2016 Fiscal Year Research-status Report
アジア・イスラム的価値観を入れた技術者倫理教育:内容の質保証のための評価手法開発
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16K00976
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
栃内 文彦 金沢工業大学, 基礎教育部, 准教授 (50387354)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡部 幸徳 金沢工業大学, 基礎教育部, 准教授 (00465486)
金光 秀和 金沢工業大学, 基礎教育部, 准教授 (50398989)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 工学教育 / 技術者倫理 / アジア・イスラム的価値観 / グローバル化 / 教育効果の測定・評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、社会のグローバル化の進展につれて技術者が負うべき社会的責任の範囲が急速に拡大していることに伴い技術者倫理教育の重要性が増していることを鑑み、技術業において重視されている/されるべき価値観に関してこれまで行ってきた研究から得られた知見、および、技術者倫理教育の実践から得られた知見を踏まえ、さらに、アジア・イスラム圏の価値観に関する分析を行ない、グローバル社会における技術者倫理教育プログラムや事例教材の質を、それらを開発する段階において評価する手法を開発し、評価ツールとしての有効性の検証を行なうものである。平成28年度の研究計画・実績は以下の通りである: 1)マレーシア・インドネシア・台湾における技術者倫理教育の現況調査の実施、質問票調査の実施と、これらの国々・地域でモノづくりにおいて重視されている価値観の明確化: 海外研究協力者のB. Balakrishnan、S. Rina、K. Ayuの協力を得て、両国において現況調査と質問票調査を実施、さらに、彼(女)らを招聘して研究会を開催し、調査結果の分析と検討を行い、「gotong royong(相互扶助)」などアジア・イスラム的特徴の見られる価値観が明確化された他、重視すべき各価値がモノづくりの過程にどう反映されているかを踏まえた適切な「文脈」を与えることが効果的であるという示唆が得られた。。 2)CarrollのCSRピラミッド、および、プロジェクトマネジメントにおけるVモデルを用いた、技術者倫理教育プログラムや事例を開発する際の評価基準案の開発: CSRピラピッドについては研究分担者の岡部を海外研究協力者のS. Wagner-Tsukamoto(英国)に派遣して、Vモデルについては上述の研究会において招聘した研究協力者らと共に検討を行い、価値のグループ化を行い、上述の「文脈」を明示的に示す必要性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究計画の内、1)については、予定していた台湾における調査を今年度は見送ったが、これは研究協力者の止むを得ない事情によるものである。2)については、評価基準案の開発までには至らなかったが、「研究実績の概要」で述べたように、有用性の高い評価基準開発に向けた有益な知見を得ることができた。 質問票調査については、「概要」で述べた「文脈」を加味した調査を再度実施することで、デルファイ法に似た形式で「アジア・イスラム的」側面を明確化できる可能性が示されたと考えるが、これは平成29年度の研究計画(「今後の研究の推進方策等」を参照)におおいに資するものである。 以上のことから、現在までの進捗状況は「概ね順調に進展している」と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に基本的に沿って研究を推進する予定であるが、研究代表者が平成29年8月中頃から平成30年8月中頃までの1年間、マレーシアに滞在して研究を行うこととなった(科研費(国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)による「グローバル社会における技術者倫理に関する実証的比較研究─行動規範構築と教材開発─(国際共同研究強化)」[研究代表者:栃内文彦、課題番号:15KK0102]による)ため、補助期間延長を申請することを含め、研究計画が今後大きく変わる可能性がある。ただし、これらの研究は相補的なものであり、同時期に実施することで、研究の質を高めることにつながる。以上を踏まえた上で、今後の研究実施計画は次の通りである: 1)[平成29年度]アジア・イスラム的価値観の明確化:前述の「文脈」を与えた調査を実施し、これらの価値観として特徴づけられる価値観を特定する。海外研究協力者のP.F. Chang(台湾)とともに台湾においても調査を行う。アジアの外の視点からの検討のため、海外研究協力者のP. Nickel(オランダ)の元に1名を派遣する。 2)[平成29-30年度]CSRピラミッド、Vモデルを用いた、評価基準の開発:これまでの調査などから得られた知見に基づき、評価基準案を作成、使用可能性を実証的に検証し、評価基準として確定させる。 3)[平成30年度]アジア・イスラム的視点を取り入れたグローバル社会における技術者倫理教育プログラム・教材を効果的かつ効率的に制作するためのガイドラインを作成、研究代表者らが所属する金沢工業大学科学技術応用倫理研究所のHP等で公開する。さらに、国内外の関連学会に参加して、研究成果を報告する。 なお、2)と3)については、本項冒頭に記した理由により、計画などを大幅に見直す可能性がある。
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Causes of Carryover |
今年度支払請求においては物品費として45万円を計上していたが、当該費目における実支出額は0円となった。これは、物品費により研究代表者と研究分担者が研究に用いるノートPCを購入する予定だったところ、実際の研究の進捗などを考慮した結果、今年度は既存設備を用いて研究を進めることとし、購入を来年度以降に見送ったことによる。 旅費・人件費・謝金・その他の費目を合計して95万円を計上したのに対し、実支出額はこれらの費目を合計して約127.8万円と、予定額を約32.8万円超過した。これは、インドネシアに2名を派遣する計画に対し、実際には、マレーシアに1名を派遣、両国から3名を招聘したことによる。 以上により、最終的には、約12.2万円の次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の次年度使用額を併せて、平成29年度の使用予定額は約82.2万円となるが、研究代表者らの用いるノートPCの更新のための物品費、調査・打合せ・学会参加(発表)のための国内外出張のための旅費、台湾の海外研究協力者を招聘しての研究会開催のための費用として使用する予定である。 なお、「今後の研究の推進方策」で述べたように、研究代表者が平成29年8月中頃から1年間、マレーシアに滞在して研究を行うこととなったため、使用計画が今後大きく変わる可能性がある。ただし、両研究は相補的であり、同時期に実施することは考慮してあるため、引き続き、助成金を有効に活用して研究を進めることが可能である。
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Research Products
(5 results)