使用者の極端意見を収集するために、協力企業8社の他にも保育園併設型高齢者複合施設と連携した様々なプロジェクト活動を推進している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画調書に示した実施計画では平成28年度にLED直照式額帯鏡のインクルーシブデザインを終えていることになっているが、現在までの進捗状況は新技術によりこの額帯鏡を実用化できる性能にまで改良しインクルーシブデザインを始めた段階であり、3月遅れの進捗状況と考えている。 反射型額帯鏡と比較してLED直照式額帯鏡は耳鼻科用照明付観察装置として優れた性能を示すとされ、基礎技術に関する基本特許は関西TLOから平成16年7月に出願、平成18年7月に登録されている。この特許は更新されず現在は失効しているが公開技術は実現性が高く、また、発明者が現役の耳鼻科臨床医であったことから実用性も高いと判断した。しかし、公開特許に基づき試作したLED直照式額帯鏡は実用に耐える性能は発現せず実用化には新技術の開発が必要であった。インクルーシブデザインで新たな価値を創造する前に実用化できる性能に改良しなければならず工学的な技術開発に時間を要した。 市場のニーズを分析し市場に合った製品の商品化には顧客意見の収集と正確な分析が不可欠であるが、これは難しいことである。まして真剣で真面目な極端な要求と意見を収集し分析することは更に難しいが、インクルーシブデザインによる新たな価値の創生にはこのことが不可欠である。この極端意見を収集する体制を構築するために協力企業8社の他にも保育園併設型高齢者複合施設と連携したプロジェクト活動を始めた。この複合施設では一棟の建物が保育所エリアと高齢入所者エリアに分けられ、保育園児と高齢入所者との交流が日常的で少数顧客の真剣で真面目な極端意見の収集に好適と考えた。また、実施のプロジェクト内容は保育園児、地域住民、高齢者が協働して造成した花壇の保守管理支援システムの開発などである。このような活動はLED直照式額帯鏡の高度なインクルーシブデザインに繋がるに違いない。
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Strategy for Future Research Activity |
LED直照式額帯鏡の基礎となる照明付き観察装置には2件の先行技術がある。実用化のために新技術を開発、改良と改善を重ねた結果、幾つかの新技術を開発している。開発新技術は先行技術に抵触しない見込みで、この技術の特許出願を最優先の研究業務とする。なお、出願後に学会や研究発表会での発表や論文を投稿することで研究成果を公開する予定である。 地元地域での産学官連携のプロジェクト活動を推進する。インクルーシブデザインには真剣で真面目な極端な要求や意見の収集が不可欠であるが、内気と遠慮のためか実際には難しいことが多かった。新しい価値の創生に繋がるような極端意見は当初は提案者および被提案者ともに奇想天外な愚案とされることもある。価値ある極端意見の収集のためには幼児や高齢者など、被験者とは様々なプロジェクト活動を通じ日頃から信頼関係を醸成することが肝要である。そこで、昨年から始めた地域連携プロジェクトを更に推進加速する。具体的なプロジェクト活動は、地元市役所の支援で造成した公園花壇の維持・管理・保全を支援する機器やシステムの開発、地元企業の製造する製品の製造技術の開発などである。 LED直照式額帯鏡のハウジングの設計や試作には3Dスキャナーおよび3Dプリンターの応用が有効である。公開特許に基づき設計した円筒ハウジングは3Dプリンターで製作、また、高性能化のための改良と改善には3Dスキャナーの応用を検討している。紙と鉛筆で描く2Dスケッチに代わる「クレイモデルで創る3Dスケッチシステム」である。円筒筐体のクレイモデルを試作、その3Dデータを設計し3Dプリンターで試作する。3Dデータ処理機能や倍率変換機能で性能予測や実験が容易となるに違いない。LED直照式額帯鏡の小型高精度な円筒筐体ハウジングの開発に有効な3Dスキャナーと3Dプリンターの応用技術を研究し3D造形システムを開発する。
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Causes of Carryover |
LED直照式額帯鏡の基礎技術は照明付観察装置に関する2件の先行特許があるが、実用を満足する性能は得られなかった。そこで、平成28年前期はこの高性能化と実用化技術の開発に取り組んだ。これは主に工学的な開発研究で本学園の研究施設である夢考房で実施したが、夢考房の施設や消耗備品の使用は本学園学生および教職員は無償である。故に、LED直照式額帯鏡を実用化する工学的技術の開発に経費はほとんど生じなかった。また、地元地域で実施したプロジェクト活動であるが、地域の方々の御芳志や地元自治体(野々市市)の支援があり活動経費はほとんど生じなかった。 本年度の研究経費はLED直照式額帯鏡に対するインクルーシブデザインの実施経費および3D造形システムの開発経費として計上されている。しかし、工学的な開発研究に時間を要しインクルーシブデザインの開始が3月程度遅れたために次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
やや遅れている研究項目の遅れの挽回に充当予定である。光硬化型3Dプリンター導入による3D造形システムの開発経費、LED直照式額帯鏡をインクルーシブデザインするための地域プロジェクト活動の実施経費である。また、特許の出願を予定しているが、この出願経費への充当を予定している。 3D造形システムを開発するために精密造形が可能な光硬化型3Dプリンターが必要で、LED直照式額帯鏡のLEDハウジング部の開発と作成に使用を予定している。また、インクルーシブデザイン実施経費にも充当される。真面目で真剣な極端な要求や意見の収集分析のための研究プロジェクト活動で、28年度に実施した活動と異なり実施経費が必要となる。
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Remarks |
新聞記事掲載 北国新聞2016年7月25日「花壇管理に高専生の技術」 北陸中日新聞2016年5月25日「お年寄りの指導で保育園児が苗植え」 北陸中日新聞2016年3月26日「金沢高専と企業が報告会」
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Research Products
(9 results)