2016 Fiscal Year Research-status Report
小都市における高齢者の転居阻害要因の解明と高齢者住宅の役割に関する研究
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16K00805
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Research Institution | Kyushu University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
三宮 基裕 九州保健福祉大学, 社会福祉学部, 准教授 (40331152)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | サービス付き高齢者向け住宅 / 都市規模比較 / 空間構成 / 入居者像 / 要介護度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)を含む高齢者住宅の整備に関わる研究テーマの一つとして、中山間地域を含む小都市を研究対象として取り上げ、小都市に居住する高齢者の転居志向と阻害要因の観点から都市部とは異なる高齢者住宅のあり方を示すことを目的としている。 研究初年度は、平成26・27年度に予備的に実施した全国のサ高住1,000ヵ所に対するアンケート調査をもとに、対象を拡大して2,482ヵ所に対して実施し、都市規模の比較により小都市のサ高住の特性を統計的に示した。 統計分析の結果、町村部(人口1万人未満の町村)では登録、住戸数とも全体の1割にも満たず都市部に比べ量的格差が生じていた。サ高住の住戸部分は、原則、25㎡以上でトイレ、台所、浴室等の設置が登録基準で設けられているが、共同利用可能な台所と浴室を設置する場合は18㎡まで床面積が緩和される。サ高住の住戸の状況をみると緩和規定を適用した共用依存のシェアード型(居住者専用の台所または浴室が住戸に設置されていない住戸タイプ)が7割を占め、数量化Ⅲ類による分析からとくに町村部ではその傾向が強いことが示された。また、事業者が単身および要介護期までの入居者を想定する場合にシェアード型が選択されている傾向が認められた。実際の入居者の要介護度と空間構成との関係をみると、シェアード型住宅の半数は自立度の高い居住者が主に生活している住宅であり、居住者の半数近くが自立・軽度者であった。 以上より、町村部に設置されているサ高住はシェアード型偏重の空間構成であり居住者の生活に不適合が起きている可能性があることが指摘でき、量的不足の解消とともに一般住宅相応の居住水準向上の必要性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画では、今年度、サービス付き高齢者向け住宅の実態を明らかにするアンケート調査の実施と自宅居住者に対するヒアリング調査を計画していた。 アンケート調査は、調査の実施・集計・分析まで当初の計画どおり遂行できた。分析においておおむね論文として公表できる成果が得られたため、ヒアリング調査を次年度に移行し、成果公表を優先した。そのため、当初予定していた自宅居住者に対するヒアリング調査は実施できていない。研究成果としてまとめた論文は日本建築学会に投稿し、現在、審査中である。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目の平成29年度は、前年度より実施を延期した自宅居住者に対するヒアリング調査を実施し、高齢者住宅への転居阻害要因を明らかにする。具体的には7月までに調査計画の立案と、倫理審査を完了し、8月より調査対象の選定、9~11月にかけて調査を実施する(目標50名)。順次、分析をおこない12月よりまとめ、学会での成果公表をおこなう。 研究最終年度である平成30年度は、高齢者住宅居住者に対するヒアリング調査を実施し、転居の経緯や高齢者住宅に対する期待等から、高齢者住宅の役割を明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
当初予定していたヒアリング調査を次年度に延期したため、謝金・旅費等として予定していた額が未消化となった。調査延期の理由は、アンケート調査から得られた成果についての論文作成を優先させたためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の計画どおり、ヒアリング調査の謝金・旅費等として使用する予定である。
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Research Products
(2 results)