2017 Fiscal Year Research-status Report
胎内低栄養環境における消化吸収機構のエピゲノム変化に関する分子形態学的研究
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16K00934
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
藤田 守 久留米大学, 医学部, 客員教授 (60037471)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 桂一郎 久留米大学, 医学部, 教授 (20172398)
馬場 良子 産業医科大学, 医学部, 講師 (90271436)
近江 雅代 西南女学院大学, 保健福祉学部, 教授 (20301682) [Withdrawn]
熊谷 奈々 中村学園大学, 栄養科学部, 助教 (70552983) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 胎内低栄養 / 新生児期 / 乳飲期 / 消化管 / 小腸 / 吸収上皮細胞 / 消化吸収機構 / エピゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、消化管の中でも栄養補給系として最も重要な役割を演じている腸(小腸・大腸)を重点的に用いて、消化吸収機構のエピゲノム変化に関する実験、検索、解析を行った。 胎内低栄養環境による変化が出生後の消化吸収機構の変容について、新生児期、乳飲期、離乳期更に成熟期にかけて経時的に検索し、胎内適正(正常)環境群と詳しく比較検討することが出来た。その結果、胎内低栄養実験群の回腸では胎内適正(正常)環境群より絨毛が短く、さらにその管腔表面を覆っている吸収上皮細胞の変容も認められた。それらの変容は妊娠初期低栄養群よりも妊娠中期低栄養群さらに妊娠後期低栄養群と著明になった。また、新生児期、乳飲期、離乳期と時間の経過と共に、その差は顕著になった。新生児期(出生直後、未授乳)の回腸吸収上皮細胞をFIB走査型電子顕微鏡で断面作成と観察を繰り返し、取得した断面像(600~800枚)から三次元構築し、細胞の立体構造を解明した。小腸上皮細胞の変容にエピジェネティックな修飾が関与するかを知る目的で、乳飲期マウス回腸のヒストン修飾解析を行った。その結果、陰窩形成に伴って生じるパネート細胞のヒストンH3K27番目リジンのトリメチル化が吸収上皮細胞の形態変化に関わる可能性があると考えられた。さらに、乳飲期マウスの小腸から単離した陰窩を用いてオルガノイドを作製し、メチル化阻害剤添加により、小腸の上皮形成におけるメチル化の役割ついて解析を行った。その結果、陰窩の形成と維持にメチル化が関与している可能性が示唆された。 胎内低栄養環境により生ずると思われるエピゲノム変化は出生後の消化管、特に栄養補給系の重要な役割を担っている小腸吸収上皮細胞の吸収機構や腎機能に影響を及ぼすことが示唆された。これらのことから、妊娠中の栄養管理の重要性が示唆され、胎内低栄養環境に曝露された可能性がある場合は出生後の栄養管理も重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
胎児期に適切な栄養環境で育ったラットの新生仔を用いて新生児期(出生直後、未授乳)から乳飲期・離乳期・成熟期の栄養補給系の消化管、特に、胃、小腸(十二指腸・空腸・回腸)、大腸(盲腸・結腸近位部・結腸遠位部)を経時的に検索し、各成長時期、消化管の各部位による消化吸収機構の変容を光学顕微鏡による形態学的解析、走査型電子顕微鏡による三次元的解析及び透過型電子顕微鏡による分子形態学的解析を行うことが出来た。 胎内低栄養実験群では、妊娠初期低栄養群、妊娠中期低栄養群または妊娠後期低栄養群に分けて、それぞれ7日間低栄養環境に曝露させた。それらの低栄養妊娠ラットより出生した新生仔の消化管を用いて、胎内低栄養環境による変化が出生後の消化吸収機構に及ぼすか、否か、新生児期から乳飲期、離乳期、成熟期にかけて経時的に検索し胎内適正(正常)環境群と比較検討を行うことが出来た。これらの実験はおおむね順調に進展している。 新生児期の回腸をFIB走査型電子顕微鏡で断面作成と観察を行い、新生児期(出生直後、未授乳)の回腸吸収上皮細胞の三次元的立体構築を明らかにした。これらの実験はおむね順調に進展している。 小腸上皮細胞の変容にエピジェネティックな修飾が関与するかを知る目的で、乳飲期マウス回腸におけるヒストン修飾解析を行うことが出来た。さらに、乳飲期マウスの小腸から単離した陰窩を用いてオルガノイドを作製し、メチル化阻害剤添加により、小腸の上皮形成におけるメチル化の役割ついて解析を行うことが出来た。 腎臓においても、胎内低栄養実験群の腎臓の糸球体を詳しく計測し、正常群と比較検討することが出来たのでこの実験もおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に得られた成果を参考にして、不足部分を補う実験・検索・解析を行う。