2017 Fiscal Year Research-status Report
力学概念指標の系統的誤差研究に基づく妥当性評価のための新しい聞き取り調査法の開発
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16K00948
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
安田 淳一郎 山形大学, 学士課程基盤教育機構, 准教授 (00402446)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷口 正明 名城大学, 教職センター, 准教授 (90554113)
前 直弘 関西大学, システム理工学部, 教授 (10796098)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 物理教育 / 科学教育 / 学習評価 / 教育評価 / 概念指標 |
Outline of Annual Research Achievements |
学習者の力学概念を測定するための指標としてForce Concept Inventory(以下,FCI)が国際的に広く使われている。本研究では,FCIの系統的誤差の精確な値を推定すること,および本分析結果の国際的な一般性を高めることを研究目的の一部としている。これらの目的に関して,本研究グループは今年度に下記のような実績をあげた。 2017年4月に国内の4大学において,FCIの偽正答に起因する系統的誤差を調べるための追加調査を実施し,632名の学生から回答を得た(前回調査と合算し,回答者数は1145名となった)。今年度は新たな分析として,FCI問5,6,7,16に着目し,偽正答に起因する個々の設問の系統的誤差を個別に分析した。同4問において,問6,7,16は以前の聞き取り調査で学生が明らかに誤った理由で正答することが見出された設問であるが,問5はそれが見出されていない設問である。 第1の分析では,問6,7,16と問5の偽正答に起因する系統的誤差の大きさを比較した。その結果,スコア中位の学習者集団については,問6,7,16の系統的誤差が問5の系統的誤差に比べ非常に大きいことが明らかになった。第2の分析では,問5,6,7,16の偽正答に起因する系統的誤差の和を求め,FCI30問の系統的誤差について最小限の値を推定した。その結果,スコア中位の集団については,偽正答に起因する系統的誤差の大きさが少なくとも生スコアの10%に達することが明らかになった。この成果は,Physical Review Physics Education Research誌に掲載された。 このほか,2016年度に得られた研究成果を米国で開催されたPhysics Education Research Conference 2017において発表した。同発表内容は,PERC Proceedings誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の計画では,平成29年度末までに,1)FCIの偽誤答を調べる調査票の開発,2)日米両国で計1000名以上の学生を対象にした質問紙調査の実施,3)FCIの系統的誤差を概算・推定する分析方法の洗練,4)算出した系統的誤差の国際的一般性の評価等を行う計画を立てていた。本研究グループは,平成29年度末までに,偽誤答を調べる調査票の開発,日米両国で計1500名を超える学生への質問紙調査の実施,FCIの系統的誤差を概算・推定する分析方法の洗練を達成している。本研究の成果は,米国で開催されたPhysics Education Research Conference 2017で報告し,査読付きのPERC Proceedings誌に掲載されたほか,物理教育分野で最もインパクトファクターの高い論文誌の1つであるPhysical Review Physics Education Research誌にも掲載された。以上のことから,本研究課題はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
個々の設問の系統的誤差を個別に推定するという新たに考案した分析方法を,偽誤答に起因する系統的誤差に対しても適用するため,2018年4月に追加調査を実施する。この調査データを用いて偽誤答に起因する系統的誤差を推定した後,偽正答と偽誤答の両方の寄与を統合したFCIの系統的誤差の値を算出する。次に,算出した系統的誤差が教育効果を評価するための統計量(平均規格化ゲインや効果量など)にどのような影響を与えるのかを分析する。また,様々な物理概念指標の妥当性評価で用いることのできる新しい聞き取り調査法の開発も進める。 なお,FCIの系統的誤差を日本と米国の大学生で比較することを当初予定していたが,研究協力者が米国の大学からオーストリアの大学に異動したため,米国での調査を今後実施することが困難になった。そのため,日本とオーストリアの大学生を比較することでFCIの系統的誤差の国際的一般性を評価することを予定している。
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Causes of Carryover |
(理由) 次年度使用額が生じた主な理由は、研究分担者が当該年度に研究発表を行う機会がなかったためである。 (使用計画) 今年度は研究分担者1名が研究発表を行う予定であり、次年度使用額は主に旅費に使用することを予定している。
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