2018 Fiscal Year Research-status Report
ヘテロ機能化セラノスティクス・ナノ粒子の腫瘍組織へのアクティブ・インベージョン
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16K01358
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
中村 教泰 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (10314858)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ドラッグデリバリー / 有機シリカナノ粒子 / EPR効果 / 腫瘍 / ターゲティング / 診断と治療の一体化 / ナノ医療 / セラノスティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、ナノ粒子を医療に応用するナノ医学が発展しつつある。ナノ粒子を用いた癌治療において粒子の腫瘍組織への集積効率を向上させることは治療効果の改善に極めて重要である。EPR (Enhancement Permeability and Retention) 効果等によるパッシブ・インベージョンは腫瘍血管の内皮細胞の配列が正常血管に比べて粗雑であるため、正常血管では漏出が極めて少ない直径250 nm のナノ粒子が漏出し、さらに腫瘍組織のリンパ管が未発達であるため、ナノ粒子の排出が遅く腫瘍組織内に滞留することが関係する。EPR効果については粒子サイズが極めて重要である。さらに腫瘍組織への侵入の第一段階であるナノ粒子の腫瘍血管への集積(アンカリング技術)の開発を進めている。 平成30年度はアンカリング技術の開発、並びにルート・エクスパンジョン技術の開発と評価を展開的に進めた。粒子に腫瘍血管の拡張機能、血管障害機能、細胞外マトリックス分解機能を付加し、ルート・エクスパンジョン機能を高めた粒子作製の検討を進めることができた。血管拡張機能には、粒子表面の金ナノ粒子が持つ光線温熱効果を応用し、光線による発熱効果と共に、光線力学的効果と薬剤放出による血管障害機能の開発を進めた。薬剤放出について検討し、ドキソルビシンによる細胞障害活性を確認した。腫瘍組織への侵入に障害となる細胞外マトリックス構造の分解のためナノ粒子の表面にコラゲナーゼやヒアルロニダーゼなど酵素を結合した粒子によるルート・エクスパンジョン技術について腫瘍細胞移植マウスなどを用いたin vivo評価、ミクロ観察等により腫瘍組織における粒子集積の比較検討を進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
アンカリング技術の開発、並びにルート・エクスパンジョン技術のための表面機能化について、新しい定量的測定法を検討確立し、アクティブ・インベージョンが可能な粒子の作製を進めた。ルート・エクスパンジョン技術の開発を展開的に進めると共に、その機能的評価法について検討を進めることができた。これらの研究結果より最終年度においては腫瘍移植マウスを用いた実験など、アンカリング技術とルート・エクスパンジョン技術のin vivo 評価のための実験が重点的に行うことができる。当初予定した計画と比較して、アクティブ・インベージョン技術を応用するための粒子の機能化技術の開発と定量的評価の検討を十分行うことができた。今後はin vivo 評価の研究に重点を置き研究を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はアンカリング、ルート・エクスパンジョン、そしてアクティブ・インベージョンの高度化と腫瘍組織への高度送達のための研究開発を統合的に行い、期待した成果の獲得を目指す。最適化したパッシブ・インベージョンと血管拡張機能、血管障害機能、細胞外マトリックスの分解機能を融合的に再構成させたアクティブ・インベージョンを融合し高機能化した粒子を作製する。そして複数の機能による相加・相乗効果を評価し、最適化を行う。腫瘍移植マウスに投与し、腫瘍組織内におけるナノ粒子の分布密度、集積度、腫瘍の組織学的変化についてin vivo評価、ミクロ観察、透明化組織の観察にて総合的に評価し、最適となるヘテロ機能化と投与方法を決定する。さらに光照射や放射線照射、さらに磁場温熱治療効果、ボロンやガドリニウムを含有した中性子捕捉療法などの治療効果とイメージング機能を融合したセラノスティック粒子の治療効果の評価を行い、最大の効果を示す粒子を選定する。
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Causes of Carryover |
平成30年度もアンカリング、ルート・エクスパンジョン、さらにアクティブ・インベージョンの向上のための粒子の機能化の研究に重点を置くことになった。したがって計画段階で大量の使用が予想された高価な腫瘍移植マウスを用いた研究が当初の予定より少なく行われたことが次年度使用額の生じた主な原因である。 最終年度においては腫瘍移植マウスを大量に使用することになる。腫瘍移植マウスの作製にはヌードマウスやSCIDマウスなど高価なマウスが必要であり、最終年度分の実験で使用する予定である。さらにアンカリング技術やルート・エクスパンジョン技術、アクティブ・インベージョンの高度化の研究開発と粒子の再調整のため高価な抗体、ペプチド、酵素などの消耗品試薬を繰り返し購入するために研究費を使用する。
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