正常及び低栄養実験群の消化管を光学顕微鏡による形態学的検索及び走査型電子顕微鏡による三次元的解析はかなり推進できたが、透過型電子顕微鏡による分子形態学的検索、FIB走査型電子顕微鏡的検索、抗体を用いた免疫組織化学的研究は次年度もさらに詳しく行う予定である。特に、消化管の中でも栄養補給系として最も重要な役割を演じているのは、小腸の吸収上皮細胞である。その吸収上皮細胞を中心に研究を推進する予定である。 小腸及び大腸の部位と発育時期的変容に関する詳しい検索結果の解析を行い、さらに絨毛の形態的変化と同時に吸収上皮細胞のエンドサイトーシスに関与している膜系についての詳しい検索結果の解析を行う予定である。 乳飲期の回腸吸収上皮細胞をFIB走査型電子顕微鏡で断面作成と観察を繰り返し、取得した断面像(600~800枚)から三次元構築を行い、細胞の立体構造を明らかにする予定である。 乳飲期空腸と回腸由来オルガノイドの詳しい形態学的検索結果の解析を行う。消化吸収機構におけるエピゲノム変化を知る目的で抗体を用いてヒストンのメチル化の詳しい免疫組織化学的検索結果の解析を行う。乳飲期マウスの回腸上皮におけるヒストン修飾解析を行う。現在、発現遺伝子との相関などについてさらに解析を進めている。また、上皮細胞の種類と形態の差異についても解析を進めている。 平成28年度、平成29年度、平成30年度の研究総括を行う。
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Causes of Carryover |
(理由)次年度は本研究の最終年度となるため、また最終年度の予算そのものが少なくなるために、本年度の分担者も含め無駄な出費をできる限り抑えるようにした。次年度当初に不足または追加実験等の試薬や画像データの記録用電子媒体等を購入する必要があるため。 (使用計画)光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡及び透過型電子顕微鏡用試薬や画像記録、特にFIB走査型電子顕微鏡は一回で600~800枚の画像を撮るため、早々に画像データの記録用電子媒体等を購入する予定である。 これまでの研究記録や画像媒体をまとめて保存するための記録用電子媒体を購入する予定である。
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Research Products
(33 results)
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[Journal Article] Hyaluronic Acid Accelerates Tendon-to-Bone Healing After Rotator Cuff Repair.2017
Author(s)
Honda H, Gotoh M, Kanazawa T , Ohzono H, Nakamura H, Ohta K, Nakamura K, Fukuda K, Teramura T, Hashimoto T, Shichijo S, Shiba N
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Journal Title
The American Journal of Sports Medicine
Volume: 45(14)
Pages: 3322-3330
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Pathogenesis of Lethal Aspiration Pneumonia in Mecp2-null Mouse Model for Rett Syndrome.2017
Author(s)
Kida Hiroshi, Tomoyuki Takahashi1, Yuki Nakamura, Takashi Kinoshita, Munetsugu Hara, Masaki Okamoto, Satoko Okayama, Keiichiro Nakamura, Ken-ichiro Kosai, Takayuki Taniwaki, Yushiro Yamashita, Toyojiro Matsuishi
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Journal Title
Scientific Report
Volume: 7
Pages: 12032
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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