2017 Fiscal Year Research-status Report
地元地域を創生するインクルーシブデザイン養成プログラムの開発と実践
Project/Area Number |
16K00735
|
Research Institution | Kanazawa Technical College |
Principal Investigator |
土地 邦生 金沢工業高等専門学校, 電気電子工学科, 教授 (30390446)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松下 臣仁 金沢工業高等専門学校, グローバル情報学科, 教授 (10530834)
小高 有普 金沢工業高等専門学校, グローバル情報学科, 准教授 (70636670)
伊藤 周 金沢工業高等専門学校, 電気電子工学科, 准教授 (40532544)
小川 隼人 金沢工業高等専門学校, 電気電子工学科, 准教授 (20536734)
伊勢 大成 金沢工業高等専門学校, 機械工学科, 講師 (20734594)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | インクルーシブデザイン / 地域連携 / デザイン思考 / グローバル人材 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究のテーマは「地元地域を創生するインクルーシブデザイン養成プログラムの開発と実践」である。地元企業との協働による試作品の開発過程をインクルーシブデザイン養成プログラムとしている。すなわち、1)顧客の極端意見を考慮した発想、2)設計および試作、3)試用、である。29年度はLED直照式額帯鏡のインクルーシブデザインから派生したハンダ供給装置を新たに開発した。 LED直照式額帯鏡の実用化技術を開発しインクルーシブデザインにより試作品を製作したが、この鍵となった意見は電子機器の生産現場から提案された。ハンダ付けのない電子機器は存在せず、その品質は観察者の主観で判断されることが多い。最近は特に微細で奥深い隠れたハンダ付けの検査が要求されている。これまで適切な観察装置がなかったが、LED直照式額帯鏡のインクルーシブデザインからこの検査に適した観察装置を試作した。鍵となった技術は照射光の光束化による観察性の改善とハンズフリー化である。 ハンダ付けの性能、品質およびコストはハンダ付け作業時間に依存する。溶融したハンダは酸化が急速に進み性能および品質は劣化する。作業時間が長くなればコストも高くなる。多数の先行技術があるが多品種少量生産に対して有用な技術は実用化されていない。本研究で商品試作したハンダ供給装置の使用でハンダ付け作業時間は1/2以下に短縮、ハンダ付けの性能および品質は改善されコストは半減する。多くの先行技術があったが実用化された装置は無いことから、あらゆる生産現場での課題であるが未解決と考えられる。 自書により開発技術の特許願を作成し出願することはインクルーシブデザイン養成プログラムの重要項目の一つである。そこで、LED直照式額帯鏡の要素技術を工業所有権化するために自書により作成した特許願で特許を申請、出願に不備はなく原案通りに受理された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在までの進捗状況は「(3)やや遅れている」と自己評価した。やや遅れた原因は、1)ハンダ供給装置の開発を新たに追加したこと、2)LED直照式額帯鏡およびハンダ供給装置の実用化技術の開発に時間を要したこと、3)自書による特許願の作成および手続きに時間を要したことである。 ハンダ供給装置の開発は当初は予定されていなかった。また、耳鼻咽喉科医師が診療で用いることを想定したLED直照式額帯鏡が電子機器生産の検査工程で有用であることは意外で、それ用への設計変更に時間を要した。加えて、特許事務所に依頼せず自書による特許申請は初めてのこと、How to本で手続きや特許願の書き方を勉強したが、その知識だけでは申請できず、特許願の作成から出願後の方式審査の合格に至るまでには特許庁による特許願の作成手引きや出願手続きなどの資料を調査しなければならなかった。 インクルーシブデザインの過程では特許化が可能と思われる多数の発想が提案され多数の技術が開発される。学術的な発見や高度な発明ではないがインクルーシブデザインでの発想は実用的で試作品の商品化に直結する技術である。大企業のように知的財産を扱う専門部署や研究費に余裕がありこのような技術の特許化を特許事務所に依頼できれば理想であるが、そのような恵まれた環境にあるスタッフは少数である。知的財産権の取得を特許事務所に依頼すれば多額の費用を要する。限りある研究開発費を有効に使うには自書による特許申請は最良の方法である。この方法は研究経費の削減に有効なだけではない。開発技術を弁理士など第三者に依頼すると開発技術の本質や意図が伝わらず満足な特許願とならないことがある。法律用語や煩雑な申請手続きを勉強しなければならないが、特許願の自書は地元地域を創生するインクルーシブデザイン養成プログラムには不可欠と考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は開発した地元地域を創生するインクルーシブデザイン養成プログラムに関する研究発表および実践である。インクルーシブデザインによる開発技術の自書による特許申請はこの養成プログラムに必須であるが、公になった後に開発した技術の工業所有権は取得はできない。29年度までの研究成果の大部分は公にできなかった。研究実績の概要にも記したようにLED直照式額帯鏡に関する研究成果は照明付き観察装置として特許願に纏め特許を出願し受理されたので主要技術や開発過程を公表できるようになった。また、この観察装置から派生したハンダ供給装置に関する研究成果も特許に纏め出願し、その研究成果を公表できるようにする。 次にインクルーシブデザイン養成プログラムを実践することである。地元地域の創生には地元企業の独自技術による商品開発は不可欠と考えている。先行技術の発明者や出願人、本研究成果に興味を持つことが期待されるユーザーにプレゼンしインクルーシブデザインを重ね試作品を改善するとともに、その市場性を調べる。 最後に特許申請技術や開発過程などの研究成果の公表である。照明付き観察装置では照射光の光束化技術、ハンダ供給装置ではハンダ供給機構を公表したい。両者に共通する項目として、インクルーシブデザイン方法、生産効率の改善効果、自書による特許出願の効用などを発表する。更に、先行技術を発明した発明者に本研究の試作商品のプレゼンを検討する。本研究で開発した照明付き観察装置および手動ハンダ供給装置には多くの先行技術がある。有名な機関に所属する発明者や年間売上が1兆円に迫る企業に所属する発明者も少なくない。これらの発明者に試作品をプレゼンすることで新たな付加価値が期待できる。産学官協働の地域連携事業が活発である。本研究では高等専門学校の地元企業への貢献が主要な研究成果となるようにしたい。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、インクルーシブデザイン養成プログラムを実践し有用性を確認するためであり、1)試作品のプレゼンおよび再試作、2)研究の公表、3)試作用機材の改良および高性能化に費用が発生するためである。1)では試作品先行技術の発明者および興味を持つと期待されるユーザーへのプレゼンを実施しインクルーシブデザインを重ね試作品を改良する。2)では特許申請技術、企業との共同研究、地元企業との連携事業、地元地域の創生事業などを公表する。3)では3Dデータの解像度の改善のために3Dスキャナー制御用ワークステーションのメモリ容量の増大、3Dデータの編集ソフトの更新などに予算を充当する予定である。 次に使用計画であるが、第1四半期(4~6月期)は試作品のプレゼン、インクルーシブデザインおよび試作用機材の高性能化に予算を執行する予定である。第2四半期(7~9月期)に試作品の最終改良を行う予定である。第1および2四半期(4月~9月)で予算の大部分が執行される見込みであるが、通期を通じて研究成果を発表する予定であるので第3および第4四半期(10月~3月)においても交通費や発表経費が必要となる。
|
Research Products
(2 results)